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買ってみた(一件目)

更新間に合わず、ごめんなさい。

「ヒュー・・・ヒュー・・・な、なんで・・・私より・・・足が・・・短いのに・・・キミの方が・・・元気・・・なの?」


「わっふぅ!」


『タリーズ生活雑貨店』と書かれた看板を掲げた店舗の前に、五体投地状態で転がる白衣が呻きます。すると跳ねる毛玉が『まだイケるぜ!』とばかりに吠えました。


「取り敢えず・・・か、開店前みたいだし・・・ちょっと・・・休ませて・・・」


アルルさんは店舗前のベンチまで這い寄ると、白衣を畳んで枕がわりにして寝転がってしまいました。プルトくんもベンチによじ登り、アルルさんの頭がある側に座ります。そして顔を覗き込んで、辛そうな表情に気付きました。


「きゅ~ん・・・」


漸く落ち着きを取り戻したプルトくん、アルルさんに負担を強いたことを反省し、彼女の頬に顔を擦り付けます。


「ん、くすぐったい・・・だぁいじょーぶ、ちょっと疲れただけだから。お店が開いたら教えて。」


「わふ。」


一息付いて楽になったのか、アルルさんから寝息が聞こえてきました。(マスター)の休息を妨げないように、プルトくんは大人しく座って通行人を観察します。


アルルさんみたいにツルッとした肌の人やゴツゴツした鱗のある肌の人、小さな身長で口の周りにもじゃもじゃの毛が生えている人や緑色の肌をした小さな角を持つ人、色々な人が通ります。


また、人だけでなく乗り物も通りました。輪っかの付いた箱を大きな動物が曳いていたり、輪っかの付いた箱だけが走っていたりします。


初めて見るものばかりで、ついついそちらにばかり気を取られていると、不意に声を掛けられました。


「お客さんかにゃ?待たせてごめんにゃ、中へどうぞにゃ。」


声のした方に振り返ると、金色の瞳の黒猫がいました。綿のシャツとゆったりしたスカートを着た、活発そうな猫さんでした。猫さんはプルトくんに向けていた視線をアルルさんに向けた瞬間、一歩後退ります。


「あにゃにゃにゃにゃにゃ・・・にゃ、にゃぜアルルがここで寝てるにゃ?蚤取りはこの前終わったばかりにゃ・・・」


「ん?パメラ、おはよ~。買いたいものがあるんだけど、もう入って良い?」


猫さんが動揺のあまり大きな声を出したので、アルルさんが目を覚ましました。途端に猫さんは、半開きのドアの影に隠れてしまいました。


「か、買い物にゃ?本当に買い物だけにゃ?変な薬とか飲ませないにゃ?」


「うん、今日は買い物に来ただけ~。あ、でも何処か悪いとこがあるなら軽く診るよ。」


「にゃいにゃいにゃいにゃいにゃ!至って健康、すこぶる元気だにゃ!さ、早く入るにゃ!」


「じゃ、お邪魔するね。そうそう、この子はプルトくん。訳あって一緒に暮らすことになったから、仲良くしてあげてね。」


そう言って簡単にプルトくんの紹介を済ますと、アルルさんは店の中に入って行きました。


「私はこの店の店長のパメラ=タリーズにゃ。見ての通り猫人族(ケット・シー)にゃ、同じ獣人同士よろしくにゃ。」


「わふ。」


パメラさんが掌を出してきたので、プルトくんもプニプニモフモフの手で握手します。


「私達も入るにゃ。小さいけど自慢の店にゃ、ゆっくりしていくにゃ。」


パメラさんに手を引かれ店舗内に入ると、プルトくんは驚きのあまり目を丸くしました。其処はありとあらゆる道具で溢れかえっていました。


「ふふふ、どうにゃ?すごいにゃ?当店のモットーは『何でも揃う町の便利屋さん』にゃ!洗濯バサミから武器・弾薬まで、幅広く扱ってるにゃ。あ、でも他のお店で扱ってる物は置いてにゃいから、そういうのはそっちで買ってにゃ。」


『にゃっはー!』とばかりに熱く語るパメラさんに、先に店内に入っていたアルルさんが話し掛けます。


「パメラ、パメラ。プルトくん用の歯ブラシって、どれが良いかな?」


「アルルが磨いてやるにゃ?それともプルトが自分でやるにゃ?」


「プルトくんはどっちが良い?」


「わふ。」


両手をシャキーンと挙げて、自分がやりたいとアピールするプルトくん。


「プルトくんが自分でやりたいっぽい。」


「じゃ、こっちにゃ。後、このブラシも買ってくにゃ。」


「「?」」


「プルトは長毛種だから、放っとくとすぐ毛先が縺れるにゃ。毎日ブラッシングすると良いにゃ。」


「なるほど~。後、プルトくん用に食器セットを揃えたいんだけど?」


「食器はこっちにゃ。付いてくるにゃ。」


一見乱雑そうな見た目ですが分類ごとに整理整頓されているらしく、迷いのない足取りでパメラさんは案内します。


「握手した感じだと・・・この辺りかにゃ?プルト、これ持ってみるにゃ。」


スプーンを渡されたプルトくん、昨日習った通りに持ってみます。


「ぴったりにゃ。そのサイズにゃら、こっちの一式で一通り揃うにゃ。」


「ありがと!助かるよ。あとは椅子なんだけど・・・」


「椅子なら家具屋のスミス爺さんにゃ。」


「だよね~・・・うぅ、スミスお爺ちゃんちょっと苦手なんだよね~・・・」


「気持ちは分かるにゃ。頑固にゃし、無愛想にゃし、顔も怖いにゃ。」


「今から会うんだから言わないでよ~。・・・益々気が重くなってきた・・・」


「でも実は優しいにゃ。たまにお魚分けてくれるにゃ。『釣りすぎた・・・食え!』って持って来てくれるにゃ。」


「ツンデレさん?」


「ツンデレさんにゃ。」


「「・・・・・・」」


「うん、なんか気が楽になった。プルトくんも紹介したいし、行ってみるよ。じゃ、これといつもの石鹸でお会計お願い。」


「まいどありにゃ~。」


無事一件目の買い物を終え、椅子をゲットすべく家具屋に向かう二人は、『タリーズ生活雑貨店』を後にしました。


「プルトくん、散歩だからね、散歩。良い?」


「わっふ!」

次回更新もなるべく早くできるよう頑張ります。

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