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勇者さんダンジョンへ?




アパートを出てお店に行くと、勇者の鎧を着込んだ勇者さんとローブを身にまとったヴァンさんが既にお店の前で待っていた。


「すみません、お待たせしました」

「いや、僕達も今来たところだから大丈夫さ」

「ふぉふぉふぉ、今日はよろしく頼むぞ、店主殿」


二人と冒険に行くのは初めてだけど、いつもと同じ服装だから新鮮さも特に無いな。

俺も二人のことは言えないけど。


「店の中からポーションや他に必要なものを取ってくるので、ちょっと待っててもらえますか?」

「あぁ、分かったよ」


二人に言い置きして店の中に行き、ダンジョンの冒険に必要そうなものをかばんに入れていく。シスターさんがいないから、ポーションも念のために多く持っていった方がいいだろう。

ダンジョン内のモンスターだと、あとはこれと、これと……。うん、こんなもんか。

裏にしまいこんでいた剣も腰に佩いて、勇者さん達の下へ戻る。


「店主、準備できた?」

「はい、大丈夫です」

「よし、それじゃあ早速馬車乗り場に向かおう!!」


今日の勇者さんは気合が入っているな。シスターさんのためとあって、張り切っているらしい。

……本人は否定しそうだけど。


そこから俺達は馬車乗り場まで向かった。

ダンジョンまでは歩きで行くには遠く、ほとんどの冒険者は馬車を使っている。今日はこの街の比較的近くにある地下ダンジョンに行くことになっている。


「ヴァンさんもダンジョンに入ったこと無かったんですか?」

「うむ、ダンジョンなどに興味もなかったからのぉ。それに、儂が眠る前はこの付近にそれほど数も多くなかったはずじゃ」

「そういえば家に引きこもってた、と言ってましたね」

「部屋で書物を読んでいるほうが性に合っておったからのぉ。ダンジョンに潜っておる暇などあれば一冊でも多く本を読んでおったわ」


勉強熱心なヴァンパイアさんだ。

このヴァンパイアさん、自分がヴァンパイアであることは勇者さん達には黙っているらしい。何でも『あまり良い印象はもたれんじゃろ?』とのことだ。勇者さん達はそんなこと気にしないと思うけど、真剣な顔で内緒にしておくれと頼まれたしな。

……孫が可愛くて仕方ないんだろう。




~~~~~~~~~~~~~~~~




「へい、お客さん達ウチの馬車に乗っていかないかい。乗り心地は他の馬車なんかより、最高にいいぜっ!!」

「いやいや、俺の馬車に乗ってくれりゃ今だけお安くしとくよー!!」

「私のところの馬は元は荒くれ者だったんですが、何とか手懐けまして他の馬車より早く目的地に着けますよっ!!」

「こっちの馬車はお菓子も中に用意してあるので、快適な旅になることを保障しますよ!!」


馬車乗り場に着いた俺達は、地下ダンジョンに向かってくれる馬車を探している。

……というか御者の人達から、俺の馬車に乗ってくれと声を掛けられている。どの馬車も御客を探すのに必死になっていて怖いんだけど。


「……どうします、勇者さん」

「うっ、どうしようか……」

「ふむ、あの馬車などはどうじゃ?」


俺と勇者さんが御者さんの勢いに困り果てていると、ヴァンさんが一台の馬車を指差して俺達に聞いてきた。他の御者さんとは違って、あまり声かけを積極的に行っていなかった馬車だ。


「何であの馬車に?」

「騒がしくなかったからのぉ」

「……あの馬車に頼みましょうか」


早速決めた馬車に近づき、勇者さんが御者さんに声をかける。他の御者さんに比べてまだ若そうな青年だな。


「僕達、地下ダンジョンまで行きたいんだけど、乗せてもらえるだろうか?」

「……えっ、あ、僕ですか? だ、大丈夫ですよ!!」

「そうか、昼過ぎまでダンジョンに潜っていると思うから、よろしく頼むよ」

「は、はいっ!!」

「代金はこれくらいでいいだろうか?」

「だ、大丈夫ですっ!!それではどうぞお乗りください!!」


えらくオドオドしているように見えるんだけど大丈夫かな。


ダンジョンまでの道のりは、モンスターが出たり馬車が走りにくい道ではないからそんなに緊張することもないと思うんだけど。


「よし、店主、ヴァン爺行こう!! お宝を求めてっ!!」


勇者さんの掛け声で馬車が発進する。しばらく動き出して少しずつ速度が上がっていく。

いいもんだな、馬車から見る景色も。

大地と空が後ろに流れていき、また次の景色が現れて視界を楽しませてくれる。


「いい景色じゃ。今度はシスにも見せてあげたいものじゃな」

「そうだな、今度シスターともダンジョンに行くときは、また馬車に乗ろう」


あざさちゃんにも見せてあげたら喜ぶかな。

勇者さんもヴァンさんも窓を覗いて、はしゃいでいるみたいだ。

そのまま、さらに馬車は速度を上げていく。

……でも、少し早過ぎないか? ガタガタ揺れまくりなんだけど。これ、大丈夫か。馬車が壊れるんじゃないか心配になるぐらいだ。


「あの、御者さん? そこまで急いでいるわけじゃないんで、もう少しゆっくりでもいいですよ?」

「は、はいっ、大丈夫です!! ま、任せてくださいっ!!」

「いえ、だからもう少し速度をゆるめても……」

「ご、ご安心くださいっ!! 目的地までは必ずたどり着きますのでっ!!」

「そ、それはもちろんなんですけど、馬車が揺れすぎて……」

「た、たとえ馬車がどうなっても、お客さん達は私がダンジョンまでお運びして見せますのでっ!!」


…………ダメだ、全く聞き入れてもらえない。

さっきまで馬車からの景色を楽しんでいた俺達だけど、今は必死になって座席や窓枠に掴まって景色を楽しんでいる余裕がない。


「御者っ!! お、落ち着いてくれっ!! このままでは僕の胃の中が、う、うぉおえええー………」

「ふ、ふむ、御者殿よ。い、一度止まった方がいいのではないか。 儂の老いぼれた体にはなかなかの、ぐっ、衝撃が、っあぁ、響くんじゃが……っ」

「ご、ご心配なさらずっ!! この命に代えましても、皆様は私が最後までお運びしますっ!!」


「「「………………うぇ……」」」




(初めてのお客さんだー! がんばるぞー!!)

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