すずねの情報整理
「提案か……考えておく……」
鈴岡商店街は尼野魔法学園から、そう遠くないところにある場所だ。商店街の中に駅もあって、人通りはそこそこ。
……あれ、どうして俺は道に迷ったんだろう。
あまり深く考えないことにしよう。
登校中の記憶が曖昧なので。
「ここに長居しずぎても綾先生の機嫌が悪くなりそうだから、いったん合宿所に戻るか」
「そうですね。わたしも戻るところですし」
「そうなのか?」
「大智君がそう見えなくても、実際そうなのですよ? 果報は寝て待て。なので」
「いまは寝たい、ってことか……」
「ふふふ。大智君は考え方がちょっと面白いですね。これはこれで末永く観察できそうですね」
「あまり、俺のことをじろじろと……」
「お姉さまに散々されましたね?」
「もういい、帰るぞ!」
「はーいっ」
すずねは笑顔になる。せっせと帰る準備をする俺は、椅子を綺麗に設置しなおした。
その後、本を抱えているすずねと一緒に本の返却を行い、図書館を後にした。
合宿所に戻る途中では、疲労も溜まっていたのもあって会話はしなかった。
夕暮れがとても綺麗だったことだけ、はっきりと記憶に残りそうだ。
「ただいま……」
合宿所のドアを開けた俺は、すぐに床へ寝転ぶ。
他の者は買い出しに行っているということもあって、室内はとても静かだった。
「綾先生は授業の準備とやらで、校舎で作業されていまして――」
「すぴー」
……俺はすっかり寝ていた。
昼寝すらしていなかったのもあって、すぐに深い眠りについた。
「ふふふ、大智君はノックアウトですね……さてと、他の皆さんが帰ってくる前に、お姉さまと共有した情報の整理をしなくてはなりませんね」
――どこから取り出したか分からないような、ノートパソコンのモーター音が聞こえはじめる。
「最初からまとめると、今から三日前に発生した事件については」
すずねはキーボードに触れて、カタカタと慣れた手つきで文字入力を行った。
「今日に至るまで、鈴岡商店街からそう離れていない老人ホームから、老人約四名が行方不明になっている。行方不明がひとり発覚する度にだが、おおよそ五時間以内に加美浜第二公園から不審な電波が発信されているのを確認済み。この電波は今のところ人体に影響はないとみているが、世界的にみて被害はどうなっているのかは未知数である」
――これがわたしが集めた情報。
そこにお姉さまが持っていたものを加える。
「鈴岡商店街の交番にて、六歳未満のお子さんが行方不明になっているという声が相次いでいる。いずれも昼ごろに居なくなり、その日の夜遅くには発見されて交番につれて込まれている。特に事件性はないとみているが、この交番の近くには加美浜第二公園がある」
……お姉さまの情報。
ろくでもないものかと思ったら、意外とちゃんとした情報だった。
それに足したいものがある、芽依の供述。
「芽依が遅刻した時、見ちゃった。自分のお母さんを。でも、これはすぐに違うと分かってしまった。芽依のお母さんは、幼いころに起きてしまった魔法の事故で育児放棄してしまって、現在は海外で働いているのだから日本に来るはずがないのを知っていたから」
コレはこれで、なかなかの裏事情があって別の興味が湧くのだけど、芽依曰く電話等で連絡しあっているらしいので親不孝ということではないのがはっきりしていた。
すずねにとっては、やや面白みに欠ける情報となる。とはいえ、お姉さまの情報とは因果関係がありそうな匂いがしているので追求しがいがありそうだ。
「こうして全部まとめて読み直してみると、ピーンとくる単語があるにはあるのですが……」
条件と法則性。肝心の現場調査が出来ていないのでなんともいえないが、この事件は本気でゴーストとかドッペルゲンガーを疑ったほうが良いと思えてくる。
まぁ、その答えは明日つかみにいくとしますが、果たしてどうなることやら。




