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九蛾大智、後押しされる

おはようございます。第三話となります。

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「ちょっと、心折れないでよね!」


「……か弱い新入生の心を遠慮なく折ってしまうのも、大人としての務めですものね。流石に尊敬は出来かねますが共感は致します」


「それ、アンタの口から言うことかしら?」


「はぁ――そうやって生徒ひとりひとりからの信頼が徐々に失われていき、懐が心許ない状況に陥り、やがて特別講師という肩書きを学園長から押しつけられて例のプレハブで生活を余儀なくされてしまうのですね」


「昨年末の嫌なこと思い出すわ……てか、例のプレハブはもうなくなったのよ?」

「そうでしたっけ?」

「そうだけど?」

 ――と言いながら、女性教師は俺の方に視線を向けていた。


「俺に頼みごとですか?」

「うん。いまからすずねを連れてプレハブがあった場所に行ってほしいの。私は今からまだ登校してない七賢者の卵をとっ捕まえる義務があるから」


 キラリン。

 ――謎のウインクサインを送る女性教師は、勢いをつけて特急列車のように走り去っていった。


「なんなんだ、あれは……」


「魔法ですね。凪原(なぎはら)(あや)先生は魔法科と魔道工業科、両方の科目で授業を実施しているエリート中のエリートですよ。本気を出せば、六時間くらいで世界を一周回れてしまう超強力魔導エンジンの代わりにもなっちゃいますので」


「例えが意味わからん……」


「それは、そのうち理解できる日が来ると思います。いまは先生に言われた通り、プレハブのあった場所へと向かいましょうか」


「それは助かる……のか?」


 ひとつ疑問が思い浮かぶ。凪原先生が言っていたプレハブがあったところというのは、現在どうなっているのか。

 もし野宿とかだったらどうしよう。

 少し不安になりつつ、すずねに案内されるがまま校内を歩いていた。


「……ここがプレハブがあったところですね。以前よりちょっぴり豪華になっているんでしょうか」


 足を止めたすずねが指さす先には、正方形で屋根付きの建物が立っていた。


「七賢者の卵は今日からあそこで一年間寝泊まりするのです。どうですか? ワクワクしてきましたか?」

「……寝泊まりって。本格的な軟禁じゃないのか」

「大丈夫ですよ、その辺りのお話は凪原先生がしてくれるはずなので」

「そうか……」


 親族等に説明が行き渡るというのなら、過剰な心配は必要ないといえた。

 とはいえ、気になるな、あの建物。近日建て替えをしているくらいには、この建物自体が綺麗だと思えるのだ。

 美しい赤の屋根に、無地色の塗装が塗られた壁。窓もひとつ付いているが、建物内の様子までは確認することが出来なかった。


「それじゃあ突撃しちゃいましょう」


 ぐいぐい背中を押してくるすずねは、にんまりしていた。



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