1-8検証と考察
俺が言葉のやり取りをした最後の人物であるクトゥール。そりゃ聞き覚えのある声だわな。
つーかあの面倒くさそうな雰囲気はどこへやった?別人みたいでドン引きなんだが。
あの雰囲気は俺を油断させるための芝居だったのか?
うまい具合に言質を取り自分の都合のいいようにストーリーを組み立てたか。
押し込まれた薄暗い部屋で過ごした時間で都合のいい証拠集めをしていたのか?
もしかしたらもっと前から計画されていたのかもしれないと思いついた。余りにも急展開すぎるんだ。
一つ一つ検証していくとしよう。抜け穴があってこの窮地から脱出できるかもしれない。
まずは「身分詐称」、つまり俺が死んでいるという点を証言した親族とやらについて考察をしてみる。
俺の親族というと親父しかいない。証言した親族か…考えられるのは…でっち上げ?遠い親戚?まさか隠し子?!
――
あ~うん。これはそのまんまの意味だろうな。
あの親父の性格と商売への思考・手腕から鑑みると、店への風評被害を抑える最善な策をとると考えられる。この際真実なんてどうでも良いんだ。
俺を死んだ者にすれば被害者という認識が広まり、同情という形で店の名が広まることはあれど、悪評はそうそう広まらないだろう。寧ろ同情を狙って俺を美化し、有る事無い事証言する可能性のほうが非常に高い。
身内から犯罪者、それも商売関連の罪と王国に対する罪ときたら店の信用ガタ落ちだ。一気に崩壊する。
そのリスクを考えると死んだ者として扱うのが正しい判断か。親父の格言は「商いは信用が第一」だからな。寂しいけどそんなもんさ。
これなら身分詐称は成り立つ。王宮への不法侵入に関してはお前らの勘違いで間違いないが。
というか俺の立場……ここだけで結構詰んでね?
次に「違法な入手方法による売買及び取引詐欺」についてだ。
骨董品をガラクタと言われた事に憤りを覚えるが、これは価値観の相違でしかなく水掛け論にしかならないので割愛する。
俺にとっては魅力的に思えても相手がそうであるとは限らない。なので交換する際、販売する際には念入りに確認したつもりだ。
ふと、もしかしたらと一つの仮説を思いつく。
相手がゴミだと思った物を俺がそれなりの値段で買ってしまったせいで、売った本人が類似した物を高く第三者に売ってしまったという可能性。
売った本人と第三者がトラブルを起こし、罪をなすりつけるため俺の存在を持ち出したのかもしれない。
俺から買ったものを転売したとしてトラブルなんか起きた場合は即行で思いつく手段だろうな。そうなったら確かに取引詐欺だ。
違法な入手方法?知らんなぁ。どうでもいい。当てつけだろ。
まぁそれよりも問題なのはペンダントだ。いつの間にか手に入れ、偶然目につき気に入り、何気なく身に着けるようになったもの。
どう考えても俺の意志だし作為的に意図してできる状況ではない。
だがシュテルンハームの王旗を似せて作成したとなると……事前に作っている理由があるんだから嵌められたんだろうなぁ。
しかも最近まで戦争していた相手国だぞ?作為的すぎるだろ。それが何故俺なのかが焦点だな。
普通に考えると戦争に行った事のない只の一般商人が敵国の王旗を見ることはないだろう。国旗なら見る機会はあるかもしれないが。
まぁ王旗は新たな王が即位すると代わるものなんで王宮か直轄地、行軍時くらいしでしかお目にかかる機会はない。大大大貴族の旗みたいなもんだし。
当然国を跨いで商いをする大商人なら記憶するべき事柄なのだろうけど。まぁどうでも良いかな。
「流言を用いた王宮に対する侮辱罪」ときたか。コレはそう言われたら認めざるをえない。両手を挙げて降伏するしかないな。だって言ったもん。しょうがないじゃん。事実だもん。
「市民の感情を煽り反乱を起こそうとした」とか言われたら否定する材料がないしなぁ。この部分は非常にマズイぞ。
という風に考えてたら生理現象の波が激しくなってきた!否定材料が無いどころのマズさじゃない!このままだと1人の紳士として非常にマズイ!仮にこの場をやり過ごし生きて帰ったとしても生理現象の大惨事が起こってしまったら……それだったらこのまま死んだほうが良いや。尊厳死ってヤツだな。うん!腹は決まった!色んな意味で!もうドーデモイイデスヨー♪
「ではカルアとやら。何か言うべき事はないか?」
黒子が俺に尋ねる。俺の猿轡が外される。まさかのチャンス到来!言いたい事は山程あるが、決意新たに俺にはこう言うしか選択肢は残っていない。
「真実を語る前に一つだけお願いが!厠へ行かせて!もう限界!色々!俺の生涯を話す前に大きな障害起こってしまう!このままでは大災害が起こるぞ!」