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嘆きの魔女は愛する男に銃口を向ける  作者: 皇海宮乃
第十章 ルイーゼが銃口を向けたのは
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10-1

 夏季休暇、ルイーゼはメルセデスと共にイリーネの別荘に招かれた。正しくは、王家の別荘に招かれたユリアーナのたっての頼みで、同じ避暑地にあるイリーネの父親所有の別荘に、メルセデス、マルガ、エラと共にルイーゼも招かれた、というのが正しい。


 ちなみに、王家の別荘には、『招待客』としてではなく、王太子の護衛としてゲルトが来る事も決まっていた。


 メルセデスは、一応の保護者である父とその家族が国外逃亡をはかって、もっか行方不明中という事もあり、ルイーゼと共に寮に残るつもりでいたのだが、ぜひ来て欲しいというユリアーナの説得で同行を決めた。


 イリーネとしては、入学を前に王太子の弟、マクシミリアンと縁を結べるのではれば願ったりという事で、メルセデス達の同行を許した。


 マルガは、家に戻って、新婚の姉や、婚約者のいる妹と顔を併せる気まずさから同行を志願し、エラは、皆が行くなら、という事で同行に納得した。滞在費がイリーネもちであるという事も大いに影響はしていそうだったけれども。


 アルベルトは、今は監獄に入っている。正確には、監獄内にある研究室に入っている。

 国外逃亡を図ったとは言え、アルベルトによって計画が発覚した事を恨んだハーゲンが、アルベルトに対して刺客を送ってくる事を怖れての配慮だった。


 リベレシュタット国内には、性格や思想傾向に難はあるが、高い能力をもつ囚人を収容した監獄が存在する。殺すのは簡単だが、どうぜならその能力を活かすべきだという考えのもと作られており、高い塀に囲まれ、看守がいる以外はいたって過ごしやすい流刑地で、居心地のよさゆえに脱獄するものが居ないという、少し変わった場所だった。


 ルイーゼは、面会に行くつもりだと言い、アルベルトへの思いは変わっていない様子を見せた。


「……もう、ね、生きているうちに、もう一度思いを告げられれば、それでいいと思っているのよ」


 そう言って、ルイーゼは笑う。


 メルセデスに、他の男ではダメなのか、と、尋ねる事はできなかった。


 ルイーゼは、自分の気持ちがすむまで、アルベルトを思い続けるのだという。


 そして、アルベルトもまた、ルイーゼを思い続けるのだろう。


 結ばれていいはずの二人が、結ばれない事に対して、メルセデスは歯がゆさも感じていた。


「あの時、私、アルベルトを殺して、自分も死のうって思ってたの」


 ルイーゼは、その時の自分の思いを反芻するように言った。


 マルガが声をあげたあの一瞬、ルイーゼが狙ったのは、王太子でもユリアーナでもなく、アルベルトだったのだ。


 協力を求められ、ユリアーナを拘束した。


 ユリアーナは、事情を話したルイーゼに協力をしてくれた。


 相手に思いを伝える事、ユリアーナ自身も思うところが会ったに違いない、と、メルセデスは思った。


 ルイーゼにしろ、ユリアーナにしても、思う相手に対して、なにゆえここまで情熱的になれるのか、メルセデスにはわからなかった。


 自分の内に、そのような気持ちはあるのか、これから、そんな風に誰かを思う事があるのだろうか、とも。

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