どうやら俺たち(雅樹以外)は生徒会に入るらしい。
翌日、俺は雅樹とさくらと一緒に登校していると、後ろから俺を呼ぶ声が聞こえた。
「お〜い、一輝君、少し待ってくれ〜。」
俺のことを『一輝君』と呼ぶのは今のところ1人しかいないわけで、後ろにいたのは当然…
「やあ、一輝君、おはよう。」
神奈だった。
「やあ、おはよう、神奈。」
俺がそうあいさつを返した瞬間
「なっ!?一輝生徒会長と知り合いだったのか!?それに神奈ってどういうことだよ!?」
「イッちゃん!?生徒会長さんと知り合いだったの!?そ、それにか、神奈って…」
両隣から同じ内容の言葉が大音量で聞こえた。
「だぁ!!うっさい、お前ら!」
「ご、ごめんねイッちゃん。でもでも、生徒会長さんのことを名前で呼んでるわけを説明してほしいな。」
「そーだぞ一輝‼お前には俺という男がいる「いねぇよ!!」」
「そ、そんな。それは本当なのか?一輝君。」
「そんな訳ないだろ⁉それに、どうして神奈が寂しそうな顔をしてんだ?」
「そ、それは…だな////」
「そんなことよりイッちゃん!!」
「は、はい‼」
「生徒会長さんのことを名前で呼んでるわけ…説明してくれるよね?」
さくらが、何故かかなりご立腹の様子で尋ねてきた。
べつに言わない理由はなかったので、俺は歩きながら、さくらに昨日のことを説明した。
「へぇ〜、そんなことがあったんだ。」
「あぁ、分かってくれて嬉しいよ。それで、どうして神奈がここに?」
「いやなに、家が近くにあることが分かったからな。一緒に登校しようと思ったんだが…迷惑だったか?」
「いや、そんなことはないよ。神奈も一緒に行こうか。」
「ああ。…っと、そうだ。キミたち2人に自己紹介してなかったね。」
そう言って、神奈はさくらと雅樹に自己紹介を始めた。
「私は一条神奈だ。キミたちの高校の生徒会長をしている。よろしくな。それと、負けないからな?」
「は、はい。私は藍染さくらです。よろしくお願いします。私だって負けません!」
「俺は藤田雅樹です。よろしく。俺だって負けねぇぞ!」
なんか最後の言葉は不明だったが、3人ともあいさつが済んだようなので、俺たちは4人で登校することにした。
学校に到着して、神奈は階が違うので別れようとしたとき、いきなり…
「今日の放課後、生徒会室に来てくれ。話したいことがある。」
と、俺だけに聞こえる声で言われた。
その時、胸がチクリと痛んだが、何故だか分からない俺はその痛みを無視することにした。
神奈は何故俺だけを呼んだのかという疑問はあったが、分からないことは仕方がないので、俺は(今回は)授業を受けることにした。
そして放課後、一緒に帰ろうというさくらやヒイロ、ゆずに断りを入れつつ生徒会室に来ていた。
俺は無駄に重厚な作りのドアを開け、中に入ると…
「やぁ、一輝君、待ってたよ。」
神奈が何か無駄に高そうな椅子に座っていた。
それだけでなく、床には手入れが大変そうなカーペット、机は校長室にあるようなデカイ机がおかれていた。
まだ名前も出てきてないのに、無駄なスペックを誇る我が校に驚きつつ、俺は勧められた椅子に腰掛けた。
「それで、神奈、どうして俺をここに呼びだしたんだ?」
「あぁ、そのことなんだが…その前に」
そう言いつつ神奈は扉の前に行き、
「盗み聞きは感心しないな。」
と、言いながら扉を開けた。すると…
「な、さくら⁉それにヒイロやゆずまで⁉」
そこには、さくら、ヒイロ、ゆずの3人がいたのだ。
「どうしてお前たちがここに?」
「そりゃ、イツキが私たちの誘いを断って生徒会室なんかに向かうからよ。」
そう言ったヒイロと同調して頷く2人に神奈は嘆息しつつ
「はぁ、まあいい。人手は多いに越したことはないからな。」
そう言って席に戻っていった。
「さて、話を再開する前に自己紹介を済ませてしまおうか。私は一条神奈だ。生徒会長をしている。」
「アタシは明智ヒイロよ。渡さないから。」
「山城ゆず。…お兄ちゃんは渡さない。」
この2人も最後に訳の分からない言葉を発して、自己紹介を済ませた。
神奈は、自己紹介を済ませた後、姿勢を正し、俺たちを一回見回してから話を始めた。
「さて、やっと本題に入るわけだが、三島一輝君、キミをここに呼んだのは、キミを生徒会副会長に任命しようと思ったからだ。」
俺はこの時、あまりの唐突さに声も出なかっただろう。そして、大層アホな顔をしていたと思う。
だが、俺の代わりに
「ダ、ダメだよ。絶対ダメ!!」
「そーだぞ!!イツキは渡すもんか!」
「お兄ちゃんは渡さない。」
この3人が反応を示してくれたおかげで俺のアホヅラは目立たなかっただろう。
この3人の猛反対に対し、神奈は冷静沈着な様子で
「まぁ、そうなるだろうな。だから、キミたちにもメリットとを提示しようと思う。」
「メリット?」
そう反応したヒイロに対し神奈は
「そう、メリットだ。キミたちも生徒会メンバーに任命する。これがメリットだ。」
「それのどこがメリットなのよ?」
このヒイロの問いには俺も賛成だ。意味が分からない。
ただ、他の2人は分かった様子で
「なるほど、そういうことでしたら。私も生徒会に入ります。」
「わたしも入る。」
そう、さくらとゆずは言った。
ヒイロは今だにわかっていない様子だったが、さくらとゆずが賛成したのを見て、ホントにメリットがあると理解したらしく、(俺にはさっぱり分からないが)賛成した。
こうして、俺の意思確認はないまま話は進み、俺たちの生徒会入りは決定した。
その後、仕事は明日からとのことなので、俺たちは5人で下校した。