合宿所でのひととき
「合宿所に、着いた……」
不審がられることなく無事に建物の中に入った俺は、ドアを閉めてくつろぐ気でいた。
だが……くつろぐ、と決めていても。
重士朗コレクションのことが頭の中から離れない。
「お布団で横にならせてくれ……」
と、ひと言だけ伝えたら、その場でうつ伏せになった。
「布団もなしに、羽をのばすなんて……大智くん、よっぽど疲れたんだね」
「……そうだな」
辛うじて頭をあげた俺は、和やかにしている芽依の顔と視線が合った。
「とりあえず、綾先生が帰ってきたら起こして」
「わかった。そうしましゅ」
「よろしくな……」
再び顔を床につけた俺は、両目を閉じる。
七賢者の卵。
重士朗コレクション。
これから始まるのは、尼野魔法学園での生活。
慣れないことに慣れろというよりも、もっと大事なことを忘れているような気がする。
まぁ、これ以上考えても仕方ないか。
今はまず、あの重箱を開ける方法について考えたい。
――とはいえ、魔法演説をやった程度では、新たなインスピレーションが沸いてくることは難しい。
まだまだ情報が足りないのだ。
そうなら、何処に行こうか。
……学園内に、図書館ってあったような。
アテになるとは限らないが、尼野魔法学園の敷地内にある図書館へと行ってみたら何かヒントになるものがあるかもしれない。
ひとまず、身体を休めないと。
それから行動に移そう。
綾先生は鷹子との面談が終わったら、魔法科の皆との面談が待っている。
つまり、現状では誰かに頼れない状況ともいえる。
――ゴトン。目を閉じて考えごとしているうちに、扉が動く音がした。
そして、美味しそうな肉汁の匂いが、俺の鼻の元まで来ていた。




