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誤訳怪訳日本の神話  作者: 大橋むつお
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58『思い出した!』

誤訳怪訳日本の神話


 58『思い出した!』  





 思い出した!



 トヨタマヒメと夜を明かしたヤマサチは、ガバっと起き上がりました。


 夕べまでトヨタマヒメと過ごした海底宮殿の甘い生活が、いっぺんに吹き飛んでしまいます。


「ぼくは、釣り針を探していたんだった!」


「あ、えと、釣り針なんて、どこにでもあるから、ね、そんなの忘れて寝ましょうよ。なんっだたら、また二人で励みますぅ(#*´ω`*#)?」


 そう言いながら、トヨタマヒメはヤマサチに身を寄せます。


「ウウ……めっちゃ未練は残るけど、そんなこと言ってられないんだ、針を、釣り針を持って帰らなきゃ、兄きにも、ご先祖の神さまにも申し訳がたたないんだ!」


「し、仕方ありません、お父様に相談します(-_-;)」



 トヨタマヒメはシャワーを浴びて身づくろいをすると、父のワタツミの神の部屋に向かいます。



「おお、トヨタマヒメ、朝からシャンプーの匂いなどさせよって……お!? ひょっとして!?」


「そんな話じゃありません! あの人、釣り針のこと思い出しちゃって……」


「だったら、抱き付いて励んでしまえば、すぐに忘れる。おまえの魅力は父が保障するぞ!」


「いや、もう通じないのよ。思っていたよりも大事な釣り針のようで」


「そうか、では仕方ない、魚たちを集めようか。おい、大臣……」


 ワタツミは大臣に命じて、釣り針に憶えのある魚たちを集めさせました。



「どうだ、おまえたちの中で釣り針に憶えのある者がいたら、手を挙げろ!」


 魚たちは、互いに顔を見かわして、ブツブツ声をあげます。


「手を挙げろと言われてもなあ……」


「俺たち、ヒレがあるばかりで、手も足もないからなあ」


「足ならあるぞ」


 イカが名乗り出ます。


「イカ、おまえ知ってんのか?」


「だって、足がいるって言っただろ?」


「釣り針を知っていたらだ」


「それなら、知らねえ」


「だったら、出てくんな!」


「オレ、知ってるかも……」



 今度は、タコが足をあげました。



「よし、知っているなら申せ! 正解だったらたこ焼きをやるぞ!」


「あ、共食いになるから、いいっす」


「じゃ、タコつぼをやろう。おまえ、先祖は貝類だから、居心地がいいぞ」


「あ、それ、いいかも(^▽^)/」


「で、どこで見た?」


「ああ、なんだか、鯛の親父が喉に引っかかって飯も喉を通らないってボヤいてましたから……」


「それだ! よし、鯛を呼べ!」



 呼ばれた鯛の喉には、ウミサチの釣り針が刺さっていました。



「よしよし、でかした! 鯛にはタイ旅行のクーポンとアンコ焼きの命名権を授けよう! タコにはタコつぼじゃ!」


 こうして、釣り針はヤマサチの手に戻ります。


 鯛はアンコ焼きをタイ焼きと命名して、ファンを獲得。タコは、タコつぼに住むようになりましたが、その習性を知った人間たちに掴まってしまう者が続出したという話でありました。


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