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店主、ギルドに来店。




「ありがとうございましたー! …………しまったな……」


店に置いてあったポーションがなくなってしまった。材料も今は切らしてしまっている。自分で調合していたんだけど、人がなかなか来ないこともあって油断していた。

仕方ないな、今日は店を閉めてギルドに材料採取の依頼をしてこよう。




~~~~~~~~~~~~




ギルドは街の中心地にあって、いつも依頼人や冒険者が集まっている。以前あずさちゃんと来たスイーツ店もこの辺りだ。

ギルドは大きな旗が屋根の上に立っているからわかりやすい。街の外からでも見えるくらいに高い場所に張ってある。


「自己主張激しすぎるだろう。……ウチにも目立つの立てようかな」


その周辺も商店や屋台が出ていて、老若男女が賑わいを見せている。今も目の前の屋台で串焼きを買った男の子がお母さんのもとまで走っていった。


「……俺も帰りに買って帰ろ」



両開きの扉を開けてギルドに入ると、受付には数人の依頼人と思える人達と冒険者が並んでいる。依頼掲示板の前には冒険者達が集まっていて、依頼を貼ろうとしている受付嬢が追っ払っている。


「結構受付に並んでいるなぁ」


そうして、受付の前に並んでいると、後ろから誰かに肩を叩かれた。


「……おひさ」

「あぁ、ダッカさんお久しぶりです」

「……ん」


後ろに振り返ると、長身の海人族の女性がいた。海人族の耳は魚のひれのようになっている。

彼女には以前から依頼を何度か受けてもらっている。何故か彼女はあまり護衛や討伐系の依頼はせず、採取系の依頼ばかりしているみたいだ。背中に重厚な大剣を背負ってることもあって、すごい強そうにみえるんだけどなあ。


大型のモンスターも一刀両断できそうだ。


「今回も俺の依頼受けてくれるんですか?」

「……おけ」

「今から手続きするんで、掲示板に貼られたらまた受けてもらえますか」

「……りょ」


おとなしく待合場所まで行き、ソファに座って目を瞑ってしまった。

ダッカさんはやたらと言葉を略しがちだ。それでも、ニュアンスで何となく分かるからいいんだけど。

しばらく受付で列が進むのを待って、やっと俺の番が来た。


「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件ですか?」

「また、材料採取の依頼をお願いします」

「かしこまりました、それではこちらの依頼書に採取依頼物と期限と報酬を書いてもらえますか」

「はい」


当分のストックのために、多めにポション草が欲しいな。五十茎ぐらい取ってきてもらって、報酬は三万ゴールドぐらいかな。

必要事項を依頼書に書き、受付嬢さんに渡し確認してもらう。


「はい、確かに確認いたしました。期限外になっても、引き受けられる方がいなければ、ギルド側が掲示板から剥がさせていただきますので後了承ください」

「はい、わかっています。ただ、もう引き受けてくれる方が見つかっているんで……」

「あぁ、後ろの冒険者さんですか?」

「へっ?」


後ろを振り返ると、いつの間にかダッカさんがそこに立っていた。

全然気づかなかった、黙って後ろに立つのはやめてほしいな。心臓に悪いぞ。実は暗殺者だったりするのか?……ありえそうで怖い。

寡黙な大剣使いの暗殺者か。暗殺対象にはなりたくないな。


「……おけ?」

「はい、今手続き終わったんで大丈夫ですよ。受付嬢さんお願いします」

「こちらが、依頼書になります」


受付嬢さんから依頼書をダッカさんが受け取り、ダッカさんがギルド証を受付嬢さんに渡す。


「……はい、ギルド証確認できました。お返ししますね」

「……ん」


よし、これであとは彼女が依頼を達成してくれるまで待つだけだな。しばらくは店にポーション並べられないな。他の店から仕入れるのもなぁ。

とりあえず、今日は串焼きを買って帰ろう。


「へいへいへい、お姉さん!俺らとお茶でもどうだい?」

「おうおうおう、そっちの兄さんも一緒でいいぞ?」

「けっけっけっ、俺達と楽しい時間をすごそうぜ?」


ギルドから出ようとしたら変なのに絡まれてしまった。というか、このギルドでは上位ランク三兄弟のヘイさん、オウさん、ケツさんだ。

一応以前から知り合いだし、一度だけ依頼を受けてもらったこともある。彼らはダッカさんと同じぐらい良質な材料を取ってきてくれたのを覚えている。その言動からは想像も出来ないんだけどね。

そして、ダッカさんは相手をしたくないのか俺の後ろに隠れている。


「……何してるんですか、お三方とも」

「久々に会ったから、お茶のお誘いをしてるんだぜ?」

「……申し訳ないんですけど、俺も彼女もこれから帰るところなのですみません、また今度ということで」

「せっかくの機会だから俺達におごらせてくれてもいいんだぞ?」

「お気持ちは嬉しいんですけど、彼女はこれから依頼ですし、俺も………用事があるんで」

「ちょっとちょっとつれないじゃない?」

「いや、あの……」

「……む」


まずい、面倒くさくなったのかダッカさんが大剣に手をかけている。このままではギルド内がえらいことになりそうだ。さすがにあの大剣を受けたらこの三兄弟でもえらいことになるだろう。


「おい、お前らギルド条令三項、『嫌がる相手に無理強いしない』だ、バカ共」


「「「けへぉっ!!」」」


「ふん。おい、こいつら裏に回収しといてくれ」

「はい!」


彼らの後ろに頭三つ分ほど大きい人物が突然現れ、彼らの頭に拳骨を落とし沈めていった。

そして、倒れた彼らをギルド職員達が受け付け裏まで運んでいった。


「わりぃな、迷惑をかけちまって」

「いえ、それは大丈夫なんですが。ギルド条例にそんな項目ありました?」

「はっはっはっ、今俺が作ったっ!ギルドマスターは俺だからな!!」

「………助けてもらってありがとうございました」

「俺がどうにしなくてもダッカがどうにかしちまいそうだったがな。それにあいつらも悪気があったわけじゃないからな、許してやってくれ」

「はい、それも分かってるんで」


相変わらず後ろにはダッカさんが隠れている。でも、俺より身長高いから隠れきれてないけどな。

ダッカさんより更に大きく、三兄妹に拳を落とした人物は土人族のギルドマスターのギルさんだ。土人族は基本的に皆、体が大きいがギルドマスターはその中でも特にでかい。

俺もこれくらい身長が高ければな。二人に挟まれていると自分が小さくなったみたいだ。くそぅ、早く帰ってしまおう。


「それじゃあ、俺達帰るんでこれで失礼します」

「あれだったら迷惑料として、飯ぐらいおごるがどうだ?」


ギルドマスターがニヤニヤしながらからかってくる。腹立つくらいにニヒルな笑みが似合うなこの人。

ギルド条令三項はどうしたんだ。


「……さっさとギルド長室に帰る」

「はいはい、分かったからその剣をこっちに向けないでくれ」


後ろから服を引っ張られ下げられると、ダッカさんが剣をギルドマスターに向ける。

モンスター討伐としてはあまり使わないみたいだけど、冗談で人に向けるのはいいんだな。

……冗談だよな?


「んじゃま、また来てくれや。何人も来るもの拒まずってやつだ。はっはっはっ!!」


ギルドマスターが奥に引っ込んでいった。

あの三兄弟はこれからしぼられるんだろうな。悪い人達じゃないんだけど。

まぁ、これでやっと帰れる。やけに疲れたな。


「……ハラペコ」

「串焼きでも買って一緒に食べます?」

「……おけ」


ギルドから出て屋台の串焼きを一緒に食べて帰った。彼女の食べる量がとてつもなかった。

屋台の串焼きほとんど食べちゃったんじゃないか?

もちろんお金は俺持ちだ。異性に払わせられないでしょ……。


「……美味」


……その笑顔が俺にとってはプライスレスさ。





「ギルド条令五項『人様に迷惑かけない』だ。バカ共。」


「「「へけぉっ!!」」」


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