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オーガさんと街遊び。




大通りでは、すでに活気が溢れて街の人々が賑わいを見せていた。

隣ではカオウさんがそわそわしている。


「わぁー、やっぱりさっきまでとは全然違うわねっ!!」

「みんな起きて店も開きだしていますからね」

「まずはどこに行く?」

「そうですね……」


──ぎゅるるる~~~


どこから回ろうか考えていると、近くから腹の鳴る音が聞こえた。


「…………」

「わ、私じゃないわよ!! べ、別にお腹もへってないしっ!!」

「……何も言ってないですけど」

「うっ………」


そこまで狼狽されると、音の正体が嫌でも分かってしまう。

まぁ、つい確認するかのように彼女を見てしまったのは確かなんだけど。


「とりあえず、どこかでご飯でも食べましょうか」

「……うん」

「何か食べたいものあります?」

「えーと、……あそこにしましょ!!」


彼女が指差した方向を見ると、以前あずさちゃんと来て勇者さん達と相席したスイーツ店『ラブパフェ』があった。

……あの店かー。


「あそこは……」

「なに、ダメなの……?」

「…………行きましょうか」


ローブから覗く口元を拗ねたように細めて不機嫌そうな雰囲気を漂わしたので、彼女のご希望通りにあの店で少し早い昼食を食べることにした。


あそこの店員さん、何か苦手なんだよなぁ。



「いらっしゃいませー! 二名様ですか? お好きな席へどうぞー」


テラスには出ずに、店内の窓寄りのテーブル席に向かい合って座る。

前回はメニューをゆっくり眺める余裕もなかったから、何にしようか迷うな。


「私は、このパンの上にクリームがいっぱい乗ってるやつねっ!!」

「もう決めたんですか?」

「これが一番おいしそうだもん!!」


街での初めての食事が楽しみでしょうがないようだ。

俺も同じやつでいいか。メニューでも一番最初に載ってるし、この店のおすすめのようだ。


「ご注文はお決まりですかー?」

「私はこれね!!」

「あっ、俺も同じやつで」

「……あらあらー、かしこりましたー。フェニートーストお二つですねー」

「ん?……げっ、あなたは……」


店員さんを見上げると、この前テラスでパフェを食べているときに俺達を店内からニマニマと愉しんで見ていた店員だった。そして、今もとても愉しそうな顔をしている。


「お兄さんも中々のスケコマシですね~。よっ、プレイボーイっ!」

「……仕事してください」

「俺を見習ってお前も仕事に集中しろ、ということですねー」

「俺の仕事は女性をひっかけることじゃないですよ?」

「はいはーい、すぐにお持ちしますねー。乳繰り合ってお待ちくださーい」

「セクハラですか?」

「いやですねー、私の名前はクトゥリですよ」

「名前を聞いたわけじゃないです」


カオウさんの顔はローブで見えないはずだが、声から女性とバレたんだろう。厄介な人だ。

とりあえず裏に引っ込んでくれたので、カオウさんに聞きたかったことを聞くことにしよう。


「カオウさん、お金は持ってるんですか?」

「お金? 持ってないわよ」

「……ですよね。でも、街で買い物しようと思ったらお金は必ず必要ですよ。今日のところは俺が払っておきますけど」

「うっ、な、何とかするわよ……」


へいへいへい、やっぱり甘いものは最高じゃない!!

おうおうおう、依頼で稼いだ金で食うスイーツは格別だぞ!!

けっけっけっ、これだから冒険者はやめられないぜ!!


カオウさんの苦し紛れの言い逃れを聞いていると、どこからか聞き覚えのある兄弟の声が聞こえた。

甘いものが好きだったのか、あの人達。見た目からは想像できなかったな、失礼な話だけど。


「依頼、冒険者…………。私も冒険者になれば……」

「いや、さすがに難しいんじゃないですか?」

「はぁー、そうよね……。あそこにはお金なんて無かったから」

「あそこ? そういえば、カオウさんはどこからこの街まで来たんですか?」

「えっ……。あ、あはは、ど、どこだったかなー」


……下手なとぼけ方だ。あまり言いたくないみたいだな。

街の近くにオーガがいるなんて聞いたこともないし、どこか遠くの地からやってきたのかな。


「そ、それよりこの後どこに行くの? おすすめの場所とかないの?」

「うーん、実は俺も普段こっちの方まで来ないんで、適当に見て回ろうかと思っていました」

「そう、……楽しみね!!」


普段大通りまで来るときは、勇者さんに付き合ってブラブラと店を冷やかしに回るぐらいだ。案内するとは言ったものの、案内できるほど熟知しているわけではないんだよな。

でも、オウカさんはとにかく街を見れればそれでいいみたいだし、案内する側としても楽でよかった。


「お待たせしましたー。フェニートースト二つでーす。上のクリームをハート型にしてみましたー」

「……悪意しかないな」

「いいですねー、私が持ってきたことでアクイがアイになると! さすが、スケコマシさんですねー!!」

「…………」


この店員さんになにかしたか、俺。

ヘタに喋ると、どんどんドツボに嵌っていく。


「きゃー、可愛いじゃない!! それに美味しそう!!」

「はいー、愛でお腹いっぱいにしてくださいねー。料理は愛で作るもの、食べるものですからー。でわでわー」

「いただきまーす!!」


……好き放題喋って裏に戻っていったな。本当にあれが店員でいいのか、この店は。

まぁ、カオウさんが嬉しそうだから、もうあの人のことは忘れよう。


「んー、美味しいーーーっ!!」

「……よかったです」


俺もさっさと食べよう。




「……うふふー、いいですよいいですよー」

「クトゥリ、何してんだ」

「あちらのお兄さん達の観察を……ァイタッ!!」

「仕事しろ」


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