魔王を探して
「ねえ、魔王について何か知らない?」
私は何度目かわからない質問をした。
「なんだい嬢ちゃん、ここはあんたみたいな娘が来るところじゃねぇぞ」
私は今酒場にいる。目の前にはがたいのいいおじさんが二人、昼から酒を飲んでいた。
「私はクレア。魔王を探しているの、何か知らない?」
「何でまた魔王なんか。敵かなんかかい?」
「で、知らない?」
「知らないな、それより嬢ちゃん、俺らと楽しまないかい?」
おじさんの一人が腕を伸ばしてきたがそれを躱して酒場を後にする。
「ここもダメか」
魔王の噂の1つや2つぐらいすぐに見つかると思ったんだけど。ここに来るまでいくつか村や小さな町を回ったけど有力な情報は1つもなかった。
「あれからもう7年か」
魔王ダレンとの出会いからすでに7年が経っていた。ダレンが去ってから私は魔法の勉強をした。あの魔獣の件で私が魔法を使えることは分かった。でもどうやって使ったのかは分からなかった。村の魔法が使えるおばさんのところで修行して、いつの間にかおばさんを超えていた。そして数か月前に村を出た。
「やっぱり大きな町に行かないとダメかなー」
もしかしたら大きな町に行けば何かわかるかもしれない。早速私は大きな町に向かって出発した。
「えーと、えーっと」
村から持ってきた地図を見ているが今何処に居るのか分からなくなった。この地図が大分古いのか、書かれていない道がたくさんある。どこかで道を間違えたと思うんだけど、どこで間違えたのかが分からない。
「迷った」
どどど、どうしましょう。夜は危ないっていうから野宿はしたくないし。
迷っていても仕方がないので先に進むことにした。道があるんだから何かしら人のいるところに繋がっているはず。
結局夜になりました。
私は魔法で火を起こし、魔法で壁を張って休む。壁を張らないと怖くて眠れない。
翌日、さらに先に進むが村らしきものは見えてこない。それどころか森の中に繋がっていた。
「この森、通るの?」
森は凶暴な動物や魔獣がいる可能性がある。彼がそこにいる可能性があるなら行くしかないが、そうでないなら出来るだけ避けたかった。
「どうしよう」
悩んでいると何かが走ってくる音が聞こえる。後ろを見ると馬の群れがこちらに向かって走ってきている。
「んん?」
近づくとその上に人が乗っているのが分かった。馬1匹に1人。全員鎧を着ている。
「騎兵団?なんで?」
騎兵団はどんどん近づいて来る。そして、先頭が私の目の前で止まった。
「君、こんなところで何をしているんだい」
若い男性の声だった。男性が兜を脱ぐと整った顔が現れた。金髪に切れ長の目をした美青年だ。
まあ、ダレンほどじゃないけど。
青年は馬の上から私を見下ろす。
「えっと、道に迷ってしまいまして」
私は正直に言った。嘘ついても意味ないしね。
「そうか、ちなみにどこから来たんだい」
私が村の名前を言うと青年は驚いた顔をした。
「そんな遠くから、何処へ行くの?」
「場所は特には、とりあえず大きな町に行きたいのですが」
「目的地無し?もしかして旅人かい?」
「まあ、そんなところです」
騎兵団に対して魔王を探してますとはさすがに言えないよね。
「ところで騎兵団の方がなぜこのようなところに?」
「なんだ知らないのか。この森に最近魔獣が出たという話があるんだ。それの調査と、いたら討伐かな」
「魔獣が」
入らなくてよかった。そう思ったがダレンのある言葉が頭をよぎった。
『俺がいるところは魔力が濃くなる。そうすると魔獣が発生するんだ』
魔獣が現れたのなら魔王がいるかもしれない。ただ、魔獣が現れる条件は別に魔王だけじゃないから確定は出来ないけど。でも確かめる価値はある。
「君が入る前について良か」
「あの!」
私は青年の言葉を遮って叫んだ。
「私もいっしょに行っていいですか?」
その言葉に青年はもちろん、周りの人たちもざわめきだした。
「何を言っているんだ。魔獣がいるかもしれない場所に君みたいな女の子を連れていけるわけないだろ」
魔獣がいるかもしれないから行くんです。
「大丈夫です。私、これでも魔法が使えるんで」
「まあ、1人で旅をしているくらいだからそうなんだろうけど」
「お願いします」
私の必死なお願いに青年も困ったような顔をした。そして他の騎兵団の人と話を始めた。
「分かった。同行を許可しよう」
「ありがとうございます!」
「ただし、俺たちから決して離れないこと、いいね」
「分かりました」
私は騎兵団と一緒に森の中に入った。
会話多いですね。行ばっかりすごい使っている気がします。