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第10話 【暗殺対象】リリネ・ヴァレンシア


「佐藤龍太郎。お前らとは仲良くなることはないから、話しかけてくるな」



全体を見渡す限り40人は収容されている教室で、俺は黒板の前の教壇で開幕早々クラスの奴らとの溝を一気に解消した。もちろん悪い意味で。



「な、なんなのかしら。この男は!転入と聞いて期待していたのだけど、こんなつまんない男だったなんて。残念だわ」



1人だけ席を立ち、俺に向かい言ってくる。周りは騒がしくなり、俺に注目が集まる。だか、そんなことは知ったことではないのだ。俺はこの学院に入った理由はリリネ・ヴァレンシアを殺すためだけだ。殺したらこの学院には要はないのだ。



「何故、下民がこの学院に入れたのか不思議ではならないわ!下民風情が魔法を使わないでもらえるかしら?神聖なる魔法が汚れるわ」



「下民?下民の何が悪いんだ。この国はほとんどが下民じゃないか?」



この国は下民が8割貴族が2割と言われているのだ。



「くっっ、貴族の紋章がなかったのはやっぱり下民なのね。この学院は殆どの生徒が貴族よ。私たちは魔法適性がとても高いの。でも、下民は魔法適性が全くないの。あったとしても貴族には及ばないわ。だから貴方達は一生私たちの奴隷よ」



こいつの胸には十字架の銀のプレートがつけられていて、他の者たちもつけていた。つけていない者は俺たちだけだった。それに奴隷だと?俺はその言葉が一番嫌いだ。この国での亜人差別といい、下民差別といい、この国は本当腐り切っている。 ましてや、こんな金髪で美少女と認めざるを得ないほどの人が奴隷と発言することに鳥肌が立つ。

だけど、俺は暗殺者だ。事を荒げて悪目立ちするのは良くないが、流石にここまで侮蔑の視線がクラスの全員から受ければ耐えられるはずがない。

それはリアも同じく、怒っている様子だ。



「奴隷がなんだってー」



と俺が怒りをぶち撒けようとした時、席を立つ1人の生徒が言葉を遮る。それは金髪でイケメンな少年だった。



「2人とも、そこまでにしていったん落ち着かないか?」



「な、何言ってるのよギルガ!あなたは下民がこのクラスにいても良いと思っているのかしら?」



俺から視線を移し、ギルガとやらを見る。



「別に良いと思うんだ。この際だからみんなで交流を深めないか?」



「ギルガ本気で言っているのかしら?本気だったら、私はあなたのことを軽蔑しなくてはならないわ」



口論が始まっている。これは先生が辞めなくてはいけないのだろうと思い、隣を見てみると、困惑しながら、眺めていた。止めようとせず、だが、汗は尋常じゃないほどかいていた。貴族には色々と事実があるのだろう。



「よしてくれよ。もう決まったことなんだからしかたないよ。今更言ったて、変わらないんだから。クラスの皆んなもどうかな?」



クラスを見渡し呼びかける。



「ギルガ様が言うなら...」

「でもリリネ様が...」

「私はギルガ様に賛成する」

「それだとリリネ様が可愛そうだわ」



色々と意見が交わり、ギルガ派とリリネ派に分かれてしまった。このままだとずっと平行線になってしまう。ってか今リリネって言ったか?まさかこいつがリリネだとは思わなかった。これは好都合ではないだろうか。転入初日に話を交わし、名前が分かり、それに加えて同じクラスになった。これは大きな利点だ。殺す対象を見つける時間を短縮出来た。



「私は絶対に認めないんだから!」



「そうですよギルガ様。リリネ様の言う通りです」



「待ってくれよ。俺はリリネと口論したいわけじゃないんだ。ここは一旦持ち越すのはどうかな?」



「ギルガ様の仰るとおりです!」



本人達が言うたびにその派閥のガヤが飛んでくる。俺たちは蚊帳の外で眺めている。



「ギルガはいつもそう!結論をいつも出さないで、明日へ明日へと持ち越して逃げるの。そんなあなたは嫌いだわ」



「俺は何を言われても気にしないよ。リリネはどうしたら気を収めてくれるのかな?」



「この下民を退学にさせることよ!」



こいつは何を言っているんだ。転入早々の自己紹介だぞ?それで退学しろってふざけすぎだろ。どれだけ下民を毛嫌いしているのだ。



「おい、教師。俺たちの席はどこだ?」



「あぁ。一番後ろの右端だ」



何もしない教師に敬う気持ちは不要だろう。



「わかった」



俺は教師に小声で尋ねた。そして、2人が口論しているうちに席へと座った。俺が端でその隣がリアだ。リアはまだ自己紹介出来ていないけど仕方ないか。まぁしなくて正解だが。



「って!何あなた勝手に席に座っているのよ!」



「どうぞもっと続けて」



「はぁ?こうなったのもあなたのせいじゃない!さっさと出ていきなさいよ!」



「リリネもうやめないか」



ギルガが仲裁に入る。だが、余計なことだ。



「ギルガには関係ないでしょ!もう話しかけてこないで」



「いや違う。お前が勝手に突っかかってきたんだろ。出ていくならお前が出ていけ。俺は出ていかないからな」



俺は頬杖をついて、窓の外を眺める。すると、柵の向こうに隠れているエルを見つけた。望遠鏡をこちらに向けて様子を伺っていた。流石、暗殺者の先輩だな。



「私がですって!?ふざけないでよ。もう勘弁だわ!だったら私と勝負しなさい!」



「勝負?何をやるのか?」



「えぇ。勝負は魔法勝負よ。どちらかが戦闘不能になるまで魔法で戦うのよ」



「そうか。ヤダね。俺はまだ強くない」



「負けるから怖いんでしょ!これだから下民は、、、救いようがないわね」



「なんとでも言ってくれ、今はまだ戦う気になれない」



勇者ほどの実力者を殺さないとそのステータスが手に入らないのだ。今の俺が戦ったら、勝機はない。



「そう、だったら私が理事長に抗議してくるわ!このまま話し合っても時間の無駄だわ」



すると、1人怒りの形相で教室を後にした。

その後、数秒間の静寂が訪れたが、ギルガという少年が俺に話しかけてきた。



「ごめんね騒がしくしちゃって。改めてギルガ・ゾークこれからよろしく」



ギルガが手を差し出す。



「別にいい。それより馴れ合うつもりはない。これからは話しかけないでくれ」



俺は手を弾き、馴れ合う事を拒絶した。



「そうだよね。転入初日だし、これからだよね。リリネはああ言ってるけど、僕は気にしないから、気軽に接してくれると有り難いな」



にこやか笑顔のまま、優しく話してくる。俺は適当に返事をしておく。



「あぁ」



このクラスで話す相手はリアとリリネ・ヴァレンシアだけでいい。暗殺は情報戦だリリネとはもう少し距離を縮めても良いのかもしれないな。



「それで君の名前はなんて言うのかな?」



「名前は内緒です。私も馴れ合うつもりはないです!」



よくぞ言ってくれた。ナイスだ。いい子だリア。



「それは残念だな。クラスの一員になったんだし、これからよろしくね」



そして、ギルガと他の人たちは自分の席へと戻っていった。

さて、リリネの後を追うか。


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