1-5現状確認
「本当に申し訳ございませんでした!」
鼻血の相手は文官でクトゥールというそうだ。気さくで安心できる雰囲気を醸し出している。何故か何でも語ってしまいたくなる不思議な人柄だ。
怪我させたことは完全に俺が悪いため、直立不動の九十度お詫びで先制攻撃を行う。これから交渉を行うのだ。少しでも印象を良くせねばならない。
「替えのハンカチをどうぞ。あ、詰めるものをお持ちしましょうか?応急手当に必要なものは一通りあるみたいですので」
「少し静かにしてくれるだけでいい。気にする必要はない。これでも元兵士だ。手当の心得ぐらいはある。とりあえずそこに座ってくれ」
どうやら逆効果だったらしい。支持された椅子とは別の丸い補助椅子を用意して座る。立場は貴方が上ですよアピールをしておくのさ。
「この度は優勝おめでとう。まさかライオノットが敗北するなど予想だにしなかったぞ。貴殿の剣筋は居合が主のようだが何処で学んだ?」
「誰にも手ほどきは受けていません。武術とは無縁の生活ですし。そもそも私はしがない商人の出ですよ?」
「ほう?我流と申すか。そして出自は明らかにしたくはない……と。まぁ良い。こちらの用を済ます前に貴殿の方を済ますとしよう。先ほどの火急の用とはなんだ?」
商人というフレーズは誤魔化しだと思われたようだ。外見も雰囲気も村人A以外の何者でもないと思っているのだが?もうちょい頑張ればダンジョンの場所を教えられる重要なモブキャラにクラスチェンジ出来るかもしれない。
なんとなくの直感レベルだがクトゥールの事は信じても良い気がする。騙す気満々の奴はもっと愛想よく探りを入れてくるもんだ。そして多少の警戒を持って接してる奴は騙そうとはしないもんだと思ってる。でも油断はできない。全てを話した後で「実は盗賊なのでした〜残念!」って事になったらシャレにならない。なのである程度ボカしていこうと思う。
「実は王宮に赴いた時の手荷物が見当たらなくて何処にあるのかと思いまして。もう少し動きやすい服に着替えたいですし。どうすれば良いかご教授願えますか?」
「それなら問題はない。現在お前は来賓扱いだ。迎賓館に一室用意されている。そこに運び込まれているはずだ。なんならこれから移動するか?腰を据えて色々と確認したい事があるんだ。どうせここに居てもやる事ないだろ」
俺はクトゥールに道案内を頼む事にした。移動がてら俺の立場を教えてくれた。
クトゥール曰く、先日の商会内での売買において一部の貴族・職人たちにおいて非常に価値のあるものを売っていたようだ。何処で仕入れたか聞き出すと共に今後も定期的に購入したいという思惑があるようだ。そして流通を扱っている文官達は販路として抱え込む案も出ているようだ。
話がデカくなり過ぎてドン引きだぞ。
迎賓館で充てがわれた俺の部屋には確かに行商で扱っていた私財が保管されていた。それとは別に貢物らしい品々も置いてありご丁寧に贈り主と品名が書かれた一覧も置いてあった。まるで別世界に来たようだ。
「さてこちらの用件に入らせてもらう。これからお前について徹底的に確認させて貰う。出来ることなら嘘偽りなく真摯に答えて欲しい。明日改めて尋問される事になっているのでな」
クトゥールが面倒だと言わんばかりに溜息を吐いた。