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妄想クロニクル3



「だとすると……ひとつ開いちゃったのか?」


 俺は重箱をすずねに差し出してみる。


「大智君、どうしました?」

「いまなんか、カチッと音がして」

「魔法探知で調べてみましょうか――ううむ」


 手のひらサイズの四角い魔方陣を展開すると、すずねは小難しい顔をしていた。

 やはり何か違和感を感じているのか。

 俺にはさっぱりだが。


「うん……正解の道はあっちのほうです」


 すずねは、壁に描かれている円形の模様に指さした。

 その円形の模様は、歯車のように尖っている。まるで太陽のような。


「ディスペルバイス!」


 円形の模様に右手のひらを当てたすずねが唱えると、壁の一部分が揺れはじめた。

 そして、横にスライドして登り階段がみえた。


「仕掛けのひとつが解けましたね」


 すずねは、にっこりする。


「確かにそうだが……この重箱に何が起こったのか」

「それは近くにあるスクロールの影響ですね。鍵が開いたということは魔力が流れ込んだということになります。その魔力がどこから流れてきたのかを突き止めて、ディスペルバイス――これは解除魔法です。魔法仕掛けの大多数はこれで呆気なく解けてしまうことが多々あるのです。そして、同時にですがここにあるスクロールは重士朗コレクションのひとつと断定……」


「断定できちゃうのか」

「ですです。どうしてそんなモノがこんなところにあるのか、とても不思議で仕方ありませんけどね」


 すずねは怒っているのか、楽しんでいるのか、表情が短時間でコロコロ変わっていた。

 あまりはっきりとまではいかないが、そこそこ動揺していそうだ。


「とにかく、スクロールもきっちり回収しないとな」


 心の中で悩んだりしていても仕方ないと割り切って、俺は意気込んでいた。その姿をみていたすずねは、深呼吸する。


「すみません。また取り乱していましたか。……行きましょう」

「そうだなっ!」


 階段を駆け上がっていくすずね。俺はその後ろからついていく。

 上り切るまでの間は、とくになにもなかった。そして、階段を上がりきった先にあったのは、とても広大な部屋だった。



 中央付近には王座の椅子がひとつ設置されていて、その近くでメイアナザーが棒立ちしていた。


 俺は近付こうとすると、すずねが腕を伸ばして進路の妨害をした。

 いま近づいてはいけない、ということか……。


「お願いします! 自分を王様にしてほしいでしゅ!」


 メイアナザーが叫ぶ。その声が室内に響くと、白い霜がのうのうと沸いてきた。

 そして、コウモリマークの影が地面に映りこんでいた。


 それはひとつではなく、大群だ。まるで群れのように――。


「あの王座に集まっていくのか……」


「そうみたいですね」


 俺はすずねと見守っていた。メイアナザーと、うごめく影をじっくりと。

 やがて、部屋の隅からの影が一点に集まりきると、その影は白銀の鎧をまとった幼き赤髪の女の子に変形した。


「私の名前は――深淵を司るコハル・レナトゥス。汝の願いを叶える魔王なり」


 自己紹介をした少女は、限りなく黒に近い桃色の瞳でメイアナザーをじろっと睨んだ。



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