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そういった意味で心配

 こうして私は、クロードに連れられて魔法学園にやって来た。

 先ほどの子達は同い年らしいのだが、どうも私は不審がられてしまったようだ。


「強すぎるという事は孤独であるようね」

「……よく分からないアホな事を言っていないで行くぞ、ミドリ」

「はーい」


 素直に私はクロードに返事をし、クロードの後をついていく。

 まず私は、大きな魔法学園の門(彫刻などが施されている)、その背後に見える巨大な建物に目を奪われつつ門をくぐる。

 門番の人は、クロードが何かメダルのようなものを見せるとすぐに通してくれた。

 王子様の身分証のようなものを見せたのかもしれない。


 季節外れの転入生という事で、まずは学園長室に先に行くのだそうだ。

 緑豊かな学園内を、クロードに手を引かれながら歩いていた私だが、


「なんで手を繋いで歩いているの?」

「放っておくとミドリは何処かに飛んでいきそうだからな」

「そんな事はないよ。あ、青い鳥が飛んでる!」

「……だからそうやってすぐに何処かに行こうとするな、はあ」


 ため息をつくクロード。

 それを見ながら私は思う。


「でも普通に異世界に来たら色々気になったりするものだと思う。私みたいな“普通”で“平凡”だったらそうなると思うよ?」

「……いや、普通だったら、不安で泣いたりすると思う。こんな積極的じゃないと思う」

「でも物語で見たし。特殊能力チートもあるし?」

「ああ、あれか……あのわけの分からない能力……」


 そこはかとなくクロードの瞳がとろけているように見えるが、多分気のせいだろう。

 そういえば私もこのクロードに聞きたいことがあった。


「チュートリアル君は一応、王子様なのに従者とかいないの? 護衛とか」

「……この世界の“普通”の人間相手は、“危険”だからな」

「そうなの?」

「そうなんだ。というわけで異世界から召喚した“聖女”か、普通の“聖女”が必要だった。でもこの世界の“聖女”は何処にいるのか分からないから、異世界の“聖女”を呼び出すことになったんだよな」


 どうやらこの世界のも異世界から呼ばずとも“聖女”がいるらしい。

 新たなの情報を得つつ私がだなって話を聞いているとクロードが、


「そして呼び出したミドリと二人っきりで、ここの学園に来ることになったという話だ。神殿からのお願いしてもらって、どうにか二人きりにしてもらえた形だけれどね」

「そうなんだ。そういえば私が“聖女”として呼び出された理由、まだ聞いてないよ?」


 そこって一番肝心な部分なのではと私が思っていると、次に私の方をクロードがじっと見てため息をついた。


「……従順で言う事を聞きそうだから心配ないだろうというのもあったが、今は別の意味で心配だ」

「? 信用できないの?」

「正義感の強さも含めて心配はしていないが、いや、そういった意味で心配しているな」

「? 意味が分からない?」

「俺が別の意味で心労を貯めそうだ、って事だ。まあいい、言ってもミドリだから分からなそうだし。というかもう分かっているなら、こんな事にはなっていない気がするから言っても仕方がない」

「何よ、その言い方。というか、“聖女”として呼び出して、神殿からお願いも来たって、マッチポンプみたいだね」

「マッチポンプ?」

「自分で火つけて自分で水をかけて消すの。まるで、チュートリアル君がおぜん立てをしたみたいに聞こえたから。あれ、チュートリアル君が私を呼んだんだっけ? 神殿からのお願い?」


 話がこんがらがってきたあたしはそう聞くも、クロードは黙ってしまう。

 そこで、


「君達が、転入生かな?」


 そう私は声をかけられたのだった。



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