第7話 暗殺対象
「それで、エルは何を受けようとしたんだ?」
「これを見なさい」
エルが指をさし、その依頼書を見てみる。
【暗殺対象】リリネ・ヴァレンシア
【性別】女
【年齢】16
【特徴】王位継承権第一位。ヴァナンガルド魔法高等学院に通う生徒。
【期限】一年
【報酬】聖金貨10枚+階級の昇格
とこのように書いてあった。
「この人は王の娘。そして、何よりも警戒しないといけないのは彼女を取り囲む護衛よ。彼らは大会で実績を残した凄腕の持ち主。私たちでは到底かなわない」
「なら、エルならどうする」
「私は学院に入学する。学院までは護衛はついてないからそこが狙いどき。まぁ監視はあるけどね。でも流石にこの私では入学出来ないから...」
「俺らにか?無理だろ。亜人が入学できるはずないだろ」
「私にはそれが出来るのよ!変身魔法があるからね!龍太郎とリアの耳と尻尾を隠すぐらい容易いわ!ただ、1日ごとに魔法は掛け直す必要があるけどね」
確かにエルは小学生っぽくてあまりにも入学出来そうにない、それに代わり、俺となんとかリアならいけそうだ。それに、王位継承一位ということは次期の女王になるということではないか、そいつを殺すことによって、あの王様やこの国に復讐ができる。この依頼は願ってもない好機ではないだろうか。
「やってみる価値はある。でも入学ってのは難しいだろ」
「この学院には魔法を使えるものなら転入という形で入れるわ。龍太郎、あなた魔法は使えるわね?」
「治癒魔法だけなら使える」
「十分だわ。リアは?」
「強化魔法使えます」
「あなた達、駆け出し暗殺者の割には魔法は使えなのね。ってなんでここまで私は話したのかしら!バカなの私は!頑張ってやらなくて済むのに!」
エルは自分のことを悔いていた。
俺とリアは目配せをし、意見が一致した。
「エル。俺たちはこの依頼受けようと思う。もちろん協力してくれるな?」
「もちろんよ!私はやらなくても良いけど、龍太郎とリアがやるなら私もやるわ!私は影であなた達をサポートする」
「心強いな」
俺は依頼書を剥がし、受付に出す。
「依頼受理した。暗殺対象の暗殺はギルドが責任を持って請け負う。ただ、それ以外の暗殺はお前らが責任を負え。以上健闘を祈る」
そうして、俺たちはギルドから外へと出た。
「ってか何でそんなに詳しいんだ?エル」
先程から思っていたことを口にした。
「暗殺者ってのはね。情報戦なの。いかに情報を手に入れるかによって生死や暗殺の成功がかかってくるの。だから私は依頼書の隅々まで下調べしている。いつなんどき、何があるのかわからないからね。要するに情報を手に入れないといけないって言うことよ。これは肝に銘じておきなさい!」
情報戦というのは暗殺以外にも言えることだな。エルが下調べしてくれたおかげで、こうやって順調にことを進められている。それは素直にありがたいことだ。
俺たちは路地裏を歩いていき、大通りに出ようとするが、冒険者どもが騒ぎ立てていた。どうしても大通りを通らないと家に帰れないので、様子を伺っている所だ。
「おーーーい。皆んな聞いてくれ!ここら辺に二匹の亜人がいる!一緒に協力して見つけないか?」
「え、亜人がいるの‼︎」
「それって自由に動き回っているってこと!そんなこと許されないわ!」
「俺たちも協力するぜー!」
「私たちももちろんやるわ!」
酷いことに殆どの人たちが亜人探しを始めてしまった。このままでは流石に見つかってしまう。
「あなた達、何をしでかしたらこんな騒ぎになるの!バカなの?」
エルは大通りの様子を伺いながら俺たちに問う。
「この国がおかしいんだ。俺たちが亜人ってだけでこんな騒ぎ。可笑しいだろ?」
全く可笑しくない。残酷すぎる仕打ちをこの国で受けてきたのだ。笑えるはずがないのだ。ただこんな奴らに自分が劣っているとは思わない。だから、言える。
「確かに可笑しいわ。亜人の何が悪いのよ。それだったら私だって...。いや、、それにしても、本当こいつら胸糞悪いわ!国民が血眼になってまで探している。この国狂っているわ!」
エルは何か事情がありそうな口調だった。でも、この国の異常さにエルは異議を唱えていた。やはり仲間にして良かった。それは俺に限った話ではなく、リアも微笑を浮かべ、エルを見つめていた。
「エル。頼もしいです」
リアがエルに向けてそう言った。
「何よ。私はあなた達を導くの!任せなさいって言ったもの!私は頼もしいの!リア今更それを知ったの?流石に遅いわね」
「そうだったのかエル」
「龍太郎も!さっき言ったばかりなのに!はぁー。あなた達バカね」
エルが落ち込んだ様子を一度見て、俺は改めて大通りに目を向けた。
「こいつら全員殺すか」
「それも良いかもしれないけど。そんなことやったら指名手配されるわ。暗殺者は隠密に誰にもバレずにやるものよ。こんな大通りで人が殺されたら、騒ぎになって時期に捕まるわ。もし誰かに見られたらそいつら全員皆殺しにしなさい。そうしないと危なくなるわよ」
こんな少女が殺すだの誰にもバレずにだの、よくよく考るとおかしなもんだ。
「そうだな。早とちりしてしまった」
この国の復讐心が疼いてやまなかった。
「さて、大通りを通らなければ家に着けないと龍太郎は言っていたわね?」
「そうだ。大通りの先にある」
「なら、私に考えがあるわ」
「お得意の変身魔法か?」
「いや。違うわよ。頭悪すぎる!」
「教えてほしい?」
「あぁ。頼む」
誰にもバレずに通る方法があるなら知りたいものだ。
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