梨と檸檬と木苺と雨
主人公は「梨雨」です。
意味が分からなくていいです。
文法はわざとおかしくしました。
ここから何か感じ取って頂けると嬉しいです。
よくある恋愛映画やドラマのような、ときめく恋をしたいと思う女子は多い。梨雨もそうだった。
梨雨にも想う人はいた。決して遠い存在でもなかった。
梨雨は告白だとかアプローチなんていう物は出来なかった。自分の想いが燃え尽きることが恐かったのだ。
ただ、そばにいれるだけいい。離れていても同じ世界にいると思えるだけで梨雨は十分だった。けれど、その度にもうこれ以上彼に近づけない、もうこれ以上彼に触れられないと思うと梨雨は締め付けられた。
彼は檸檬だった。
梨雨のこころという布を黄色く染める、檸檬だった。そして梨雨の布はもう真黄色だった。
梨雨にとって、彼は"はつこい"だった。
恋は木苺だ、梨雨は思った。
時には甘く染め、時には甘酸っぱく布を染める。その甘酸っぱさを梨雨は初めて知った。
はつこいは辛いものだった。今まで恋を知らなかった梨雨には想う人がいるのにこれ以上近づけない気持ち、それでぎゅっと締め付けられることはとても新鮮なものだった。
いつしか梨雨は、彼への思いは「憧れ」であって「恋」ではないと自分に言い聞かせるようになった。けれど、梨雨の布はそう言い聞かせる度に黄色く染められ、強く締め付けられた。
梨雨は辛かった。彼への思いは「憧れ」ではなく「恋」なのだと気付いてはいるのにそれを認めるのが辛かった。
梨雨は飛行機になった
飛行直前、梨雨は泣いた。静かに泣いた。誰にも聞かれないように。今後、誰にも泣かされないように。
梨雨は飛んだ。高く飛んだ。梨雨はもう少しの辛抱だと言い聞かせた
梨雨は飛び切った。
梨雨は解放された。
苺畑に取り残されていた自分とは違う、新しい世界に飛んだ。
そして梨雨は静かに燃え尽きた