どうやら俺はバカらしい。
ゆずとの遭難事件から約1ヶ月がたった。
つまり、今は夏休み真っ只中だ。
期末試験も突破し、俺たちは無事に夏休みを満喫していた。
そんな俺たちが今何処にいるかというと、
「あっつ」
「まぁ、沖縄だもんね〜。」
そう、俺たちは沖縄に来ていた。
何故かといと…
生徒会の慰安旅行らしい。
神奈曰く、この高校の創設者から、生徒会宛にお金が振り込まれるとか…
それで使わないのは勿体無いので、こうして旅行に充てられている、という訳だ。
この旅行は2泊3日という日程が組まれている。
ここで、しっかりと生徒会メンバーを紹介しておこう。
会長は言わずもなが、一条神奈
副会長は、俺こと三島一輝
書記は、湯浅慎司先輩。神奈と同じ3年生だ。
会計は、女の人で、伊原凛ちゃん。1年生だ。
ちなみに、この慎司先輩と凛ちゃんは付き合っているらしい。
庶務は、さくら、ヒイロ、ゆずの3人だそうだ。
今まで、庶務という役職は無かったらしいのだが、俺を勧誘する際に、さくらたちの反発を予想した神奈が新たに作ったらしい。
今は、沖縄に着いたばかりで、部屋割りを決めていた。
部屋は2部屋あるらしく、俺と慎司先輩は最初、普通に男女で分かれると思っていたのだが、女性陣から強い反発があった。
そして、凛ちゃんが慎司先輩と一緒の部屋がいいと言い張り、そう言われて慎司先輩もそっち側になびいてしまった。
つまり、俺は、神奈、さくら、ヒイロ、ゆずと一緒に寝ることになってしまったわけだ。
本音を言えば、俺も健全な男子高校生なので、美少女たちと寝れるというのは、とても嬉しいのだが、さすがに建前があるので、それは言えない。
神奈たちは今、寝る場所を決めているらしい。
横1列に並ぶようで、俺は強制的に真ん中にされてしまった。
壮絶ジャンケンの結果、1日目は
神奈、ヒイロ、俺、さくら、ゆずの順に
2日目は、
ヒイロ、ゆず、俺、神奈、さくらという順になった。
俺たちは部屋で水着に着替えた後(もちろんここは男女でわけた。)、海に来ていた。
神奈は黒地に白の斑点、さくらは名前と同じ色のピンク色のビキニ、ヒイロは真っ赤なビキニだ。ゆずはスク水だった。凛ちゃんは白いワンピースタイプの水着だ。
生徒会の女性陣は美少女揃いなので、周りの視線を思いっきり集めていた。
さくらは恥ずかしがっていたが、他のメンバーは全く気にしていなかった。
余談だが、慎司先輩は凛ちゃんが思いっきり見られると気づくやいなや、物凄く周りに殺気を振り撒いていた。
「あの、慎司先輩?」
「どうしました?三島君。僕は今凛に色目を使った腐れ野郎共を処理する方法を考えるのに忙しいんです。用があるなら手短に済ませて下さいね。」
「い、いえ…なんでもありません。すみませんでした。」
そう言って俺は慎司先輩から逃げたした。
怖かった、果てしなく怖かった。
なにが怖いって、あの目だ。アレは大量虐殺してるに違いない。
「これは、ヤバイな。」
「イッちゃん、なにが、ヤバイの?」
「なにって、そりゃあ…」
そう振り向いた俺は…
「あぁ、もう死んでもいい。」
楽園を見た。
「えぇ⁉ダメだよイッちゃん!死なないで‼」
「そうだよ、一輝君。私はきみに死なれては困る。だから死なないでくれ。」
「そうだぞイツキ!死ぬな!」
「お兄ちゃん…死なないで。」
軽い冗談のつもりだったんだが、かなり真剣に返されてしまった。
これは、反省しないとな。
「あ、ああ悪い。それより、どうしてみんなはここに?」
「一輝君を呼びに来たんだよ。湯浅君や凛さんは先に海に入っているそうだ。」
「そうですか。わざわざすみません。」
「いや、構わないさ。それより、行こうか。」
「そうだな…っと、みんなは先に行っててくれ。俺は飲み物を買ってくるよ。」
「それなら、アタシも一緒に行くよ。」
こうして、俺とヒイロは飲み物を買いに行った。
俺とヒイロが飲み物を買ってみんなの所に戻っている途中、目の前に3人の男が現れた。
「ゲヘヘヘヘ、兄ちゃんイイ女連れてるな。ちょっと貸してくんねーか。」
「グヘヘヘヘ、姉ちゃん、怖がらなくてもいいぜ。ちょっと俺たちと楽しいことしようぜ。」
「グ腐腐腐腐、兄ちゃんは俺と向こうの茂みにイかないか?」
名前はどうでもいいので、上からモブD、E、Fとしよう。
そして俺は、モブFの発言に引っかかった。
それはモブEも同じなようで…
「え…お前ってゲイだったの?」
「あぁ、実はそうなんだ。」
そこに、
「実は、俺もゲイなんだ。今まで隠しててごめん。」
モブDも加わった。
「あとな、もう一つ隠してたことがあるんだが…俺はモブDとFとヤリたい‼」
その衝撃発言に、
「じ、実は俺もそう思ってた。お前らとヤリたいって…でも、こんなこと言ったらお前らとは一緒に居られなくなるって言えなかったんだ。」
モブFも加わった。
「モブF、モブD…そんな大胆な告白されたら断れねーじゃねーかよ。」
「モブE…そ、それってつまり…。」
「あぁ、ヤろうぜ‼」
そう言って、モブD、E、Fは去っていった。
去り際に
「兄ちゃんも興味があったら、向こうの茂みに来な。歓迎するぜ。」
と、言われたが、行くことはないだろう。
そして、数分後にアーーーーッ♂という声が聞こえたが、これはまた別のお話し。
色々アクシデント(あの人たちには末長く、幸せになって欲しいとおもいます、まる。)があったが、俺はヒイロに戻ろうかと声をかけようと、ヒイロの方を向くと、
「うっ…えっぐ、グスッ…」
泣いていた。
「ど、どうしたんだ⁉ヒイロ」
「グスッ…済まない、大丈夫だ。ちょっとあの人たちの会話に感動しちゃって。あの人たちには幸せになって欲しいなあ。」
「そ、そうだな…。」
ヒイロがこんなにも感性豊かだったとは…
俺は、ヒイロが泣き止むまで待ち、今度こそみんなの所に戻ることにした。
「お兄ちゃん、遅かったね。何かあったの?」
「あぁ、ちょっとね…。それより、ゆず、待っててくれたのか?」
「うん。」
「そうか、ありがとな。それじゃ、みんなの所に行こうか。」
俺たちは飲み物を置いて、さくらたちの所に向かった。
「おーい、みんな、お待たせ。」
「あ、イッちゃん。おかえりー。」
「よし、それじゃ一輝君たちも揃ったことだし、チーム決めをしようか。」
「チーム決め?何かするのか?」
「うん。今からビーチバレーをしようと思ってね。そのチーム決めだよ。」
「あれ?でも1人余らないか?」
そうなのだ。7人で来ており、チーム分けをすると、1人余ってしまうのだ。
「まぁ、そこはジャンケンで決めるしかないんじゃないかな。さて、じゃあ始めようか。」
そう声をかける神奈に従って、俺たちはジャンケンをした。
俺・神奈チーム
さくら・ヒイロチーム
慎司先輩・凛ちゃんチーム
ゆずは審判
となった。
ゲームは15点先取となり対戦順を決めることになった。
対戦順はさくら・ヒイロチームがシードとなり、まずは俺・神奈ちゃんVS慎司先輩・凛ちゃんチームとなった。
「さて、一輝君。やるからには勝ちに行こう。」
「そうだな、神奈。頑張ろうな。」
「私たちの愛の強さを見せ付けてやるんだから‼」
「そうですね。僕たちが揃えば無敵です。頑張りましょう。」
まず、先攻は俺たちとなり、サーブは神奈が打つことになった。
「はぁっ‼」
神奈の気合いの入ったかけ声とともに打ち出されたサーブは凄い速度で相手のコートに吸い込まれていった。
「ふふ、まずは1点だ。」
「くっ…まだまだこれからだよ。」
神奈の2本目のサーブが打たれた。
これまた凄いスピードで飛んでいき、また点が決まるかと思いきや、凛ちゃんが滑り込みでレシーブし、それを慎司先輩がアタックした。
そのボールは俺と神奈の間で落ち、相手チームに1点が入った。
「ふふん、どうだ!」
「ふふ、なかなかやるじゃないか。だが、まだ同点だよ。」
俺は他のメンバーの圧倒さに驚かされながらも、自分も神奈の足手まといにならないように、懸命に頑張った。
そんなこんなで、試合は進み…辛くも俺たちが試合に勝った。
「やったな、一輝君。」
「あぁ、次も勝てるように頑張ろうな。」
こうして、意気込んだ俺たちだったが、さくら・ヒイロチームとの対戦では、負けてしまった。
ヒイロが異常に強かった。
それはもう、強かった。
その後も俺たちは遊びに遊び、気づけば夕方になっていた。
神奈の帰ろうかという号令で俺たちは帰ろうとしたのだが、さくらの姿が見えなかったので、神奈たちには先に戻ってもらって、俺はさくらを探すことにした。
幸い、さくらは、ビーチにいたので、すぐに見つかった。
だが、俺はこの時、違和感を覚えた。
何と断言出来るものではないが、なんとなく、さくらが何かを決意したような、そんな感じだ。
そんな、俺の疑問はすぐに解消されることになる。
俺が、さくらに声をかけようと、近づくと、さくらが突然
「イッちゃん。私、イッちゃんのこと好きだよ。」
と、言ったのだ。
俺は突然のことに理解が追いつかない。
だが、尚もさくらの言葉は続く。
「私ね、気づいたの。私はイッちゃんが好き。他のみんなもイッちゃんが好き。でも、イッちゃんは1人しかいない。イッちゃんが他の人に盗られるのは嫌だ。だったら、どうする?答えは簡単だよ。イッちゃんを自分のものにしてしまえばいい。変かな?変じゃないよね。イッちゃんは私のことを誰よりも理解してるし、私もイッちゃんのことを誰よりも理解してる。だったら、イッちゃんが私のモノになるのは、当たり前だよね?うん、当たり前だよ。これでも私、我慢したんだよ?イッちゃんが他の人に笑顔を向けるのを我慢して見てた。イッちゃんが他のヤツに優しくするのを堪えてた。だって、イッちゃんは優しいもんね。そんな優しいイッちゃんだからこそ私は好きになったんだもん。けど、もう、我慢の限界なんだ。他のヤツに笑顔を向けることや、優しくして欲しくない。イッちゃんは私だけを見てればいいの。私だけに笑顔を向けて、私だけに優しくすればいいの。でも、そんなの出来るわけないよね。イッちゃんはみんなに優しいんだから。だからね、私、決めたの。アイツらを全員殺そうと思うんだ。そしたら、万事解決だよね。イッちゃんは他のヤツに優しくする必要もないし、私だけを、見れる。あぁ、そうだ。イッちゃん。コクハクノヘンジヲキカセテ?」
俺は、怖かった。
もし、断ったら自分が死んでしまうんじゃないかと思えるほどの恐怖だった。
だから俺は
「あぁ、分かったよ。付き合おう、さくら。」
頷いてしまった。
さくらの告白を受け入れてしまった。
「ただし、さくら。他の人を殺さないでくれ。殺す必要はないんだから。」
「ドウシテ?」
「俺はお前の彼氏になるんだ。お前以外に優しくするわけないだろ?」
最初は不思議そうだったさくらも、次第に俺の言葉を理解したのか、嬉しそうな表情になっていった。
「アハハ、ソッカ、ソウダヨネ。うん、イッちゃんは私の彼氏だもんね。わかったよイッちゃん。他の人は殺さないでおくよ。」
こうして、俺とさくらは付き合うことになった。
みんなに報告したときは、驚いていた人や泣いていた人もいたが、俺に、気にかけることは許されなかった。このとき、俺の心は破裂しそうなほど、痛かった。
これからも、俺はこの痛みに悩まされることだろう。
さくらといる限り、俺に心の休まる時間などないのだから。
そして、さくらの変化に気づけなかった俺はバカなのかもしれないな。
ここまで読んでくださってありがとうございます。
ホントはもう少し続ける予定なのでしたが、私の知人の方に「設定が甘い」「ストーリーが面白くない」「内容が薄い」とのアドバイスを受けまして、急遽、完結させることにいたしました。
ですが、次回作も書く予定です。
今度は設定をきっちり固めた上で、ストーリー作りに入りたいと思います。
ですので、どうか読んで頂けると嬉しいです。
小海アキト




