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クローズドミッション  作者: 桜崎あかり
序章『遊戯都市奏歌の動向』
2/18

序章2


 西暦2018年、過去にARゲームを巡って色々な騒動があったのだが、それさえも正確に報道されたとは言い難い物ばかり。

そうした事例が影響し、ARゲームに関して毛嫌いをする勢力も存在するのは事実だ。

純粋にARゲームを楽しむプレイヤーにとって、そうした声は雑音以外の何物でもなく、中には一部勢力が実力行使をする事例も――。

こうした案件に対し、ARゲーム運営は指をくわえていた訳ではない。逆に言えば、こうした声が出る事は既に把握していたのだ。

 さまざまな案件が彼らのデータベースに転送される一方で、その正体を知る人物が皆無に近い存在があった。

その組織の名を、ネット上ではARゲームガーディアン『ヘイムダル』と呼び、彼らが動く事を『ラグナロク』と呼ぶ。

これは一種の皮肉と言われていた。彼らの動く事がないように、ARゲーム運営側も思考錯誤を繰り返していたのである。

彼らが本格的に動くのは、ネット上でもARウェポンが軍事転用、ARゲームの運営に関わるような自然災害等――それこそ最終戦争と例えられる事案が発生しない限りは動かない、そう断言されていたのだ。

超有名アイドル商法や炎上マーケティング、ましてやバラエティー番組におけるやらせ等で動く事は絶対ない――。

しかし、世の中には絶対という物はない。ヘイムダルは自分達が不利益になるような――私利私欲で動くような組織とは違う。

都市伝説ではあるのだが、ARゲームの運用で致命的な案件が発生した際に姿を見せるらしい。

それを信じるユーザーがいるかどうかは別として。



 6月下旬、ヘイムダルの一人である大和やまとは私服姿で、いつもの場所へと到着する。そこは、動画サイトのアンテナショップとも言える場所だ。

何故、この場所に彼女が姿を見せたのかは分からない。しかし、受付でタブレット端末に表示された何かを見せた所、顔パスと言っていいような状態で奥へと通される。

 通路を歩いている途中、大和は知っているような顔を見かける。アキバガーディアンの特殊アーマーとは違う、明らかに和風な着物だった。

その一方で、着物とは合わないような陸上用スニーカー、それに巻物型のARガジェット――彼の正体は、柏原隼鷹かしはら・じゅんようだったのである。

大和の方はちらりと振りむいた程度であり、彼の顔を見ていない。一方で、柏原の方は大和の存在には気づいていなかったようだ。

 約5分後には会議室に到着、そこのドアを開くと、既にタブレット端末及び会議のセッティングは完了していたのである。

「とりあえず、後の事はこちらで行いますので――」

 先ほどまで同行していた男性スタッフに対し、大和は退去の指示を出す。特に退去とは言わなかったのだが、向こうは暗黙の了解のように把握しているようだ。

男性スタッフが出払った所で、大和は用意していた野戦服を私服の上に重ね着する。あくまでも上着だけなので、厚着と言う訳ではないようだが。

 この時に行われた会議の内容は、詳細なログは残っていない。珍しく白熱する事無く、30分ほどで終了したという事だけは参加者も分かっていた。

「パルクールの一件、ああもあっさり解決されると――ヘイムダル不要論も出てくる可能性も出てきますね」

「ARパルクールと言っても、作品は1つと限りません。シティフィールドの方は速攻で片づけられてしまったと言う――」

「向こうとしては表に出せないガジェットがあったという事――か?」

「表面に出せないガジェットと言えば、別所で違法ガジェットが出回ったというのを秋葉原で聞いた事がある」

「それこそ我々とは関係ない。秋葉原はアキバガーディアンのテリトリーだ。我々が出向く程ではない」

「しかし、ARウェポンやARガジェットは特許関係が――」

 声の方は相変わらずのボイスチェンジャーで変化しており、正体を把握できない。

それに関しては大和の方も分かっているのだろう。彼女は、あくまでも会議の場を提供しているだけであり、その場所がヘイムダルなのだから。

『アキバガーディアン――柏原が動いていると』

「その通りだ。他にも出雲いずもという人物もいるらしい。必要であれば写真も用意できるだろうが」

 参加者の一人が柏原の名前を聞き、出雲と名乗る人物の写真を提供出来るという申し出があった。しかし、大和は敢えて応じない。

『アキバガーディアンは現状で放置しておく。我々としては、掲示板に情報提供があった違法ガジェットを開発している勢力の洗い出しが先だ』

 大和は優先するべきはアキバガーディアンではなく、違法ガジェットの開発している勢力を洗い出す事と明言した。

違法ガジェットが出回ると言う事は、ARゲームのパワーバランスが大きく崩れる事を意味している。

「違法ガジェットに対抗するには、廃課金という誤った認識――それがゲームバランスを大きく崩し、アイドル投資家やネット炎上勢力にネタを提供する事になる」

「我々としては、それを避けなくてはいけない」

「あくまでも、ARゲームは基本無料のソーシャルゲームとまでは言わないが――廃課金等の様な金に物を言わせるタイプの作品とは大きく違う」

 そして、その後も対策が検討され、その日の会議は終了したという。



 同年7月、さまざまなイベントが盛り上がるなかで、ヘイムダルはミュージックオブスパーダと呼ばれる音楽ゲームタイプのARゲームを警戒していた。

それを巡る事件が表面化していく内に、ネット上で炎上騒動などが起きており――それがヘイムダルを名乗る偽者が出現する事件を生み出す。

しかし、いくら炎上勢力やなりすまし勢力等がヘイムダルを名乗ったとしても、それを信じようと言うネット住民はいない。

【さすがに、これはタダ乗り勢力だろう】

【フジョシとかヴィジュアル系の夢小説勢とか――もう少しマシな勢力を名乗るべきだな】

【ネット上でも都市伝説のヘイムダルを名乗るなんて、あからさまに悪目立ちをしたいと警察に情報提供している物だ】

 つぶやき上でもデマ情報を発見し、それを通報するユーザーが後を絶たない。

結局はヘイムダルを名乗った未成年のユーザー等が逮捕され、夕方のニュースで報道されるのだが――そこでもヘイムダルと言う単語は避けられた。

検閲と言う様な理由ではなく、マスコミもヘイムダルと言う単語を敬遠しているようだ。

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