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 ネーレーの首都国際空港からタクシーで少し進んだところに、目的地はあった。警察署通りと呼ばれるところにある寂れたガソリンスタンドだ。その二、三件手前にある郵便局で待て、という指示に従ってリョウたちはタクシーを降りる。現在時間は深夜十二時手前、こんな田舎でまだ外を歩いている人間がいるほうが不思議な時間帯だ。

「まったく、ひどいところね!ネーレーって」

 リンコがさっそく機嫌を損ねて、周囲にガンを飛ばしている。タクシーの料金を支払う際に、ぼったくられそうになったのだ。お互い散々に罵りあった挙句、放り出されるようにタクシーを降ろされた。結果として、料金は払っていない。

「だからあたし、パスカードが使えない国に来るのは嫌なのよ。人対人の金勘定なんて信用出来たもんじゃないんだから。それに空港でネーレードルに両替する時も面倒だったわ」

「まあ、おかげでタダだったわけだし、もう気にするなよ」

 リョウが呆れ顔で言う。二人とも、訓練で海外へ来る場合は基本的に発展途上国だから、慣れっこだと過信していた。ところがよくよく考えてみれば、自分たちだけで渡航するのは今回が初めてだった。結果として普段とはまるで勝手が違ったために、予想到着時間を大幅に遅れてしまった。タクシーをつかまえられたことがむしろ奇跡的なほどだ。

 それにしても、とリョウは辺りを見回す。警察署前であるにも関わらず、歩いている人間はどこかガラが悪い。よくよく覗いてみれば、物影に隠れて何かを売り買いしている様子さえ見受けられる。そのうちの一人と目が合い、リョウは凶悪な人相でにらまれた。売買していたのが何だったのかは、知りたくもない。

「あのう、スイマセン」

 リョウたちの前に、郵便配達員らしい男が現れた。帽子を目深にかぶり、カバンからは大量の手紙を覗かせている。

「今日はもう営業していないんでさあ。それで、大変申し訳ないんですけど、この辺りはなにぶん物騒でね。うろうろされると、ほら、何されるかわかったもんじゃあない」

「ちょっとどういうこと」むっとした様子でリンコが言う。「あたしたちが何か悪さでもするんじゃないかって言ってるわけ?通りすがりの人間相手にずいぶん失礼な口を聞くじゃない。もう郵便使ってあげないわよ。今の時代、メールで十分なんだから」

 この国の人間でもないくせに適当なことを言うな、とリョウはまた呆れ顔になる。そしてこれほどまでにリンコのフラストレーションを高めたネーレーという国と目の前の配達員に、拍手を送りたい気持ちにさえなった。リンコは普段から怒りっぽいほうではあるものの、物分りはいい人間だからだ。

 すると男は何故かいらついた顔をして、舌打ちとともにその場から去ってしまった。もちろん、リンコの態度が気に入らなかったためとも考えられるが、郵便局の人間であれば建物の中に入るのではないか。逆に帰りがけであったなら、配達員の帽子もコートもカバンも手紙も全部局内に置いてくるはずだ。「変だね」と二人が話していると、唐突に背後から声がかかった。

「気にしないほうがいい。あいつはこの辺りじゃあ有名な売人だ。普段はこの時間、この郵便局前が待ち合わせ場所になってる。もっとも、今日はこの騒ぎだ。誰も悪さをしようなんて気にはなりやしないのさ」

 振り返って男を見た二人は仰天して声を上げた。男は大柄で黒い目出し帽をかぶり、迷彩柄の上下を着込んでいる。つまるところ暴漢の風体であり、真夜中にこんな男と出くわしては、さすがのリョウたちも恐怖せざるを得ない。

「あ、あんた、誰だ?」

「おお、おれか」男が微笑む様子が、目出し帽越しにでもわかる。「おれはお前たちを案内しに来た、テロリストグループ〝復権の翼〟のもんだ。ようこそ、ネーレーへ。ボスの娘を助けてくれたらしいな、ありがとうよ。歓迎したいところだが今はそんなことをしてる暇はない。とっととアジトまで行って作戦会議だ」

 男はそう言うと二人を連れて例のガソリンスタンドへ向かう。テロリストという単語を聞いてリョウたちもようやく相手の素性を理解し、男の後に続いた。正直に言えば見知らぬ土地での行動にリョウは若干の不安があったが、男たちの感謝と歓迎の言葉に心強さを覚えていた。

 KEEP OUTと下げられた鎖を乗り越えて、ガソリンスタンドの敷地へ入る。建物のペイントが無残にはがれ、さながらお化け屋敷だ。そしてかつては事務所だったであろう部屋から地下へと続く階段へと足を進める。

「なあ、なんで警察署の近くにアジトを作ったんだ?ばれたらグループ全体が一巻の終わりだろう」

「いいや。この国の警察は金さえ払えば、たいていのことは目をつぶってくれる。地獄の沙汰も金次第ってやつだ。どうせ金を払う羽目になるんだったら、へんぴなところにいるよりも都会にいたほうが楽しいに決まってる。と言っても、この場所はまだばれていないはずなんだがな」

「なあに、それ」リンコが口を尖らせる。「警察が機能していないなんて、それでも国家なの?非常識にもほどがあるわ。ほんと、この国はおかしなことばっかり」

 それを皮切りにリンコが早口で愚痴をまくし立て、リョウはしまった、と顔をゆがめる。ネーレーに来て以来、リンコはかなりいらついている。下手にネーレーの事情を口に出せば、リンコが非難のマシンガントークを始めることぐらい簡単に予想がつくことだ。

「何を言ってる。この国がこんな有様なのは、お前ら先進国人が食い物にしてるからだろうが」

 テロリストメンバーの男はリンコの話をさして怒るというわけでもなく聞いて、こともなげに言う。気まずい沈黙が流れる。そしてそれっきりリンコも口をつぐみ、長い階段を下りる間三人は無言になった。

 階段を下り終えると、カーテンで仕切られただけの入り口があった。奥からは数名の男女の声が聞こえる。リョウは一段と緊張して、きりきりと腹が痛んだ。

「おうい、戻ったぞ」

 男は声を上げて中へ入る。それに続いてリョウたちもカーテンをくぐった。

 そこでリョウたちを待っていたのは、十人に満たない目出し帽の集団だった。その場にいる自分たち以外の全員が銀行強盗のような格好をしている。リョウもリンコも、圧倒されて声が出ない。ひょっとして自分たちは拉致されたのではないかと疑うほどだ。

「案内ご苦労。そしてごきげんよう、客人」

「ごきげんよう。おれが桜井リョウ、こっちが久居リンコ」

「そうか、電話をよこしたのは?」

「おれだ」

 リョウが手を上げて、尋ねてきた男に軽く会釈をする。席の配置を見る限り、この男が『復権の翼』のリーダーに違いない。そうであるなら、同時にマオの父親でもある。リョウはマオについて聞かれる場合に備えて、必死に思案した。

「そうか。マオを助けてくれてありがとう。早速だが作戦の説明に入る。そこへかけてくれ」

 男の支持に従い、リョウたちは席につく。数名の巨体と、あちこちに吊るされた武器、薄暗い室内と場を作り上げるすべてのものから、物凄い圧迫感が与えられる。学園にあるものと基本的には大差ないはずなのに、どうしてこんなにも恐怖をかきたてるのだろう、とリョウは冷や汗をかきながら思う。

 リーダー格の男は、机に広げられていた地図を使って説明を始めた。世界地図のネーレーから要塞学園近海までの範囲を拡大コピーしたもののようだ。リョウたちが来る前から作戦が練られていたらしく、あちこちにチョークで矢印が書かれている。しかもコピーしてから一日も経っていないだろうに、もう飲料か何かのシミがついていて、彼らの荒っぽさが表現されているように思える。机には他にも要塞学園の衛星写真や、現場にいるテロリストグループの顔写真などが散らばっていた。

「現場へは戦闘機で行く。向こうに着いたら、まず武器系統とエネルギー系統、それから情報系統を粉砕。連中が混乱してるうちに人質になってるやつらを解放。そして面倒ごとにならないうちにとんずらだ。要塞にいる〝槍〟の連中は五十名弱。人質の見張りと管制室、それから司令塔グループに八・一・一で分かれているはずだ。行きがけに空から爆弾でも落としてやれば、それだけで司令塔と管制室はガタガタになる。後は各所にばらばらになってる人質監視グループをうまいこと倒せれば終わりだ」

「ずいぶん詳しいんだな」リョウが言った。「いったいどうやってそんな情報を手に入れたんだ?敵グループの部隊構成なんて普通知りっこない」

「なあに、前にも言った通りあいつらはかつての仲間だからな。手口はお見通しってわけだ。まあ、それが今も続いてればって話だが」

「ちょ、ちょっと!」リンコが声を上げる。「そんな適当でいいわけないでしょ。戦闘機で要塞にどうやって近づくのよ?要塞が建てられた島の周りには対侵入者用の探知線が張り巡らされてるのよ。戦闘機なんかで突っ込んだら、集中砲火で一巻の終わりだわ!」

「ふむ、それについてはあいつが説明する。おい、頼むよ、ネズミ」

 リーダー格の男が声を上げると、部屋の奥からさらにもうひとり男がやってきた。今度は目出し帽はなしで、代わりに虫眼鏡のように巨大なメガネをかけている。出っ歯だからか、げっ歯目を連想させる顔立ちで、大きく突き出た耳といい、なるほどネズミに似ている。

「ようし、じゃあ説明しよう!」ネズミと呼ばれた男は待っていました、とばかりにキーキーと声を張り上げる。「まずこの島の半径十二キロ四方に渡り、確かに探知線が張り巡らされている。それも幾重にも!だが、これを抜けるのは必ずしも不可能じゃあない」

「なんでよ」

「それはずばり、空からの攻撃なんてそもそも来るはずがないと思っているからさ。考えてもごらんよ、お嬢さん。ミサイルや何かを撃てば発射した側には核兵器を落としてくる、怖い衛星があるだろう」

 リンコははっとした。ネズミの言う通り、宇宙で常時地球を監視している衛星がある。ミサイルなんて撃てるはずがないし、近年の戦争においても対空・対地に関わらず、空を介する攻撃はもはや主流ではなくなってきている。

「もちろん、だからといって要塞への突入が楽勝というわけじゃない。探知線網はやっかいだ。しかしそこにも穴がある。見たまえ」ネズミは地図上の、ちょうど要塞がある辺りを指差した。ご丁寧にも周囲十二キロのラインに沿って赤くマーカーが引かれている。「まあ空からの攻撃がないってわけで、この探知線は結構旧式のものが使われている。スペックで言えば、時速千キロ以上で入ってくるものについては感知出来ない。つまり時速千キロ以上のスピードを出してこの探知線網を抜ければいいわけだが、問題がある」

 ネズミは要塞学園のある孤島にまっすぐ直線を引く。とても小さい島だから、この地図であれば一センチも引いてしまえば島の全長に値する。そこでリョウが声を上げた。

「待ってくれ、着陸はどうする気なんだ」

「そう、そこだ」ネズミは満足気に、歯をむき出して笑う。その様子はやはり、ネズミという名にふさわしい。「時速千キロと言えば、マッハ一弱。この小さな島じゃあ着陸しようにも、スピードが出過ぎている。あっという間に通り過ぎて、島ははるか彼方」

「もうっ、じらすわね。だったら、どうするつもりなのよ!」

「そこで我々は小型の爆弾を用意した」

「爆弾?」リョウが身を乗り出して言う。「爆弾って……、まさか爆弾でスピードを殺して着陸しようってのか?」

「そのまさかだ!あんちゃんのほうは察しがいいな。そう、探知線網を潜り抜けた瞬間に爆弾を使って機体のスピードを殺す。だが着陸はしない。爆発と同時にパラシュートでもって、颯爽と乗り込む。戦闘機はそのまま海の女神にくれてやる。帰りは連中の飛行機をかっぱらって脱出だ。以上、何か質問は」

 リョウとリンコは唖然として、テロリストたちの顔を見比べた。話終えたネズミは自信満々の表情を浮かべている。それ以外のメンバーも、目出し帽のために細やかな表情まではわからないものの、まったく動じていない様子だ。リョウたちはとんでもない連中と組んでしまったことを、今更ながら後悔した。

 説明が終わると同時に、作戦が開始された。敵方が学園を占拠してから時間が浅い今夜のうちに、こちらも襲撃するのがベストだという判断だ。

リョウたちはすぐに往路のための戦闘機の場所まで案内された。連れて来たのはリーダー格の男であり、操縦方法から速度のうまい上げ方まで淡々と説明する。運のいいことにその戦闘機は学園で操縦したことがある機種の廉価版で、だいたいの操作法やボタン・レバーの配置が同じだった。

「あの……」

 リョウが声を出すと、男はにらみつけるようにリョウのほうを向く。格好のためもあってか、凶悪無比な目つきだ。その迫力にリョウも怖気づきかかったが、しかし尋ねないわけにはいかなかった。

「どうしてあんたたちはここまでしてくれるんだ。それにマオちゃんのことを何も聞いてこない。あんたはマオちゃんの父親だろう。おれたちとしては、めまぐるしいぐらいトントン拍子に話が進んで正直言って話についていくのがやっとだが、協力には物凄く感謝してる。でも、あんたが一番知りたいことは、突然現れたガキのことよりもマオちゃんのことじゃないのか?」

 リョウが言うと、男はしばらく黙ってその場は無言の空間になった。相変わらず男はにらむようにリョウのほうを見ている。リョウも負けじと男の目を見る。リンコだけが居心地悪そうにしていたが、しかしリョウの質問はリンコ自身も知りたい質問に違いなかった。

 そうだ。だいたい、話が出来過ぎてる。なんで突然やってきた素性も知れない子供二人組みのために、超危険な作戦に臨まなけりゃならないんだ。こんな地下にもぐって活動しているような貧乏テロリストだ。この戦闘機だって買うのに苦労したはずだ。それなのにその大切な戦闘機をおしげもなく、しかもおれたちのために爆破してくれるだなんて!

「……実は要塞占領作戦はずいぶん前に、今テレビの向こうにいるテロリスト連中がまだおれたちと仲間だったころに考えられたものだ。だがいざ決行しようって段階で意見が割れた。今ここに残ってるおれたちは穏健派、向こうにいるのが強硬派。強硬派の連中は、いつまでもぐずぐずと煮え切らないおれたちの態度が気に入らなくて、出て行っちまったのさ。残ったおれたちは後悔した。連中を止められなかったことじゃない、何も行動出来なかったことを後悔したんだ。今回、お前たちから連絡が来たことを、本当に幸運だと思っている。これであの時の汚名を叩き返すことが出来る。……それにマオはおれの子じゃない。ボスもおれたちとは別行動をしてる。もうどこに行ったのかもわからない。今回お前たちが来ることだけを連絡してもらったんだ。だから、マオに関しておれたちからは何もない。お前はおれを軽蔑するかもしれないが、これが本心だ」

 男はそれっきり黙ってしまった。何となく、男が恥ずかしがっているようにリョウは思う。小僧相手に心中を吐露してしまったなんて、巨漢のテロリストにしてみれば一生の不覚だ。そう思うと、リョウはにわかに男への親近感が沸いてくる。

 あるいは保護者らしくマオの心配をしないことに、羞恥と罪悪感を覚えているかもしれない。しかし実際に親ではないと言うならリョウも納得がいく。不必要な心配をかけることがなく、かえってちょうどいいぐらいだ。リョウは部屋を見渡して、この騒ぎが終わったらマオをここに連れてこようと誓った。

 テスト飛行もしないままに、リョウたちは出発することとなった。ネズミ曰く調子は上々とのことで、リョウたちも今更そんなことを気にしている暇はない。今すぐにでも出発したい気持ちなのだ。

 戦闘機を操縦するのはリンコだ。理由は単純で、つまるところこの作戦はリンコの機兵化した目を使うことが前提で練られている。探知線網を視覚で捕らえられるリンコが、自爆スイッチを探知線を通り過ぎたその瞬間に押して脱出することが、この作戦にとって必要不可欠だ。

「やっぱりおれが代わろうか?」出発する間際、リョウがリンコに尋ねた。「おれが操縦席について、リンコの合図で爆破スイッチを押すんだ。そうすればお前が先頭に立たなくてもいいだろう」

「お馬鹿。結局飛行機ごと爆発しちゃうんだから、どこに乗っていようと同じよ」それでもなお説得しようとするリョウを、リンコは面倒くさそうに払う。「リョウ、聞いて。リュウセイグンを見た夜に言ったでしょ。頼ってくれれば力を貸すって。今がその時なのよ。もっと言えば、あたしは誰が何を言わなくても、リョウのことを助ける。あんたは誰かを守るために戦ってる。でもあたしの戦う理由は、リョウ、あなたなのよ。あなたを生かすためだけにあたしは戦う。今までも、これからもね。……ほらっ、わかったらさっさと席に着きなさい!」

 リンコの機械虫によってリョウは無理やり着席させられ、シートベルトまで不本意に装着した。当のリョウはと言えば、リンコの打ち明けた〝戦う理由〟にひどく驚いていた。リョウのために戦っていただなんて、リョウ本人はまったく知らなかったのだ。ひゅーひゅー、とはやし立てるテロリストたちに、リンコが照れながら怒声を上げる。何となく、リンコがリーダー格の男と同じような人間に思えて、リョウも笑った。もちろんリョウは怒声だけでは済まされず、しっかりとゲンコツを食らうのだが。

 皆、何か理由があって戦ってるんだ。おれも、リンコも、テロリストのおっさんたちも。……サムもきっとそうだ。行ってみればわかる。わかり合える。誰しも理由があるのなら、話し合えば暴力に頼らない解決法も見つかるはずだ。サムの望むものだって、学園を占拠しなくとも何とかなるはずなんだ。

 戦闘機に乗っている面々を見比べ、リョウは安堵する。全員が迷いなく、己が目標のために戦い切るつもりでいる。それならば皆、思考の道筋は一緒のはずだ。そう考えると人類は話し合えばわかり合えるような、ユートピア的な思想がリョウの心を満たすのだ。

 リンコが飛行機のエンジンを回し始め、機内に明かりが灯っていく。徐々に外の風景が移動し、いよいよ離陸するだろう。この国の治安の悪さに憤っていたリンコだが、皮肉にも今、『復権の翼』からの裏金によって使用を許可された軍用の滑走路から飛び立とうとしている。もちろん非公式の行為であり、近隣の自治体は今回のフライトと一切関係しないことになっている。いずれ発表する時には、未確認飛行物体がどこからともなく現れたということにするらしい。適当ぶりに呆れるが、そのおかげで学園へ向かうことが出来る。

 リョウは機内のわずかな明かりでもって、窓の向こうを覗いた。倉庫や用途不明の巨大な台車がごちゃごちゃと散らかる様子からは、普段の学園生活はない異文化情緒を感じる。そしてこれから舞い戻る要塞学園のことを想い、決意を新たに目を閉じる。


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