こうして私は異世界召喚された
さて、ここで私が異世界にどうして呼ばれてしまった、つまり異世界召喚されてしまったのかについて話そうと思う。
そう、それはある寒い日の事だった。
その日はやけに寒いので私は、温かいぬくぬくとしたこたつの中に入りながらアイスを食べよと思っていたのだ。
暖かい場所で食べる冷たいアイス。
口の中でほどけて甘いミルクや果汁が口いっぱいに広がる、あの美味しいアイス。
丁度、あるメーカーの新商品が出ていたのでそれを購入し、私は家に帰る所だった。
中学校からの帰り道。
勉強が終わった放課後。
部活動にいそしむ者達もいるが、私は“謎部”に入っている関係で忙しく、その関係で部活動に入っている友人とはたまたま時間が合わずに、本日、私は一人で帰宅していた。
そしてそれ故に私はアイスを購入し、自宅へと一人機嫌よく歩いていたのだ。
平凡で穏やかでいつものような日常。
これは素晴らしい事だと思う、人生って素晴らしい。
そう思いながら平穏な日々をこれからも送ろうと思っていた私の足元で、何かが光った。
日の光でガラス瓶の破片で光ったのだろう。
良識的で科学文明に毒された私の頭は、現実的で妥当な判断をその時下した。が、
「……足元の光が強くなってきている? というか、どこぞのゲームか何かで出てきたような光の魔法陣のようなものが浮かび上がっているような。……逃げよう」
訳も分からずに異世界に呼び出されるのはお断りだ。
というわけで私はその場から全力疾走して逃げ出そうとしたのだけれど、私の走る速度に合わせるかのように魔法陣が光っている。
もちろん周りの人間は気づいていない。
「魔法陣が追ってくる、というか光が強くなって、周りが真っ白に……」
目もくらむような白い光に私は瞼を閉じた。
そしてすぐに瞼越しに暗くなったのを感じる。
それと同時に声がした。
「上手くいったようだな」
若い少年の声、といっても、同い年くらいな歳の人物な気がするが。
そう思って目を開いていくと、そこには、とろけるような金髪と緑の瞳の少年がいた。
服も来ているものは上品そう。
但し、とても生意気そうだが。
そこで目の前の彼が、
「俺が願った通り、平凡で普通そうな女子だな」
「……どちら様でしょうか? というか、もしやここは異世界?」
そう思って私は周りを見回すが、窓一つなく地面には光の……私を追いかけてきた魔法陣が広がり、周辺には蝋燭に炎がともされた燭台が置かれていたりと雰囲気満点であると気付く。
もうこれは異世界召喚しかないなと思っていると目の前の彼は小さく笑い、
「突然こんなことが起こって、変に冷静になったのか? まあいい。ここはお前にとって異世界で、言葉が通じるのはお前が持っていた特殊な言語能力のお陰だ。この世界に適性があったと思えばいい。イメージで言語を“理解”する能力だ。だからそちらの世界に無いものは、こちらの世界にあってもお前は理解できない、もしくは知らない物も理解できなかったりする。逆もしかりだが」
「はあ、そうなのですか。それでその能力があったから呼ばれたと?」
「いや、その能力を持つ者は沢山いる。その中でお前を選んだのは……お前が平凡だからだ。平凡なら扱いやすいだろうからな」
そう言い切った時のドヤ顔が、私には気に入らなかったわけですが。
というか、平凡は私は好きだけれど使うのに便利そうって、それはないと思う。
だがここで反抗するよりは、もう少し周りの状況を把握しなくては。
私はそう冷静に考えているとそこで、
「それで、どんな能力が欲しい? お前には、この世界に呼ばれた“聖女”として特別な能力を手に入れる権利がある」
そう私に告げる目の前の美少年。
とりあえずは異世界召喚されて、チートがもらえるような展開であるらしい?
そう気づいた私は早速、
「ゲームっぽい能力をください」
迷わず選択したのだった。