道化は踊ってこそ~イジメっ子、親友と一緒に転生しました 編~
続きはありません。
私は、四方城詩音。
『四つ葉の愛をさがして』というタイトルの乙女ゲーム世界に転生しました。
私のゲームでの役割は、定番すぎる悪役お嬢様。
そして、前世でも今世でも親友なこの世界のヒロインは、十六沢千尋さん。
『四つ葉の愛をさがして』の攻略対象たちは五人。
一人目は財閥の御曹司、二人目は財閥の御曹司の親友、三人目は先生、四人目は双子の兄弟。
ちなみに、双子の兄弟は兄弟を同時攻略するルートしかありません。
ゲームでは、私は一人目の攻略対象の大北春人の婚約者でしたが、ゲーム知識を生かしてバキバキに婚約者フラグを叩き潰しました。
私にとって没落や家族に迷惑をかけるルートはありませんよ。
ただ、ただ、あの大北春人の性格が嫌いなんです。
なので、初対面で暴言を吐かれたその日に傷口に塩を塗り込むように、私は口撃を仕返したのです。
大北春人は私に言い返せないので親に泣きついたのですが、その一部始終を見ていた両親が、大北春人の両親に「婚約話をなかったことにする」と怒りの無表情になって了承させました。
両親は、大北春人が私に対してした暴言が許せる範囲を飛び越していたので、こちらにとって全く必要がない無理矢理向こうから持ちかけた婚約話を正式に断りました。
正直、四方城の方が格上なので大北との繋がりを必要としなかったというのもあります。
ヒロインの千尋さんとの出会いは、偶然、悪役お嬢様その2内東真穂にイジメられている現場を私が見つけて止めに入ったことです。
それがきっかけで千尋さんと仲良くなり、話しているうちに前世で親友同士であったことが分かりました。
ちなみに、千尋さんは攻略対象と恋愛する気はありません。
千尋さん曰く「現実で目に優しくないイケメンと恋愛はありえないわよね」と言い切っています。
確かに、あの攻略対象たちはキラキラしたエフェクトがかかっているような感じがして目に優しくない感じがします。目が悪くなりそうですね。
内東真穂は、知り合いという名の赤の他人です。
父の友人の名家で、私と同じ年の少女ということで小さい頃に会わされました。
遭って感じた印象は、「コイツとは合わねー」です。
DNAレベルで拒否反応する感じ。
積極的に仲良くしようとしてくるようですが、私の家が持つ権力が目的ですと自己主張してウザイ。
内東真穂が帰ってすぐに両親にこのことを報告し、個人的な繋がりを持たなくて済むように取り計らってもらいました。
ですが、彼女の父親が父の友人ということもあり、定期的に家に来ます。
彼女が家に来ることは避けられませんが、私はその間は千尋さんの家に遊びに行きます。
千尋さんのお母様は料理上手です。
家の方がいいものを食べてるとはいえ、前世から慣れ親しんだ庶民的料理は今食べていると感動モノです。
どうやったかは不明ですが、内東真穂は「私の前世の知り合いでしょ!何も分からない世界に二人きりでお互い不安なんだし、仲良くしましょ!」と言ってきて、彼女の前世での名前を告げてきました。
彼女は、前世で私をイジメていた主犯格です。
自分の気に入らない女子生徒・男子生徒に厳しくし、猿山の劣化ボス猿みたいな存在。
クラス内での彼女の存在が大きくて、クラス担任の先生が媚びて彼女の気に入らない女子生徒・男子生徒たちは、先生が主導してクラス全体にイジメを行うよう誘導させる、そんな子でした。
特に、彼女が気に入らない存在である私に対するイジメは一見イジメに見えないので酷かった。
まあ、それはともかく彼女と仲良くする気の全くない私は適当にあしらい、無視しました。
自分をイジメた主犯格と仲良くするなんて、お花畑脳でもなくMでない私には無理ですね。
権力とイケメンが大好きな彼女に、大北春人と接する機会をさり気に与え、私は彼女の前からフェードアウトしました。
ゲームでの内東真穂は、婚約者と従兄の二大イケメンに執着し、ヒロインに過激なイジメをする悪女。ゲーム内での私より、ヒドイ。
婚約者は、南部大輔。大北春人の親友です。
従兄は、攻略対象の先生枠内東 一。学校では、古語担当。
内東先生は、社会勉強の一環として教師をしている設定です。
本日は、方磁高校の入学式。
千尋さんの家まで車で迎えに行って、学校に向かいます。
これは、攻略対象である内東先生との遭遇フラグを叩き折る一環。
桜満開の下、学校の講堂に向かいます。
「乙女ゲームな世界で、入学式に桜が満開ってなんの捻りもないですね」
私は呆れて言いました。
「それは言わないお約束だよ、詩音。こんな日に、土砂降りの雨よりましでしょ」
「そうですね」
「詩音、私頑張る!攻略対象と恋なんてしないわ」
「メインボスの大北春人なら、多分、大丈夫ですよ。ゲーム時より、傷口を大きく広げましたから」
「前世では、実力派女優だけあるわね。相手に気付かれないように傷口を大きくするなんて」
「子どもは単純で簡単だといっても、後にスペックが高くなるかもしれない攻略対象です。気を抜かずにやり遂げて、悪魔少女の内東真穂を近づけました」
「お腹の中が真っ黒な、鬼畜な所業!」
「イケメン大好きで男に媚びることにたける彼女なら、乙女ゲームをしていなくてもきっと逆ハーレム完成をしてくれます!」
「妙な確信! でも、彼女ならできると私にも解るわ。前世では小学生の頃から、肉食系女子として活躍していたもの」
「あの顔は私の好みではなかったので当時は分からなかったのですが、今思えばあれは十分美少女の部類の顔でしたしね」
「相変わらず、興味のない物に対しては雑な言い方ね」
「どうでもいいですから。それよりも、内東真穂には道化として踊ってもらわないと」
「そうね。そうしないと、幼馴染を狩りに行けないもの」
「あの、爽やか系サッカー少年ですか」
内東真穂は、順調に攻略対象たちを狩っていきます。
女子生徒や若い女の先生の目が、内東真穂を厳しい目で見ています。
ご本人様は全く気付く様子もないのですが、良家の子女としてはありえない行動なので、家柄の良い女子生徒たちに嫌われつつあります。
「そういえば、詩音。森西双子兄弟の見分けって、なんで見分けれるのが内東さんしかいないの?」
森西双子兄弟は、チョロすぎる攻略対象です。
よくある、「どっちがどっち!?ゲーム」で見分けてくれる人に懐くという。
「私の家、『四方城』ですよね。なので、取り入ろうとした人たちには権力をちらつかせて、『双子を見分けてはいけない』って丁寧にお願いしたんですよ」
「...なるほど!」
「もちろん、内東真穂には言ってませんよ」
「そうよね。内東さんも森西双子兄弟も単純馬鹿だから、周囲の呆れに気付かずに素敵に踊っているもの。普通に考えたら、詩音がそのことをお願いしたってこの学校の誰でも分かるわ」
「そうそう、知っています? 大北春人の婚約者、内東先生の婚約者、森西双子兄弟の婚約者が、家同士で婚約解消の交渉に入ったって。ちなみに、内東先生の婚約者は女子生徒です。家公認のロリコンですね」
「詩音、大北春人との婚約はバキバキに折ったって言わなかった?」
「もちろん、相手は私じゃありませんよ」
「ふーん。家同士の目的のための婚約なのに、そんなことできるの?」
「攻略対象たちの親は解消せずに何とか続けていきたいと言っていたらしいのですが、婚約者たちの家側が攻略対象たちに愛想を尽かして解消を願い出たそうです。このまま攻略対象たちと婚約を続けていたら、家の評判を落としかねないし自分の会社の株価も評判も素敵なほど下がりますよね」
「デスヨネー。それに、そんな頭がスカスカの奴らを自分の娘の夫に相応しくないと考えるわね」
数日後、攻略対象たちの婚約がすべて破棄されたと知りました。
権力とイケメンが大好きな内東真穂さんは、学校で大きな顔をしながら攻略対象たちを侍らせて、堂々と廊下を横並びにして歩いていました。
その侍らせている中に先生まで入っているのは、現実では前代未聞。
これを見た学校の理事長が怒りのあまりブチ切れ、倒れたと聞きました。
翌日には、保護者たちだけを集めて緊急会議。
これ以上、この学校の風紀を乱さないために、『内東真穂と攻略対象たち』を退学処分にすると決定されました。
攻略対象たちの親はまだ更生の余地があるのではと反対したのですが、集められた攻略対象たちの所業の証拠写真やレポートを見て、反対できなくなりました。
その証拠を集めたのは、四方城家と攻略対象たちの元婚約者の家たちです。
大北家がまだ私との婚約話を復活させる可能性が無きにしも非ずでしたので、気合を入れて信頼筋からも集めたのですよ。
結果、攻略対象たちの両親や親族たちは、内東真穂と攻略対象たちをどこかの家に閉じ込めてそこから一生出れないようにしたそうです。
臭い物に蓋をしたという感じですね。
道化は踊ってこそといいますが、私と千尋さんが三文芝居で直接さり気に聞かせた情報に内東真穂が踊らされる様子は、馬鹿が調子に乗っているの一言で済みました。
一部の女子生徒はそれを見て、内東真穂を見るたびに笑いを堪えてました。
ちなみに、その脚本は攻略対象たちを好きでない女子生徒と男子生徒。
役者は、私と千尋さんとたまに女子生徒。
内東真穂と攻略対象たちがいなくなった方磁高校は、ごく普通の金持ちたちが通う学校に戻りつつあります。
乙女ゲーム期間が過ぎた学校は、平和だなと実感しました。
これからが、乙女ゲームのヒロインの恋愛成就のために頑張るスタートです。
【四方城詩音】
前世は、内東真穂にイジメられていた。
けれど、彼女のことはどうでもよかったのでイジメられたことを気にしていない。
興味のない物には、無関心。
十六沢千尋が、大好き(LOVEではない)。
【十六沢千尋】
前世では、変幻自在の声を持つ実力派声優。
内東真穂に聞かせる三文芝居は、彼女が声を変化させているのでわざと聞かせているなんて気付かれなかった。
実は、ハイスペックすぎる少女。
【内東真穂】
前世で詩音をイジメていた理由は、自分が努力しても人気者の千尋の友人になれなかったことへの嫉妬。
イケメン限定で媚びるのは、死んでも治らなかった。
詩音の前世がどういう人物かなのは気付かなかったが、野生の感で自分の前世の知り合いだと察する。
仲良くなって詩音の家の持つ権力を使おうとしたが、見破られて無視される結果に。
【大北春人】
詩音に一目惚れしたが、照れて暴言を吐いてしまい婚約ならず。
その後も、大北父が四方城に接触し婚約を再び図ろうとするが春人が詩音に吐いた暴言が詩音の両親の怒りに触れているので、周りからも圧力をかけられ諦める結果に。
内東真穂に惚れたのは、詩音と千尋と仲間たちがもたらす情報に内東真穂が想定以上に都合よく踊らされたことによるもの。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。




