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第9話 転入試験


エルが根城にしている家は意外と近くにあった。なんとミスレディーの家と隣だったのだ。こんな偶然あるものだと思ったが、世の中は偶然が重なって出来ているとも言うし、いちいち気にしていたってしょうがないのだ。エルの根城はミスレディーの家と違って木製で、築20年というところではないだろうか。少しボロいし。

という訳で、俺たちはエルの根城へとお邪魔した。

入ると、中は薄暗くて、目を凝らさないと壁にぶつかってしまいそうなくらいだ。



「エル、電気つけてくれないか?」



「暗殺者たるもの闇に潜んでターゲットを殺ろすものよ。明かりなんてつけちゃいけないわ!そのぐらいわかりなさい!もうバカなんだから!」



そして、扉を引き、部屋に入った。一室しかない貴重な部屋だ。

中に入ると殆ど何もなく、ベットとテーブルがあるくらいだ。



「今日はもう寝るわよ。私は床に布を敷いて寝るからあなた達はベットで寝なさい。ふぁーー。眠い眠い」



今はとっくに真っ暗だ。夜に浮かぶ月明かりが神秘的でとても綺麗だ。エルはあくびをしながら俺たちに指示を飛ばす。



「ベットはエルが寝てくれ。俺たちが床で寝る」



流石にそこまでしてもらうのはダメな気がした。よくよく考えればエルはまだ俺やリアより年下だと思うのだ。本来は俺たちが引っ張ってあげなきゃいけないが、暗殺者の道では先輩だ。でも、それ以外で面倒を見るのは良いだろう。



「じゃぁ。三人で寝るわ。狭いとは思うけど、寝れなくはないわ。少し恥ずかしいけど...」



「私もエルに賛成します」



思ってもないことを聞き、それにリアも賛成してくるので俺は悩み抜いた結果、結論を出した。



「わかった。一緒に寝るか」



渋々ではあるが、それが一番正解だ。



「明日は時計塔が180度の時に学院で転入試験が行われるわ。だから、ちゃんと起きるのよ。もちろん私も起きて、あなた達を起こすから」



エルとリアがとても眠そうで、俺も眠くなってきたので、ベットで寝ることになった。ベットでは俺が真ん中で、右がリア、左がエルという形で俺に抱きついて寝ている。そうしないと、落ちそうになるのだからしょうがないか。ちなみに俺は仰向けで、寝れていない。小さいけれどちゃんと形がある胸を両サイドから当てられているのだ、寝れるはずもない。吐息も何故か色っぽく聞こえるし、着崩れした服から谷間が見えるしで、さっき俺が言った言葉を後悔していた。ただ悪くわないが。俺は2人を改めて見てみた。


リアは昨日まで俺と同じ奴隷だったんだよな。今日一日色々なことがたくさんあって、それに安らかに寝ているリアを見ていると本当にあったことなのかと考えてしまう。


エルは今日出会った、亜人ではない少女。俺たちに差別や侮蔑をしない信じられる人、だと思う。暗殺者のことや家まで入れてくれて、頼りになる。リアもエルと仲良くなってきているし、これからはこの三人で依頼を成功させよう。


明日はいよいよ暗殺者としての初めての依頼がある。そこで俺は王女を暗殺しなければならない。って、それよりもまずは学院に入れるかだよな...。



「今日は色々なことがあったな...。また明日頑張ば・・・ろ・・う・・・」



と、リアとエルのことを考えていたら睡魔にやられ気づいたら寝てしまっていた。



「ねぇー龍太郎。ねぇーってば!起きなさいよ!」



エルがビンタを軽く叩いていたのが、急に強くなり俺は飛び起きてしまった。



「今日は転入試験なの!もうすぐ180度になるので行くわよ!」



「もうこんな時間か。朝飯は食えないのか?」



「当たり前でしょ。こんな時間まで起きなかった龍太郎が悪いんだから!リアも必死に起こしていたわよ!」



「龍太郎起きなかったから朝食食べてしまいました」



残念そうにリアはそう答える。

昨日は疲れたし、起きなかったのもしょうがないのかもしれない。



「大丈夫だ。朝食なんていらない。よし、行くぞ!」



「朝食なんてって、私が作ったのだからねー!」



俺はベットから立ち上がり、手短に着替え、顔を洗い、そして、エル、リアと一緒に家を出た。



今日は転入試験当日で、約100人くらいの人たちが集まっていた。俺たちは朝エルに変身魔法をかけてもらったので亜人特有の耳と尻尾は見えなくなっている。

剣を振り続けている奴や魔法の練習をしている人など様々いる。すると、突然、黒スーツで傍目からは紳士と感じられる男が姿を現した。



「さて、お集まり頂いた皆様に最初に魔法が使えるか見させてもらいます。当然、魔法適性がないものは去ってもらいますので、ご理解ください。私はこの学院の理事長をしています。ディーザス・ダカールでございます。以後、お見知り置きを」



1人ずつ、魔法を披露していく、水魔法だったり火魔法だったりと、自由自在に魔法を操っている。そして、ついに俺の番がやってきた。



「次、見せてもらえるかな?」



「はい」



俺は指先を少し噛み、血を出す。右手をかざして、魔力を送る。緑色の魔力が注がれ、みるみるうちに傷が塞がっていく。



「これはこれは珍しい治癒魔法ですね。将来、治癒術師として活躍が期待できますね」



満面の笑みを浮かべ俺を見つめてくる。気味が悪い。



「では次、お願い出来るかな?」



「わかりました」



リアは右手に魔力を集中させ、強化魔法を木に打ち込み見事に打ち壊したのだ。



「なるほど。センスは良いですね。これからその才能を開花させてくださると有り難いです」



「次はー」



言葉を遮られ、魔法の風圧が理事長の前髪を靡かせる。



「そうですか、見事な魔法ですね。合格です」



この魔法の威力、圧倒感、威圧感が押し寄せる。この魔法で不合格なら、誰もこの学院には転入出来ないほどには凄かった。見るや否や理事長は即答し、魔法を認めざるを得なかった。


そして、全員の魔法適性試験は終わった。

他の人はそんなにダムダメだったのか、俺たちともう1人だけが見事に学院への転入が許されたのだ。それに異議を唱える者がいた。



「おい!ふざけるんじゃねーぞ!何故俺たちが転入出来ないで、そいつらが出来るんだよ!それにお前、最初の試験とか言ってたじゃねーか!だから、温存して最終試験で実力を出すつもりだったのに」



剣を理事長に向けて言い放つ。



「私は間違ったことは言ってません。最初とは言いましたが、最後とも言ってないです。それを変な解釈をしたのはあなたではないのでしょうか?」



最初なんて言われたらその後も試験があると思うのは誰もが思うことだ。だけど、最後とも言ってないのだから筋は通っているし、正論だ。



「そんな、そんなことってありなのかよ...」



地面に手をつけ、落胆し、悔しくて涙を見せていた。



「俺は入学試験が落ちて、この転入試験にかけてきたんだ!入れないならいっそのことー」



この男が最後まで言うことなく、首筋に血が弾け飛ぶ。



「な、なんで...」



誰が切ったのかわからないくらいに早かった。右手の爪で首筋を切った理事長は笑顔を浮かべいこう言った。



「あなたは私に刃を向けた。それに私にお前などと無礼が過ぎるのではないですか?これは正当防衛です。あなたが死ぬのは当然なことなのです」



笑顔を崩さないまま理事長は周りの人たちにも呼びかける。これは正当防衛だと。それに皆はすぐにうなずく。理事長のスピードを真正面から見た人たちは恐怖でそうするしかないのだ。



「くそが...」



そして、数秒もしないうちに男は倒れた。



落ち込む人たちを見送りながら、一つ聞いてみることにした。



「俺たちと他の人たちの差はなんだったのか?」



俺たちも本気でやったかと言えば、やっていないと思う。



「そうですね。それは魔法も十分だったのですが、一番心を射止めたのは君たちのその目が綺麗でしたから」



俺たちの目は綺麗なんかではない。むしろ漆黒の闇のような目をしているに違いない。でも、そんな目を綺麗というこいつは。



「さて、転入おめでとうございます。これからはヴァナンガルド魔法高等学院の一員として、よろしくお願いします」



という訳であっさりとこの学院に入学出来たのであった。この学院は本当に大丈夫なのか心配になる。すぐに人を殺す理事長がいる。だいぶ注意しながら暗殺するしかないな。



ちなみにエルはというと木の影から柵を隔て望遠鏡で観察していた。



「なかなか龍太郎もリアも順調ね」



微笑を浮かべ喜ぶ。だか、



「な、なんであの方がここへ...」



エルは全く予想外のことに驚きを隠せずに手を震わせている。



「【漆黒の暗殺者】シクシーオン様が...」



双眼鏡が手から転げ落ち、エルはその後、呆然と立ち尽くすことしかできなかった。



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※お読みいただきありがとうございます!これから学院編です。良ければ感想を書いてくださると嬉しいです!

これからもよろしくお願いします。

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