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誤訳怪訳日本の神話  作者: 大橋むつお
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2『日本列島を生む!……その①』


誤訳怪訳日本の神話


2『日本列島を生む!……その①』    





 第一回で書いた天の神さまたちがイザナギ・イザナミに、こう言いました。


「このサラダオイルのクラゲのようなものをなんとかして国を創っちまえよ!」


 なんとも無茶なことをいいますが、さすがは初めて登場した実体の神さま。神さまたちが立派な矛をくれたので……。


 と、ここで最初の疑問。矛とはなんぞや?


 矛盾の矛にあたるものですが、案外これが分からない。わたしも大学で聞いた時、正直分からなかったのですが、あまりに原始的な質問なので、控えた覚えがあります。


 で、教える立場になって、初めて調べました。


 槍と同様な武器なのですが、外見上では矛は柄との接合部が袋穂とよばれるソケット状になっています。いわば帽子ですね。槍はなかごを差し込んで固定する方式、つまりボールペンのキャップのようなもので、キャップの先が両刃の刀のようになっています。


 人に例えると、頭に刃物付きのヘルメットを被ったようなものです。


 使い方も違います。矛には両側に刃が付いていて、突く以外に切るという刀に似た使い方があり、基本的に右手で持って左手には楯を持ちます。つまり楯とセットの武器で、ここから矛盾という言葉が生まれるわけで槍楯そうじゅんと言わないのは、このへんの事情かと思われます。


 また、反面断面積が大きいため突く力は槍には及びません。見かけは立派ですが、槍ほどの力は無く、鎌倉時代末期に冶金技術の進歩によって槍が登場すると、あっさりとって替わられ、神社などの儀式用に一部が残るだけになりました。


 ちなみに、この矛先と柄が離れるようになっていて、矛先に紐を付けておき、仕留めた獲物を回収できるようにした漁具を「銛」といいます。昭和の昔捕鯨に対して世界がイチャモンを付けなかったころ南氷洋の捕鯨船の捕鯨砲に付いていたのがこれの特大で、給食にクジラのフライが出てくるたびに、映画のニュースなどで見た捕鯨砲の砲手の勇ましさを実感したものです。


 近くはファイナルファンタジー10で、ビサイドからキーリカに行く途中シンが現れ、乗っていたキーリカのブリッツボールの選手が、船からシンに向かって撃つのが、この捕鯨砲みたいなやつで、ロープがついており、船は、このロープに引っ張られ、危うく沈没の危機に陥ります。


 こういう話を授業では「脱線」と言いましたが、こういうところにリアリティーを持つか持たないかで、授業のダイナミズムが変わってきます。


 例えば1543年に鉄砲が種子島に鉄砲が伝来したときも、鉄砲の作り方を説明します。


 刀を造るのはは「打つ」といいますが、鉄砲は「張る」といいます。


 鉄の棒の周りに鉄の長細い板を熱して飴のように張りつけ、これを何重にも重ねて。最後に油に漬けて一瞬で冷やし、収縮率の高い心棒の鉄を抜いて銃身を作ります。


 ただ尾栓(銃身の尻に突っ込む栓。これがしっかりできていないと、数発撃っただけで尾栓が射手の顔を直撃して、射手の命を奪ってしまいます)が分かりません。


 あくる1544年にふたたび種子島にやってきたポルトガル人は、本物そっくりな鉄砲を日本人が作ったことにタマゲますが、尾栓を知らない日本人にニンマリ。大金を吹っ掛けて製法を教えます。日本人がネジを知った最初です。


 正解は、なんのことはない。尾栓はただのネジだったのです。日本人の技術の高さと、技術への偏見のない好奇心、技術への熱意を物語る話です。技術立国日本の姿は、この時代からあったものなんですね。


 ここで字数がいっぱいなので、国生みの本題は次回にまわします。


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