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街の大掃除。。




南区担当の俺達は、大通り担当と路地担当の二組に分かれて掃除を進めていた。

俺とカカさんは大通り沿いに街門からゴミを拾っている。


「てん、そっちのゴミを取りこぼしているわ」

「あぁ、ありがとうございます。あっ、カカさん、そこの木のそばに割れたガラスあるんで気をつけてください。」

「あら、ありがとう。 ……ふぅ、結構ゴミが落ちているものね。いつも歩いているときにはなかなか気付かないものだけど」

「そうですね、こういう機会でもないと気にしませんからね」


特に気を使わずに歩いているようなところでも、よく見ればゴミが散らかっているもんだな。

今日は、店に帰ったらちゃんと隅々まできれいにしてあげよう。


「あらあら、ご苦労様です。がんばってくださいね~」

「おう、朝から頑張ってんな。 俺も時間まで少し手伝うぜ!」

「いつもより街がきれいに見えるよ。 朝からすっきりした気持ちになれ、えぅっ!!」

「それはあんたが朝帰りしたからでしょ!! どこに行っていたか吐いてもらいますからね!!」

「はっはっはっ、なかなかキレイになってきたじゃねぇか! この辺はもうゴミも落ちてねぇな!!」

「まだギルドマスターが落ちてますよ」

「…………さすがに酷くねぇか……」


通り過ぎる人達も労わりの言葉を掛けてくれたり、一緒にゴミを拾ってくれる人もいた。良いことをしていることもあって、とても気持ちの良い朝だ。

ギルドマスターも人が必要だろうということで、南区の手伝いに来てくれている。

受付嬢さんとじゃれあっているだけかもしれないけど。


「あと半分ほど、ですわね」

「街のみなさんも手伝ってくれたおかげで、早く終わりそうですね」

「ええ、いい街ですわ。こちらが早く終われば路地側の手伝いに行きましょう」

「はい、そうですね」


やはり、こうしているとバーサーク状態の時と同じ人とは思えないぐらいにまともな印象を受けるな。とても頼りになるお姉さんという感じだ。

……俺より年齢は上なのか?

女性に年齢を尋ねるのも失礼だしな。それでバーサーク状態になられても困る。


「しかし、風が強くてゴミが拾いづらいですわね」

「大通りだから余計に風に煽られてしまいますね、もう少し弱くなってくれたらいいんですけど……」

「そうですわね……っ、きゃっ!!」

「カカさ、っ…………!!」


屈みこんで下に落ちているゴミを拾っていた俺達に強風が吹きつけた。前で作業していたカカさんが悲鳴を上げたので、何があったのかと目を向けると見えてしまった。


赤い何かが見えてしまった。


普段は見えないようにスカートで隠されているであろうはずの箇所が、風に捲くられて露わに眼前に晒されていた。しかし、彼女は直ぐにスカートの裾を後ろ手で押さえ込んだ。


「あの、大丈夫、ですか……?」

「…………見ましたか?」


心配するように声をかけたが、カカさんはスカートの裾を押さえ込んだまま俺に確認するように聞いてきた。しかし、顔はこっちに向けずに、体がプルプルと震えている。

……見てしまった、というのは簡単だ。だが、こういう場合の答えとして合っているんだろうか。彼女を傷つけるだけではないのか。

分からない。何が間違いで何が正解なのか、俺には分からない……。


「……見たのですね?」

「……はい」


俺には誤魔化せなかった。

答えを聞くと、彼女はゆっくりこちらを振り返り若干涙目になっている目で、じっと俺の顔を見つめてきた。


「でも、あの、不可抗力で…………わざとでは……」

「……………………」

「す、すみませんでした」

「……今回だけですわよ」


言い訳をしようとしたら刀に手を置かれたので、俺には素直に謝るしかなかった。何とか許してはもらえたが、少し距離をとられて疑心に満ちた目を向けらている。

しばらくこんな目で見られることになるんだろうか……。結構きついんだけど。


「……はぁ、とりあえず引き続きゴミを拾いましょう。…………ですが、私の後ろには立たないようにお願いしますね……」

「……はい………なっ、………カカさん……っ!!」

「えっ、…………っ!!」


ゴミ拾いの続きをしようとしたとき、再び強風が吹き、カカさんの後ろから木片のようなものが彼女に向かって飛んできていた。

カカさんは俺の声に反応して後ろを振りかえってしまった。このままでは彼女の顔に当たってしまう。


……まずいっ!! 間に合えっ!!


「……きゃっっ!!」

「…………っ」


俺は彼女を押し倒して、地面に彼女を下にして身を伏せた。でも、一瞬間に合わなかったようで、俺の顔に木片が掠めていった。

血が出たかも。酷くないといいんだけど……。


「カカさん、大丈夫ですか?」

「……っ、てん、貴方……頬から血が……」


やっぱり、血が出る程度に切れてしまったみたいだ。まぁ、後で適当に洗っておけば大丈夫だろう。

それよりも、カカさんだな。結構な勢いで押し倒してしまった。頭とか打ってないといいんだけど。


「俺は大丈夫です。それよりもカカさんは大丈夫ですか? 余裕がなかったんで、どこか打ちつけていませんか?」

「えぇ、私は大丈夫ですが…………、それより動かないでください。血をふき取りますわ……」

「いや、そんなキレイなハンカチ使わなくてもいいですよ。後で適当に、痛っ……!」

「いいから動かないでください。別にハンカチなど洗えばいいだけですわ」


カカさんが高そうなハンカチを懐から取り出して、俺の頬にそっと滲ませるように当てて血をふき取ってくれる。そんなものを俺の血で汚してしまうと、申し訳なくなってしまう。

思ったよりジンジンする。深めに切ってしまったみたいだな。


「…………てん、ありがとう。冒険者の私が冒険者でない貴方に助けられるなんて、恥ずかしさと申し訳ない気持ちでいっぱいですわ……」

「……気にしなくていいと思いますよ。これでも勇者さんの役に立っていたりもするんで、一般人にしてはなかなかのもんだと自負してますよ?」

「……うふふ、何ですかそれは。はい、ある程度キレイにはなりましたが、しばらくそのハンカチで傷を押さえて……っ、紅刀?」


「…………カカさん?」


頬に当てたハンカチをそのまま俺の手に取らせたあと、俺が押し倒した格好のままだったので共に立ち上がろうとした。だが、突然彼女は刀に手を置き動きを止めてしまった。


「紅刀……? なぜ……、今、あなたが……」

「カカさん、どうしました?」

「………………」


どうにも、カカさんの様子がおかしい。そして、とても嫌な予感がする……。


さっきまでの彼女と何かが変わってしまったような雰囲気が漂っている。




「はっはっはっ、もうゴミ袋がいっぱいになっちまったな!!」

「まだギルドマスターが入っていませんが」

「…………」


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