1-2決勝戦
「さぁ!いよいよ決勝戦!過去に類を見ない対戦カードです!誰がこの試合を予想出来たでしょうか!」
大音量の場内アナウンス。司会は奇抜な衣装に身を包んだグラサン男。観客席には人がビッシリと詰めている。興奮しすぎて喧嘩でも起こっているのか、所々で警備兵が仲裁に入っている。
俺は慎重に一歩ずつ足下に罠がないか確かめるようにリングへ向かう。可能な限り現状を打破するために頭を働かせながら。
「優勝候補ナンバーワンの近衛長を倒した次代の傑物ライオノット!前回の御前試合では一瞬で近衛長に敗北した雪辱を見事に果たしました!」
ライオノットと呼ばれた優男は笑顔で観客へ向けて手を振りながらも俺の様子を伺っている気がする。黄色い歓声が増えたのは気のせいではないな。少し羨ましい。
「対するは全く無名のダークホース!名前も経歴も流派も全てシークレットという謎の剣士!これまでの戦い方からミスターカウンターと呼ばれています!」
ミスターカウンター…初めて聴いたぞ…
全くもって実感ないがな…
どちらかと言うと無名のダークホースの方がカッコよくね??
「どうした?早く来い。怖じ気付いたか?棄権するなら今のうちだぞ?まぁお前程度では5分もかからず終了だがな」
優男が小馬鹿にしたような見下した笑みを浮かべながら俺を挑発する。
が、良く見ると目が笑っていない。凄まじい眼力で俺を睨みながら剣を抜く」
「おぉ!相手を伺うような言葉による心理戦が始まっております!皆様にお聞かせできないのが残念です!ささ、ミスターカウンター様。リングへどうぞ。」
グラサンがマイクを通さず俺に早くリングへ上がるよう指示する。時間稼ぎももう無理か。
「隙を伺うような両者の探り合いがピリッと私の肌を冷たくさせます!これ以上長引くと私倒れてしまいそうなので早く始めさせて頂きたく思いますが、会場の皆様宜しいでしょうか?!」
「「オウウゥー!!!」」
「「早く血を見せろ!!!」」
「「ライオノット様っ!!!結婚して」」
私利私欲全開の声が会場を包む。
激しくウザい!血が見たいなら外行って魔物を倒すか食われてこい!結婚してと言う前に鏡を見ろ!美人だったら俺と付き合ってほしいがな。
「構えないのなら此方からいくぞ!審判始まりだ!」
「それでは試合開始っ!」
優男の掛け声とともにグラサンが試合開始を宣言する。