1-3 魔王をテイムしちゃいました。
その美人さんは、アリサと名乗った。
「私は、アリサ。アリサ・ナウヴィスと申します。あなたをお迎えに参りました」
へっ?
俺は、何が何やらわからなかったが、とりあえず、彼女の後についていくことにした。
だって、彼女は、なんだか、アズミちゃんの親友のミサちゃんに似ていたから。
彼女は、街を抜け、王都の外壁を抜けて、歩き続けた。
俺たちは、埃っぽい街道をひたすら歩き続けた。
どこまでいくわけ?
俺は、聞きたかったのだが、なんだか、きける雰囲気ではなかった。
なんだろう。
アリサは、すごく思い詰めたような表情をしていて、俺も、黙ってついていくしかないような気がしてしまう。
途中で鬱蒼とした森の中を歩いていたときのことだ。
何かのきゅうきゅう、と泣くような声が聞こえて俺は、立ち止まった。
俺は、気になって、道端の木立の中へと頭を突っ込んだ。
そこには、小さな翼を持った蜥蜴のようなものが大きな罠に足を挟まれていた。
「まだ、幼体のドラゴンですね。飛びウサギの罠にかかったのでしょう」
アリサが、言った。
俺は、そっと近づくと、その蜥蜴の足元の罠をはずして、蜥蜴を解放してやった。
「きゅう」
蜥蜴は、嬉しげに羽をバタつかせて俺の回りを飛び回ると、俺の肩に止まった。
ピコン、と音がして、ウィンドウのようなものが現れた。
『テイムしますか?』
テイム?
俺は、内心、わぁ、本物のファンタジーみたい、とか思っていた。
でも、どうやったらいいんだ?
俺は、声に出して言ってみた。
「テイム!」
すると、俺の体から、光の帯のようなものが現れて、その飛び蜥蜴の首もとへと絡み付いた。
ピコン。
また、パソコンのウィンドウみたいなものが現れた。
『暗黒竜、別名、魔王をテイムしました』
「はい?」
俺は、ハトマメ状態だった。
魔王って、何ですか?
アリサは、俺の困惑をよそに、ただ、感心した様子で言った。
「ドラゴンをテイムされるとは、さすが、勇者様ですね」
ええっ?
俺は、さらに驚き、絶句した。
勇者って、俺が?
違うよね。
だって、俺、『農民』だし。
「俺、『農民』なんじゃ?」
「違いますよ」
アリサは、言い切った。
「あなたは、予言の書に表された伝説の勇者様です」
マジで?