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迷子の女の子



「その……反応なしなら仕方ないかもな……」

「むう、そんなことありません」


 少し怒っているすずねは、携帯端末を自身のポケットにしまい込む。その後、挙動不審な視線で街中の様子を確認してから俺の顔を見つめはじめた。


「と、取り乱してすみませんでした」

「……急に謝ってどうしたんだ?」


「気づいていない? 大智君、うしろ……」


 すずねに指図されて振り返ってみると、俺は見下ろした。


「ママ……ママは、どこなの……?」


 青いワンピースを着た小さな女の子が、俺の服を掴んで泣きじゃくりそうになっていた。



「すずね、これ……どうしよっか……」

「わたしに聞かれても困ります。正直なところ、無邪気で純粋で弄りがいのない子は苦手なのですよ?」


「じゃあすずねが好むのは何だ」

「無邪気で純粋で弄りがいのある子です」


「あまり変わらないな……」


「そうともないですよ。実際、弄ってみると反応に天と地の差があります。あー、後味が悪そうなのは苦手ですー」


 見事なまでの棒読みなすずねは、迷子の女の子から若干距離をとっている。

 これでは保護者を探すのも苦労しそうだ。

 そう思ったのだが、女の子の視線に何か目に入ったらしく、両目をパチパチ瞬きして開き直った。


「ママーっ!」

 女の子は、てくてくと走って、黄色い服の袖を掴んだ。


 その服を着ていた者は、女の子をちらっと見たらクスッと微笑んだ。


「うい、迷子になったら駄目だよ?」

「ママーっ。行こ!」

「そうね」


 顔がにっこにこになっていた女の子は、保護者と一緒にこの場から立ち去った。



「……行ってしまいましたね。よかったです」

「そうだな――」

 迷子捜しする必要がなくなって、ほっと息をつく俺たちは商店街を再び歩いて行く。


 さっきとはまた違う道を進む。

 よそ見するとわかるが、いま雑貨店が立ち並ぶ道を通っているところだった。



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