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どうやら俺は山で遭難するらしい。


俺たちは今日、遠足だ。


俺たちの通っている高校では、例年、6月の下旬に遠足が行われるのだ。


しかし、だいたい80%の確率でその日は晴れているらしく、今年も無事に快晴であった。


良い機会なので、俺たちの通っている高校を紹介しよう。


俺たちの通っている高校は、凪春(ナギハル)高校という名前だ。この高校、創設者の方(今も生きている)が、凄いお金持ちらしく、生徒会や各部活、また授業の設備を常に最新に保つ為に、莫大な寄付金をしているとかいないとか…


そんな莫大な寄付金をもらっているのに、凪春(ナギハル)高校の行事は普通の高校と同じレベルで開催されている。


「お兄ちゃん、なにぼーっとしてるの?早く行こ?」


「ああ、悪いゆず。そうだな、行こうか。」


っと、そうだな。せっかくの遠足なんだし、テンション上げていこうか。


そうして、俺はゆずの後を追いかけていった。


「もう、イッちゃん何処に行ってたの?」


「そうだぞイツキ、アタシたちと同じ班なんだから一緒にいないとダメだろ!!」


「悪い悪い、さて、集合場所に行こうか。」


集合場所では、既に多くの生徒が集まっており、俺たちは急いで列に並んだ。


注意事項では、安全に気を付けろとか、そんなことを言っており、校長が


「それでは、出発してください。」


と言い、俺たちの遠足は始まった。


「ゆずは体力ないんだから、イツキと一緒に登ってきなよ。」


「うん、そうする。」


ヒイロの一言で俺はゆずと一緒に登ることになった。


「ゆず、今回のコースはなんだっけ?」


「今回は山の頂上まで行って、降りてくるんだよ。」


「そうか。ゆず、ツラくなったらいうんだよ。」


「なにが?」


「体力だよ。ゆずは体力少ないんだからあまり無理はするなよ?」


「うん、ありがとお兄ちゃん。ツラくなったらお兄ちゃんに頼ってもいいかな?」


「ああ、もちろんだよ。ゆずは俺の大切な友達だからな。」


「た、大切…////」


「お兄ちゃん、もう少しゆっくり歩いてもいい?」


「そうだな。時間もあるしゆっくり行こうか。先生にはさくら達が説明してくれるだろ。」


「うん。あとさ、お兄ちゃん。手を繋いでもいいかな…?」


「いいけど…どうしてだ?」


「えっと…特に理由はないんだけど、ダメかな?」


「まさか、そんな訳ないさ。いいよ、繋ごうか。」


「うん…////」


俺とゆずは、手を繋いでさくらとヒイロの後を追うのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーー


その頃さくらとヒイロは山の中腹辺りまで来ていた。


「ねぇ、ヒイロちゃん。本当に良かったの?」


「ん?なにが?」


「だから、ゆずちゃんとイッちゃんを2人きりにして良かったの?」


「あぁ、いいんだよ。ゆずはあまりイツキと一緒に甘えることをしないからね。」


「そっか、そうだね。」


そう言ってさくらは微笑んだ。


ーーーーーーーーーーーーーーー


さくらたちが自分たちのことを話しているとは露ほども思っていない一輝(イツキ)たちはその頃…


「どこだ?此処。」


「分かんない。迷っちゃったね。」


「迷っちゃったねって…冷静だなゆずは。」


「そーでもない。でも、そう見えるのはお兄ちゃんのおかげ。」


「そ、そうか。」


迷っていた。もう、他に言い訳のしようがないくらい迷っていた。


さて、どうしようか。こんな山の中じゃ携帯も繋がらないだろうし…


「お兄ちゃん、とりあえず急いで上に登らない?」


「そうだな…上に行けば誰かいるかもしれないしな。」


そう思い、俺たちは上を目指すことにした。


このとき俺たちは間違っていたんだ。俺たちは上を目指すんじゃなく、下に降りるべきだったと…


ーーーーーーーーーーーーーーー


さくらたちは、今、頂上にいた。


昼休憩が始まった辺りに着いて、一輝(イツキ)たちは遅れる旨を伝えたあと、一輝(イツキ)と一緒に昼食を摂りたかった彼女たちは待つことにした。


「イッちゃんたち、遅いね〜。」


「しょうがないでしょ、ゆずは体力が無いんだから。」


「けど、このままじゃ昼休憩が終わっちゃうよ?」


「う〜ん、そうね。イツキたちには悪いけど、先に食べちゃいましょうか。」


「そうだね。イッちゃんたちと食べたかったけど、帰りも歩くんだもんね。」


そうして、さくらたちはご飯を食べることにした。


ーーーーーーーーーーーーーーー


「腹減ったなぁ。」


「そうだね。お兄ちゃん、そろそろお昼にしない?」


「そうしよっか。腹が減ってはなんとやら、ここら辺で一旦休憩しようか。」


俺たちは、昼食を摂ることにした。


「ゆず、これからまた歩くんだからしっかり食べとくんだぞ。」


「うん、分かったよお兄ちゃん。」


さて、俺も食べとかないとな。


俺たちは飯を食べた後にまた登り始めた。


そして、1時間くらいたった頃、


「……。」


「……。」


俺たちは黙々と歩いていたのだが、


「…ッ⁉」


ゆずが突然うめき声をあげた。


「どうしたんだ?」


「う、ううん。なんでもないよお兄ちゃん。」


ゆずはそう言うが、見るからに顔は辛そうで、我慢をしているのは有り有りと見てとれた。


「そんな辛そうな顔しといてその言葉を信じられるわけないだろ?」


「うっ…」


「ほら、遠慮なんてしなくていいから。どうしたんだ?」


ゆずは渋々といった様子で告白した。


「あのね、えっと…足、挫いちゃった。」


どうやら、捻挫をしてしまったらしい。


俺はゆずに背中を向けてかがんだ。


「どうしたの?お兄ちゃん。」


「ほら、乗れよ。」


「でも…。」


「辛いんだろ?それに、辛いなら頼っていいって言ったろ?」


「うん…ありがと、お兄ちゃん。」


そう言ってゆずはおずおずと俺の背中に乗って来た。


「さてと、早く皆を見つけないとな。」


ーーーーーーーーーーーーーーー


その頃、さくらたちは…


「先生‼私たちも行かせてください!!」


「ダメだ。先生たちが責任もって探しだすから、お前たちは引率の先生に従って、下山してなさい。」


「でも、イッちゃんたちが‼」


「ダメと言ったらダメだ。お前たちまで遭難したらどうする。」


そう言われては何も言い返すことは出来ず、さくらたちは大人しく下山していった。」


ーーーーーーーーーーーーーーー


「ゆず、大丈夫か?」


「うん、わたしは大丈夫だけど…お兄ちゃんの方が大丈夫?」


「あぁ、俺の方は大丈夫だ。しっかし、暗くなってきたな。」


そう、今がいくら初夏だといってもここは山の中なのだ。


そして、山の中の天気は変わりやすいというのは、周知の事実だ。


つまり、何が言いたいかというと、空が雲で覆われて暗くなってきてるのだ。しかも、雨まで降ってきそうな雰囲気である。


雨まで降ってくると人を見つけるのは困難になってくる。


それはゆずも分かっているのだろう。


「お兄ちゃん…。」


俺をそう呼ぶ声には若干の焦りが感じられた。


「大丈夫だ、ゆず。俺がなんとかするから。」


これがただの虚勢であることは、ゆずも分かっているだろうが、少し安心したように思えた。


すると、何処からか俺たちを呼ぶ声が聞こえた。


最初は俺たちも何かの間違いかと思ったが、次第に大きくなり何回も聞こえてきたことから、誰かが探しに来てくれたんだと、理解した。


人間とは現金なもので、助けだと分かるやいなや、俺たちの焦りや不安は吹き飛ぶわけで、俺たちは力いっぱい叫んだ。


「おーーい!!俺たちはここだーー!!」


「ここだよーー‼」


珍しくあまり大声を出すことの少ないゆずまでが叫んでいた。


こっちよ声に気づいたのか、ライトが何度か俺たちの周りを往復したあと、遂に俺たちを照らした。


「おーい‼いたぞー‼」


この声を切り口に色んな声が聞こえてきた。


俺たちが居たところはどうやら帰りのルートの近くらしかった。


バスに戻った俺たちはさくらに泣きつかれ、ヒイロにかなり怒られた。


ゆずも無事に帰ってこれて安心しているのだろう。珍しく大泣きしていた。


それからは、特に問題も起こらず、無事に帰宅できた。


帰り道でゆずと別れる際、ゆずに


「ありがとう、お兄ちゃん。カッコよかったよ。」


そう言われて、俺はなんというか、もどかしい気持ちになった。

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