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妄想クロニクル4



「いま名乗ったな……」

「お姉さまの名前を名乗っていますね。もう少し様子を見ておきましょうか」

「それはそうなんだが、俺たちに気づいていないように思えるんだが」


「さっき、こっそりインビシブル系の魔法を使いました。もうちょっと近づかない限りは気づかれないと思いますよ?」

「それは、うん……便利だな……」


「そうですね。迷子の女の子がまだ出て来てないくて、登場まで待つ必要がありそうでなかなか手が出ないんですけど、時間稼ぎくらいは余裕です」

「あまり魔法を多用しすぎて魔力枯渇しないように」

「わかってますって」

「それで、どのくらい待てば良いんだ?」

「ひとまず対話が終わるまで」

「そっか……」

「…………」


 すずねが黙り込んだタイミングで、メイアナザーはコハルに急接近した。


「早く王様にして。でしゅ!」

「汝の願いを叶えたくば、生贄を用意することだ」

「じゃあ、このお友達のプニュールで」

 メイアナザーは黒いスライムを差し出した。


「……本気か?」

 やや戸惑いをみせるコハルは、メイアナザーの意思を再確認する。


「生贄は、本当にそれで良いのか」

「うん!」


 すぐに返事を返すメイアナザー。


 ……おかしい。違和感極まりないという次元じゃないだろ、これ。

 俺の知っている芽依はこんなんじゃない。

 ほっとくと自己犠牲してて、自分のことほっといていつも他人のことばかり考えていたはずの芽依が、こんなに簡単に友達を捨てるなんておかしい。


「……芽依さんの本当の意志があれなのかどうかはさておき、大智君の反応をみている限りではイメージからかけ離れているといったところでしょうね」

「それがどうしたんだ」

「その手の細かいことは、ちょっと興味が持てませんが、ひとつ教えておきましょう。魔法というのは、時として人に不幸や災いをもたらすことがある」

「……それがなんだって言うんだ」


「そうですね……あの黒いスライムをもうちょっと観察しておきましょうか」


 すずねとの会話を切らした時、黒いスライムはメイアナザーの両手から離れて、地面に飛び降りた。

 そして、メイアナザーから遠ざかっていく。


「…………?」


「何が起きているんでしょうね」

「というか、こっちくる!??」


「――――あっ、そうきちゃいましたか」

「早く避けないと!」


 と思ったが、俺はその場から一歩も動けなかった。すずねも無理に足を動かそうとしていたが、一歩も動かすことが出来なかった。


 そして。

 俺たちの背後に。


「お客様かなぁ? それとも……生贄かしら……?」


 か弱い女の子の声が耳元で響いた。その声は、佐那川ういのものだと一瞬で理解した。



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