魔法での騒動
「うう……ひっぅ……」
芽依は泣いていた。自分が恐ろしいことをしてしまったと同時に、何故そんなことが起きたのかまったく理解出来ていなかった。
当時の俺にも理解できなかったが、なんとかして芽依を慰めたい気持ちだけはそれなりにあった。……あったのだが、どうしたらよいのかわからない。
俺は担任の先生に尋ねた。
「このあと、どうなるんですか?」
「ご両親に連絡は済んでいるけど。……ああ、君たちのことかな」
「たぶんそうです!」
「ふむ、ご両親がここに来る予定なんだが、問題は芽依ちゃんの家庭かな。ここへ来たくないと申し出ているんだ」
「来たくないってどういうこと?」
「ほんと、これだから困ったものだ。来たくないというのは、厳密に言えばちょっと違うな……どっちかというと、母親のほうが校長室に乗り込んで、我が子の存在を否定する発言をされたみたいで」
「えっ……」
「うう、ひっく……」
「だけど安心して。警察を呼ぶ羽目になったが、大智くんのご両親さんが芽依ちゃんの面倒も見るからってなってひとまず事態は収束したから」
「おさまった?」
「うん。そうね、でも……」
まだ何かあるような言い方だった。
その不穏な流れは的中する。
「体育での授業、あれは間違いなく魔法だな。魔法を使ったということは魔法使いに目覚めているということで、芽依ちゃんは転校をしなくてはいけなくなった」
「めいが、てんこー?」
「そう。大智くんは魔法を使ってないけど、魔法が発生するのトリガーになったという疑いがあるから、一緒に転校さ。……何故か九蛾家が詳しく事情を聞き入れて、各種手続きに踏み入れているのがちょっと謎なんだけど」
「おれも、てんこー?」
「だからね。芽依ちゃんのことは、君が支えるんだよ」
それが、当時担任の先生だった者からの最後の言葉だった。
この後は俺の両親が教室に迎えに来て、担任の先生は以後顔すら見ていない。
その日の夜から、芽依が俺に家に居候することになった。
寝るときは別室だったが、俺はあまり深く眠れなかったような気がする。
この悲劇は翌朝まで続く。
芽依の喉元に赤いあざがあったのだ。すぐに病院でみてもらうことになった。
そこで医者から言い渡されたのが、自身の力で強く首をしめていたということと、喉の器官に障害が残るかもしれないということだけだった。
芽依の語尾がでしゅ。になっているのは、この後遺症が原因である。
頭の中で整頓しているが、いま思い返しても、なかなかに苦い出来事である。
この後は、中学を卒業するまでは同じだ。高校は違う学校に通って芽依とは連絡もそれほど取り合っていなかったが、俺が魔法工業という分野にとても興味があり、尼野魔法学園の学園長からも推薦されたということもあって、高校卒業後に本校へ入学するという形で芽依との再会を果たした。




