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雷の魔法



「は、はい……?」

「そろそろ、お昼ご飯を何にするか決め時だろ?」

 鷹子は体育館にある丸い時計に指さした。


 時刻は午前十時二十分。入学式の後の学活が終わる頃かもしれない、微妙なタイミング。


「姉さま、ステキ……」

 感心を寄せる聖沙の声が漏れた。


「ああ、それは……うーんと」

「どうだ。拙者との面談は退屈になるだろうし、ここは街中まで足を運んでみるのはいかがなものかと思ってだ」

「あーわかった、わかった。行けばいいんだろ!」


 綾先生は鷹子を連れてその場を離れるようだ。


「――ということなので、魔法演説ちゃんとやっておいてよね!」

「了解です」


 俺は誰よりも早く口走っていた。

 俺自身、魔法は使えない身だが、魔法を見れる機会はいままでそうそうなかったものなので、じっくり観察しておきたいところだった。


 課題をこなす上で何かヒントをもらうかもしれない。

 過剰な期待はしないほうが良いが……。


「綾先生が退席したところですし、ここは魔法科の皆さんでそれぞれ得意魔法を使うというのはどうでしょうか?」

 真っ向から提案してきたのは、莉桜だった。


「アタシは姉さまが傍にいないから」

「まぁまぁ、聖沙先輩はそんなこと言わずに。あとで鷹子先輩の秘蔵プロマイドを差し上げますよ?」

「ごくり……」

 聖沙に急接近したすずねは、ポケットから電子端末を取り出した。


「どうです? どうします?」

「ふん、仕方ないね。今回だけよっ」

「ありがとうございまーす!」


「……ほんとうに今回だけだからね?」


「ふふふ――わかってますって」


 ……すずねに弱みを握られているな、これは。


「それで、聖沙先輩はどんな魔法を使うんですか?」


「男には言ってなかったわね。アタシの得意とするのは、雷属性よ」

 そう言った聖沙は、精神を集中させる。


 俺の名前は九蛾大智だ、覚えておけ。と目で伝えようとしたが、聖沙からの嫉妬が消えることはなかった。ただ単に、睨みつけられるだけだった。


「念のため言っておきますが、魔法の使用者からはできるだけ離れてください」


 その場を仕切る莉桜が皆を集めて、対魔法用の簡易シールドを展開する。

 これで遠慮なく魔法を使うことが可能だ。ここ、尼野魔法学園の体育館は特殊な加工が施されており、あらゆる魔法でも倒壊しない設計になっている。


 集中力を高めた聖沙は、無雑作に黄色い魔方陣を幾つも出現させていた。

 雷魔法となると、何か的があったほうがよくわかりやすいが、そんなのお構いなく魔法を使おうとしていた。


「支離滅裂――雷鳴の唸りよ、創世なる母の礎となり乱華(らんか)せよ」


 呪文を言い放った後、魔方陣から稲妻が見え隠れする。


「あっ、そろそろですね」

「大智君も、先輩さんの魔法をちゃんと見ておくの……です……」


「芽依に言われなくても、そのくらい理解してるって」



「――いきますわ、ライトニング・エンペラード!」


 次の瞬間――。


 辺り一面が、一瞬。

 稲妻の光に覆われた。


 ――バチチッ。

 太い縦方向の稲妻と、それを取り囲んで六角形を線で形成する細めの稲妻。


 魔方陣の位置は適当に決めたように見えていたが、いざ線として結ぶと、これまた美しい光景となっていた。

 稲妻が弾けだし、空気触れるものは全て感電させる魔法。


「……ふう」

 聖沙はひと息つくと、稲妻の光はすっと消えた。



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