どうやら俺はヒイロとデートをするらしい。
生徒会に入って約1ヶ月。そろそろ生徒会の仕事に慣れてきた頃、俺とヒイロは出掛けていた。
季節は梅雨真っ只中の筈だが、今日は運良く快晴だった。
今日は神奈から生徒会で使う備品を買って来て欲しいと頼まれた。
当初は神奈と一緒にくる予定だだたのだが、急に予定が入ったらしくヒイロと一緒に出かけることになった。
一緒に出かけるのがヒイロと決まったとき、ヒイロが
「イツキ、今度のデート、楽しみにしてるね。」
俺は普通に買い物だけのつもりだったのだが、ヒイロによればデートらしい。
デートとなれば、さすがに俺もおしゃれをするわけで、今日の格好はいつもより気合いを入れていた。
そんな考えごとをしていると約束の時間になり、ちょうどヒイロが現れた。
「おはようイツキ、待った?」
「おはようヒイロ。そうだな…10分くらい待ったよ。」
「そこは嘘でも待ってないって言いなさいよ。」
「あはは、ごめんごめん。それじゃ、行こうか。」
そう言って歩きだそうとした俺の手をヒイロが掴んだ。
「ちょっと待ちなさいよ。まさか、それだけじゃないでしょうね?」
そう言ってヒイロはジト目で俺のことを睨んできた。
そう言われれば気づかない訳もなく、俺は
「あぁ、うん。とても似合ってるよ。可愛いね。」
「ふん、気づくのが遅いのよ。でも…ありがと。」
そう言って照れるヒイロに、不覚にも俺はドキリとしてしまった。
「よ、よし。じゃあヒイロ、行こうか。」
「そ、そうね。行きましょうか。」
こうして、お互いが照れているという状態で、俺たちのデートは始まった。
忘れてはならないのは、俺たちの当初の目的は生徒会の備品を買うということ。そのうえで、ヒイロとデートをするというミッションが発生しているわけだ。
そのため、俺たちの目的地は必然、1つに絞られる。
そう、俺たちはデパートに行くことにした。
実はこのデパート、ここ近辺で1番大きなデパートである。
そのため、基本はなんでも揃っており、毎日のようにカップルや家族連れの方たちが来ている。
しかも、今日は週末のため、人の比は平日の倍にも及んでいる。
そんな人の多さに俺がげっそりとしていると、不意に左手に柔らかいものが触れた。
ビックリして隣をみると、なんとヒイロが俺の左手を握っていた。しかもよく見ると、いわゆる恋人つなぎだった。
目でヒイロにどうしてか尋ねると、
「だって、人ごみではぐれたら探すのが面倒じゃない。それとも、アタシと手を繋ぐの嫌なの?」
と、若干目を潤ませながら言われてしまった。
そんなことを言われては断れる訳もなく、ヒイロと手を繋ぎながらデパートをまわることにした。
「さて、ヒイロ。最初はどこに行こうか。」
「そうね…とりあえず、ちゃっちゃと生徒会の備品を買ってしまいましょうか。」
「うん、そうだな。それじゃ、文房具屋に行こうか。」
こうして、備品を買い終えた俺たちは、ヒイロの要望でペットショップに来ていた。
「うわぁ〜、かわいい〜‼ね、イツキもそう思うでしょ!」
「ア、アハハハハー、ソウダネ、カワイイネ。」
「どうしたの?なんか喋り方変じゃない?」
「イ、イヤ、キニシナイデクレ。」
ヒイロは若干不思議そうにしながらも動物たちの可愛さに負けて、また、愛で始めた。
なぜ俺がここまできこちないかと言うと…
実は俺、猫が大の苦手なのだ。
小さい頃に爪で引っ掻かれて以降、猫が苦手になってしまった。
ヒイロは俺が素直に楽しめて無いことを感じたのか、はたまた動物を愛でるのに満足したかは分からないが、もう行こうと言ってくれたので、俺たちはペットショップを後にした。
「イツキ、次はどこに行きましょうか。」
そう言って、楽しそうに笑うヒイロを見ていると、こっちまで楽しくなって来て、遊びたくなるのだが…
「そうだな…とりあえず、飯にしないか?」
時刻は1時。飯時には少し遅い時間だ。
そのため、待つことなく俺たちはデパート内にあるファミレスに入った。
ヒイロはオムライス、俺はハンバーグをそれぞれ注文し、俺たちはドリンクバーで飲み物をとってきた。
俺は午後からもヒイロに合わせる予定だったので、ヒイロに行きたい所は無いか尋ねることにした。
「よし、ヒイロ。午後の予定を決めてしまおうか。どこか行きたいところはあるか?」
「そうね…私はいいから次はイツキの行きたい所にしましょう。」
こう返されてしまっては、俺もしっかり考えなきゃな。
「う〜ん、じゃあ、デートっぽく映画ってのはどうだろう?」
と、俺が提案すると
「そうね、そうしましょうか。デ、デートっぽいものね////」
ヒイロも賛成の様子で午後からの予定は映画に決まった。
キリがよく料理が運ばれて来たので、俺たちは軽く雑談しながら食事をした。
食事を終えた俺たちは映画館にいるわけだが…
「さぁイツキ、行きましょう。」
「まてまてヒイロ、本当に行くのか?」
「もう、いつまで待たせるの?さっさと行くわよ。」
ヒイロのかなり強い要望で恋愛映画を見ることになったのだ。
しかし、いつまでも待たせる訳にもいかなかったので、俺はヒイロを追いかけていった。
「…////」
「…////」
気まずい。とても気まずい。
なぜこんな気まずい状況に陥ってしまったかというと、あの映画の内容に問題があった。
あの映画は恋愛映画なので、もちろんラブシーンはある。そこまではいい。しかし、そのラブシーンが他に比べて情熱的だったのだ。(5倍くらい)
そんなアダルティな雰囲気にやられた俺たちは、こんな気まずい状況に陥っていた。
時刻は午後6時。帰るには少し早い時間だが、こんな状況ではまともにデートを続けることは出来ないと思った俺は、ヒイロに帰ることを提案した。
ヒイロもそれに賛成し、俺たちは帰ることにした。
ヒイロの家との別れ道、俺はヒイロを呼び止めた。
「ヒイロ、少しいいか?」
「イ、イツキ?どうしたの?」
ヒイロは照れている様子だったが、これは俺にとって大事なことだったので、気にしないことにした。
「はい、ヒイロ。」
そう言って、俺はヒイロに小包みを手渡した。
「これは?」
「開けてみれば分かるよ。」
ヒイロは言われたままに小包みを開け、中に入っている物を取り出した。
「これ…ネックレス?」
「あぁ、そうだよ。今日の記念になればと思って買っておいたんだ。」
そう、俺がヒイロに渡したのはネックレス。しかも、ヒイロの名前と同じ色を持つヒボケの花をモチーフにしたネックレスだ。
ヒイロもこのことに気付いたらしく、照れた、でもとても嬉しそうな笑顔を浮かべてくれた。
その後、俺たちはそれぞれ帰宅した。
俺が寝る前に携帯を開いて見ると、ヒイロからのメールがあった。
内容は
『デート楽しかったわ。それに、プレゼントもありがとう。一生大事にするから。』
という文とともに、ネックレスを付けたヒイロの写真が添えられていた。