第12話 リリネ暗殺
教室に戻るとリリネが自分の席に座っていた。
最初の威勢は何処かへ消えてしまったかと思うくらいに机に突っ伏していて、どんよりとした空気が包む。
先程チャイムが鳴ったので今は10分の休み時関だ。少し話しかけたいが、周りに取り巻くリリネを慕う人達がいて話しかけづらい。俺が教室に入っても何も言わないので、理事長と何かあったのだろう。
「おい、先程までの威勢はどうした」
リリネは机に突っ伏したままだが、取り巻きが一斉にこっちを見てきたので、少しビクッとした。
「貴方には関係ないわ」
「理事長と何かあったのか?」
「だから関係ないって言ってるでしょ!もう何も言わないから、あなたももう私に話しかけてこないで...」
急に椅子から立ち上がり、周りの取り巻きも驚いている。一度声を荒げたが、ゆっくりと悲しそうに座り直す。
リリネと接点を持てないと困る。親しくなればそれほど隙は出る。そして、暗殺成功の可能性が上がるのだ。
「ふっ、、、ふっ、、ふっははははははははははははは。あれほど啖呵切っておいて、なんだその落ち込んだ様子は!!本当滑稽だな。貴族ってこんなにも気分屋だったのか」
俺は笑いまくって挑発してみた。こうすれば我慢しかねた王女様が突っかかってくるだろう。
「くっっっ、、、!言いたいことはそれだけ?なら席に戻りなさい。授業が始まるわよ」
感情を高ぶらせたが、冷静になる。
「リリネに指図される筋合いはないね。リリネも一限の授業サボっていただろ」
リリネは理事長室に行って一限の授業をサボったのだ。
「私のことリリネって呼ばないで!もう言わなから、戻って」
懇願して俺にそう言う彼女はとても哀れで、醜かった。
チャイムが鳴り、俺は席に着いた。窓側の席なので朝の太陽でとても暑い。
先生もまだ来る様子がないのでリアに尋ねる。
「リア。リリネはずっとあの様子か?」
「そうですね。教室に入ってきたら既にあの様子でした。他の生徒もリリネさんの様子に驚いていました」
「そうか。変化の理由が気になるな。理事長が関係あるのは間違いないが」
「後、ギルガさんに変化はなかったです」
理事長は転入試験のことと言い、何か裏がある筈だ。これはエルやリアに調べてもらおう。
「理事長も監視対象に加えといてくれ。変化が有ればすぐに教えてほしい」
「了解です。龍太郎も何かあったら教えてくださいね」
「あぁ」
俺はリアに先程あったことを伝え終えたら、扉が開かれ先生が来た。
授業はそれほど苦ではなかった。魔法の使い方や剣術のこと、実験も行われた。そのどれもが新鮮で心を躍らせ、興味が湧いた。それは俺に限ったことではなく、リアも目を輝かせながら授業を聞いていた。
そして、授業が終わり、放課後。リリネがカバンを持って椅子を立ち上がったので、リリネの尾行をすることにした。一応、リアも一緒だ。
「全く1人になる時がないな」
どこへ行っても取り巻きがいて中々1人にはならない。それは昼休みでも10分休みでもトイレですらも取り巻きがいた。人気者にも程がある。
「これはきついな」
予想は出来たことだが、目の当たりにすると少し焦る。このままではいつまでも暗殺が出来なくなる。なんだったら転入初日に暗殺したかったが、これは無理そうだ。
リリネは学院の帰宅路を歩き、とうとう学院の門を潜った。門の前には鎧を着て剣を携えているリリネの守り人が5人いる。威圧感があり、強者の風貌があった。まともにやったらまず敵うはずがない。
やはり、俺のテリトリーは学院の門までという訳か。
リリネは1人にならないし、話しかけてこないでとも言われている、どうしたものか。話しかけて、友達になる。だが、よく考えてみろ、友達だったら取り巻きの1人になるだけで、リリネに隙が出来るわけではない。だったら、リリネを彼女にすれば、、、って無理無理無理。今まで恋人なんていたことないし、女子ともまともに話したことがないのだ、いきなりリリネを彼女にする、惚れさせるってことが俺に出来るはずもない。話すことは簡単だ。亜人以外はゴミと見ている俺としてはゴミに話しているのと変わりないのだが、それ以上の関係になれるハードルが高い。
だが、ウジウジ言っても仕方ない。この国に復讐、いやこの世界に復讐するためにはやるしかないことなのだ。この依頼は初めの一歩としては申し分ない。だから、俺はリリネの彼氏になって隙があればすぐさま殺す。でも、それは少し勿体無いな。もう一度心の中で目標を決める。『リリネの彼氏になって拷問しながら殺す』これにする。今までの復讐を少しでも解消できるように。
「あの。龍太郎?どうしましたか?」
少し顔に出てしまったか、リアが心配そうに聞いてきた。
「いや、なんでもない。ただ、これからが楽しみだ」
そして俺たちと学院の門でエルと会ったので帰ることにした。




