表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/45

オーガさん、ご来店。




朝、店を開店する前の準備をしていると店の扉が乱暴に開かれた。

ローブを着た人物が入ってきたので、ヴァンさんかと思ったが明らかに背丈が違う。

ダッカさんよりも更に身長が高そうだ。


「すいません、まだ開店前で……」

「はぁ……はぁ……、冒険者達に追われてるの! 私を匿って!!」


ローブを深めに被って分からなかったが、声からして女性のようだ。その体躯から勝手に男だと思っていた。

鬼気迫った様子でこちらに近づき、会計台に身を隠すようにして蹲った。そして、彼女が隠れると同時に再び店の扉が開かれた。


「邪魔すんぜ、旦那!! こっちにローブを着た大柄なやつが来なかったか!?」

「はぁ、あの人はどこに行ったんでしょう。早く見つけないと……」


二人組みの冒険者に切羽詰った表情で彼女について聞かれた。街の大掃除をしたときに同じ南区の担当だった人達だ。

匿ってとは言われたけど、彼女は何で彼らから隠れているんだ?


……まさか街中で誰かを襲いでもしたのか?


「その人物が何かしたんですか?」


「いえ、僕達がギルドに向かっていたときだったんですが、大通りを横切ろうとしていたお子さんが、走っていた馬車に気付かず轢かれそうになっていたんです」

「でも、俺達が探しているやつがそのガキを助けたんだよ。だが、代わりにそいつが轢かれちまってな」

「怪我は大丈夫かと思い声を掛けたんですが、何故か逃げられてしまって」

「必死に追いかけていたんだが、見失っちまったんだよ」


「そうだったんですか」


犯罪者か何かだと思ってしまったけど、善良な一般市民だったのか。でも、馬車に轢かれたにしては平気そうにしていたな。

彼らにも見覚えがないとすると、少なくともこの街の冒険者ではないんだろう。

別に引き渡してもいい気がするけど、匿ってと言われたからなぁ。


「それじゃ俺達は引き続き探すから、もし旦那も見かけたら教えてくれ!」

「あっ、ちょっと…………」


行ってしまった。

彼らが去ったのを確認すると、彼女が影からゆっくり出てきた。


「……ふぅ、助かった。礼を言うわ、ありがとう」

「それはいいんですけど、貴方はいったい……」


馬車に轢かれたようだけど大丈夫なのか、何で彼らから逃げていたのか。

色々と聞きたいことがある。


「……私のことは詮索しないで。助けてもらったのは感謝するけど、もう行くわ」

「でも、馬車に轢かれたって……。体は大丈夫ですか?」

「大丈夫よ、別に大したことは……くっ」


彼女は店から出て行こうとしたが、右足を押さえて屈みこんでしまった。

やっぱり怪我をしてるんじゃないか。


「足を怪我しているんですか? ちょっと見せてください。」

「……っ、いいわ!! 何とも無いから、気にしないで!!」

「え? っ、ぶがっ!?」


彼女に近づこうとして容態を見ようとしたが、それを嫌がるように振り回した彼女の手が俺の胸に当たり、店の壁まで体が吹き飛ばされた。一瞬、息が出来なくなった。

どんな力をしているんだ、彼女は。体がとても痛い……。


「……はっ! ご、ごめん、上手く力を制御できなくて!!」

「……だ、大丈夫です。それより足を怪我してるんですよね? 貴方の怪我が酷くなってしまったら、貴方が助けた子にも申し訳ないんで見せてもらえないですか?」

「でも、私は……」

「少しの応急処置ぐらいなら出来ますから、お願いします」


あまりにも怪我が酷そうであれば、シスターさんにも見てもらった方がいいかもしれない。

屋敷にいてくれたらいいんだけど……。


「…………あんたは大丈夫なの? 私が思いっきり突き飛ばしちゃって……」

「あー、ちょっと体が痛むくらいで何ともないんで、大丈夫ですよ」

「……あんたも怪我をしてないか、確認させてくれるならいいわ」

「……わかりました。なら休憩室に行きましょうか」



「それじゃあローブを脱いでもらえますか?」


彼女を休憩室に連れて行きイスに座らせてから、足の様子を見やすくするためにローブを脱いでもらうようにお願いする。


「……絶対びっくりしないでよ」

「はい?」


彼女は一言忠告してから羽織っていたローブを脱いだ。

そして、ようやく彼女の体と顔をしっかりと確認することができた。


「………………」


「何か言いなさいよ」


彼女の体は、服の上からでも分かるほど筋肉が隆々としていて、ある種美しさを感じる造形をしていた。あれだけ吹き飛ばされたのも納得だ。

……しかし、何よりも、額から生えている二本の角がチャーミングだった。


「貴方は……」


「カオウよ。……私は、オーガなの」




「おい、あんたちょっと待ってくれ! 速っ、追いつけねぇ!!」

「はぁはぁ……、ま、待ってください~~!!」


「くっ、捕まったらバレちゃうじゃない!! しつこいわねっ!!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ