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注文してみた

朝食を摂り終え、アルルさんはお出かけの準備をするためにダイニングを離れました。プルトくんは現在のところ全裸が基本スタイルなので、特に準備はありません。暇なので窓から外を覗いていると、朝見かけた女性が歩いて来るのが見えました。何やら重そうな荷物を提げて歩いており、プルトくんを見つけると近づいて来ました。


「ワンちゃん、また会ったね~」


「わふ。」


ガラス越しに話し掛けられました。


「お、ルノアちゃんだ~。おはよ!」


いつの間にかやって来たアルルさんが、プルトくんの後ろから手を伸ばして窓を開けました。


「おはようございます、アルルさん。帰ってらしたんですね。それにしても、今日は随分早起きですね?」


「この子に起こされて、仕方なくだよ~。」


モフモフの頭をポンポンと叩かれ、尻尾が左右に振られます。


「そうなんですか。ワンちゃんは偉いね、その調子で毎日アルルさんを起こしてね~」


「わっふ!」


「ん、良い子ね~」


村娘さんことルノアちゃんに頭を撫でられ、プルトくんは『任された!』とばかりに頷きます。


「裏切られた!毎日早起きなんてしたら、私の寿命が縮んじゃうよ!」


「ところで、このワンちゃんどうしたんですか?というかワンちゃんじゃないですよね?さっきも見ましたけど、二本足で立ってますし。」


アルルさんを華麗にスルーしたルノアちゃん、窓越しにプルトくんを持ち上げて自分の横に立たせます。


「うぅ、ルノアちゃんは相変わらず会話のキャッチボールしてくれないよぉ・・・この子はプルトくん、犬人族(コボルト)らしいんだけど、怪我してたから拾ってきた。」


「拾ってきたんですか?本当に?実験用に誘拐したんじゃなくて?」


「うん、ルノアちゃんの中で私がどんな人間なのかちょっと聞きたいな。」


「村に一人しかいないお医者さんなのを良いことに、診療所に来る人皆を新薬の実験体にするマッドな人だと思ってます。」


「・・・・・・」


「あれ?あってますよね?」


反論しようにも出来ないアルルさん。そこに村の少年が通り掛かり彼女に気付きました。


「アルルだー、アルルが帰って来たぞー。退避ー、退避ー。」


野獣が村に入り込んだとばかりに、血相を変えて近所に警告を発して逃げて行きます。疎らにいた歩行者も必死に逃げ出します。


「あれ?あってますよね?」


ぐぬぬ顔のアルルさん、プルトくんも若干ジト目で見上げます。どうやって言い返そうかと思案した末に・・


「・・・・・・そんなことより、今日お店開いてる?欲しい服があるんだけど!」


話題を逸らすことにしたようです。どうやらルノアちゃんは服飾関係の人らしいです。


「開いてますけど・・・・・・もしかして、やっとお洒落に目覚めてくれたんですか?!アルルさん中身は壊滅的に駄目人間ですけど、外見だけ(・・)は良いもの持ってるって、やっと分かってくれたんですね!」


「・・・・・・」


話題は変わりましたが、結局追加ダメージが入ったようです。


「違う・・・・・・プルトくんの服・・・・・・」


「え?ワンちゃ・・・プルトくんのですか?」


明らさまに残念そうなルノアちゃん。ダメージが抜け切らないアルルさんは、ポツリポツリと切り出します。


「そう・・・プルトくんの服・・・プルトくんに似合うの・・・」


「プルトくんに似合うの、ですか?具体的な希望とかあります?カワイイ系とか、カッコイイ系とか。」


アルルさんじゃないのは残念ですが、プルトくんでも面白そうだと、ルノアちゃんの目付きが職人さんのものに変わりました。


「具体案はないけど、出来ればいろんな種類が欲しいの。」


「わかりました!うちは子供服も種類豊富ですから、試着用に用意しときますね!ではまた後で!」


重そうな荷物も気にせず、目を輝かせて走り去るルノアちゃん。


「散歩行こっか?」


「わっふ!」


どこか疲れたアルルさんと暢気なプルトくんの声が、誰も居なくなった道に響きます。


「火の元OK、水道OK、戸締まりOKっと。はい、プルトくん。」


家から出てきて鍵を閉めたアルルさんが、開いた手をプルトくんに向けました。


「きゅーん?」


「手を出して。」


言われた通りにプルトくんも開いた手を向けると、その手を握られました。


「こうすれば、はぐれないでしょ?」


「わふ。」


『なるほど。』と納得したプルトくんも、アルルさんの手を握り返します。


「ルノアちゃんはお店の準備もあるだろうから、服は後にして雑貨屋さんから回ろうね。」


「わふ。」


スタスタ歩く細長い影とポテポテ歩く小さな影が、村の商店街に向けて歩き始めます。


「取り敢えず必要なのは、食器と歯ブラシと椅子かな?後は絵本も必要かな?」


「わふん?」


『絵本て何?』と問うように、アルルさんを見上げるプルトくん。


「プルトくんは私の使い魔だから、私はプルトくんの言ってることが何と無くは分かるけど、他の人には違うよね?」


「わふ・・・」


「だからキミの言葉を他の人にも伝えるために、お勉強をして貰います。絵本はその為の道具かな。」


「わっふ!」


服だけでなくもっと素敵なものが貰えると聞いて、プルトくんのテンションはMAXです。ステテテテと駆け足でアルルさんを引っ張りだしました。


「ちょっとプルトくん、これ散歩じゃない!ジョギング、ジョギングになってるからー!」


朝の村道を商店街に向かって、小さな毛玉が爆走していくのでした。

出来たら今週中にもう一話更新・・・

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