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鈴岡商店街



「うん、美味しい」


 俺はおでんを噛みしめる。昨日の晩ご飯を温めなおしたものとはいえ、だし汁が具材にしっかりと染みているので食べ応えがあった。

 そして、俺は何となく食感に覚えがある。

 このおでんはどこかで食べたことのある味だ。


 勝手にスーパーマーケットとかで安値で売られているものと推測していた。だが、それが良い。

 合宿所での食事費用が、綾先生のお財布から出ていてもおかしくないので、必要以上の贅沢は求めないようにしたいところだと思っていたが、このおでんのような庶民の味が楽しめるならこれといって気にならなくなる……。


「ごちそうさま!」


 おでんを平らげた俺は、すぐに立ち上がって洗面台へと向かう。食器を洗い、乾燥機に置いてタイマーセットしたら、出かける準備を始めた。


「大智君のお出かけ先はやっぱり鈴岡商店街でしゅ?」

「うん、そうなるかな」

「じゃあ、自分はお留守番してる」


 芽依は机の上に、本を広げていた。


「勉強熱心になるのは良いけど、あまり無茶するなよ」

「お気遣いありがとうでしゅ」

「じゃあ、行ってきます!」


「……わたしも行ってきますね」


「すずねも付いてくるのか」

「ここははっきりと忠告しましょう。今日のわたしは、わたしの目的の為に動きます」


「どういうことだ?」

「言葉の意味そのまんまですって……」


「二人していってらっしゃい、でしゅ!」


 芽依の元気な声を聞いた俺とすずねは、合宿所から出る。

 そのまま正門へと向かい、鈴岡商店街がある方向に振り向く。


「あっちのほうか」

「そうですね。今日は先日同様、天気が良いので人の動きはそれなりにありそうですが」

 すずねは、俺のうしろを躊躇なく付いてくる。


 でも、どこか。

 不安な顔の表情が見え隠れしていた。


「そういえば、先輩達はどこに出かけているんだろう……」

「今日は商店街のことで頭いっぱいじゃなかったんですか? 違うんですか?」


「俺、起きたら先輩達が居なかったものなんで……ちょっと気になっただけだよ」

「先輩達は兎羽を連れて体育館で魔法の補習を受けています。補習してくれる先生はもちろん綾先生ですよ。鷹子先輩は……山で熊狩り……?」


「鷹子先輩だけ何処か軸がずれているのは、聞かなかったことにしたいな」


「毎週の日課っていってましたし、聞き流すのが一番ですね。……ホント……熊狩りする女子学生がどこにいるんですかって……わたしからツッコミたいわ」


「すずねの心の声が漏れた……?」

「なんでもありませんよ。というか、お喋りしている間に着いちゃいましたし」


 すずねが手を広げた先には鈴岡商店街がある。

 そこはお店が立ち並び、青白い地面のアスファルトが続いていて、通行人がわいわいとしている賑やかな場所だった。

 日曜日ということもあって、商売の熱気もそこそこあった。


「さてさて……まずは確認したいことがあるので……」


 息の根を潜めたすずねは商店街に突撃していく。ちょっと待って、なんて言っても声が届かなさそうなので、先陣を切るすずねに置いて行かれないように歩いていくことにした。



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