2-7 土壌改良しますか?
2ー7 土壌改良しますか?
翌朝。
昨日とは、うって変わって青空が広がっていた。
俺たちは、奴隷たちに指示を出して、竈を作らせ、ストレージから出した食材で朝食を作らせた。
女たちは、やっと旅が終わったという安堵からか、明るい表情を見せていた。子供も、老人たちも、疲れは見えたが、新しい国という希望のためか総じて楽観的で、笑顔も見られた。
この人たちは、きっと、俺なんかが想像もつかないような辛酸を舐めてきたのだろう。
なんとかして、ここに、ちゃんとした国というか、街ぐらいは造ってやりたい。
俺は、なんかの肉を焼いたものと、シチューを食べると、ジルを誘って、辺りを探りに行くことにした。
竜車から地竜を外すとジルは、それに騎乗した。俺は、馬にも乗ったことがないので辞退すると、歩いて行くことにしたのだが、アリサと一緒にいたアズミちゃんが俺の方にパタパタ飛んでくると、巨大化した。
アズミちゃんは、俺の頭を甘噛してきた。
「きゅっきゅう」
「わかった、わかった」
俺は、頭がアズミちゃんの唾液でびしょびしょになっているのを振り払いながら、巨大化したアズミちゃんの背に跨がった。
俺がしっかり掴まると、アズミちゃんがその巨大な翼を広げて空中へと飛び立った。
マジか。
俺は、空から、俺たちの土地を見た。
うん。
荒野だな。
ほぼ、草木もはえてない荒野が続いている。
そして、その土地の半分以上が沼地だった。
どうするっていうの?
これは、どう考えても、人の住める場所じゃねぇし。
俺は、下を走っているジルを見た。
地竜は、沼地に足をとられてなかなか進めずにいた。
俺は、ジルに向かって、手を振った。
「いったん、戻るぞ!」
ジルは、なんとか地竜を沼地から出すと、俺の後についてもといた岩場に戻った。
俺は、地上に降りるとアズミちゃんの首もとを優しく撫でてやった。アズミちゃんは、目を細めて俺にすり寄ってきた。
「きゅう」
かわいいな。
俺は、地竜と帰ってきたジルに言った。
「ここは、沼地が多くて、このままじゃ、住めそうにないな」
「ああ」
ジルが暗い顔をして頷いた。
「まったく、どうすればいいものか」
俺たちが、頭を悩ましているとピコン、とウィンドウが開いた。
『土地改良を行いますか?』
そんなこと、できるの?
ウィンドウが開く。
『土壌改良をしますか?』
「よし!土壌改良だ!」
俺がそう言うと、俺の前の辺りいったいに巨大な魔方陣が展開されていった。
光に包まれた大地は、みるみるうちに土地が乾き、沼が消えていく。
低地は、盛り上がり、大地は、平らになっていった。
「これ、何?」
アリサが感極まった様子で呟いた。
「すごい。こんな魔法見たことがない」
こうして、その日の夜が来るまでには、あらかたの土壌改良が完了した。俺たちは、その日は、洞穴ではなく星空の下で夜営をすることができた。
奴隷たちは、協力して何やらいい匂いのするシチューを作り、みんなに分けあっていた。
「はい、お兄ちゃん」
猫耳の金髪の少女が俺にシチューの椀を持ってきてくれたので、俺は、礼を言って受け取った。
「ありがとう」
少女は、はにかんだような可愛らしい笑顔を浮かべた。
この笑顔を守りたい。
俺は、なんとか、ここにこの子たちが安心して暮らせる場所を造ってやろうと決意していた。