どうやら俺は生徒会長にパフェを奢られるらしい。
キーンコーンカーンコーン
なんの面白味もないチャイムと同時に今日の学校は終了した。
まぁ、俺がやったのは睡眠ー飯ー睡眠の3行程だけなのだが、(余談だが、雅樹は今日一日中起きなかった。)学校というのは、来るだけで疲れる場所である。
「帰ってチョコパフェ食べたい。」
そんなことをボヤきつつ、俺は帰ることにした。(いつもはさくらと一緒なのだが、今日は用事があるらしく、珍しく俺1人で帰ることになった。)
家から学校までは、徒歩で15分という短くも長くもない距離であるが、学校という名の地獄(※これは作者の個人的な思想ですので、学校が好きという方、また、ご不快に思われた方には深くお詫び申しあげます。)でHPを削られた俺には、15分はとても長く感じた。
それでも、残り5分という所まで来た俺は唐突に自分は今日、運勢最悪なのでは?と思った。
道のど真ん中にいつの時代だよという感じの不良が3人、女の子を取り囲んでいたのである。
いつもなら無視して通り過ぎるのだが、今は一刻も早くチョコパフェが食べたいこと、そして、絡まれているのが女の子であると言うことから、俺はこのモブA、B、Cを排除することにした。
先ず、モブBを金的で沈め、モブBをモブAに投げつつモブCを蹴り倒した。
「あと、1人…」
ここで殴り倒すのは簡単だが、体力を消費したく無かった俺は、交渉を試みることにした。
「なぁ、お前」
「は、はいっ!?」
モブAの声が硬い。緊張しているのだろうか?
まぁ、いい。そんなことより説得を続けねばな。
「お前、ここで帰ってくれんか?ここでお前を殴り倒してもいいんだが、そんなことをしては後処理が面倒だ。だから、ここでソイツらを連れて帰ってくれりゃ助かるのだが、どうだろう?」
「は、はいっ‼そうします‼」
そう言って、モブAはBとCを担ぎ上げ帰っていった。
「あいつ、スゲー腕力だな。」
人を2人担いで走るのは相当鍛えてなければ出来ないハズだが…まぁ、どうでもいいか。
早く帰りたかった俺は、多少、時間がかかってしまったことを悔やんだが、人を助けたと思えばやりきれなくもないと思い直し、帰「なぁキミ、ちょっと待とうか。」ろうとした。
俺は神様を呪った。
べつに、この女の子に声をかけられたからではない。知らない女の子であれば、自分は急いでると言えばいいわけだしな。
だが、今回は声の主が俺に神様を呪わせた。
「なぁ、キミのその制服、ウチの高校のだよな。そんなキミが、生徒会長である私の前で喧嘩をした弁明でも聞こうか?」
そう、彼女は生徒会長だったのだ。
彼女、一条神奈は生徒会長である。とてつもなく怖い。(らしい。)狙った獲物は逃がさないとか(噂だが。)そして、彼女の前で罪を侵した者は極刑にされるとか(これも噂だが。)
彼女、一条神奈には、鬼姫というあだ名がついている。
なぜ、そんなあだ名がついたかというと…
彼女、髪は綺麗な黒髪で目鼻立ちはすっきりと整っている。そして、全体的にスラッとしていながらも出るとこは出ているという、かなりの美少女であるにも関わらず、かなり怖いからだそうだ。
俺のこれらの情報は全て雅樹からのものだ。
今までは半信半疑だったが、直接対面すれば、あの噂を信じさせるほどの威圧感があった。
「さて、キミは…三島一輝君だったかな?」
「はぁ、そうですけど…どうして俺の名前を?」
「ん?あぁ、私は生徒会長だからな。それに、個人的にもキミに興味があった。だから知っていた。」
「はぁ、ありがとうございます。それで、その生徒会長さんが俺になんのご用で?」
「いや、さっきも言った通り、キミが喧嘩をした弁明を聞こうと思ってな。」
「いえ、弁明なんてないですよ。申し訳ありませんでした。」
「どうして謝る?」
「いえ、いくら絡まれている女の子を助けるという建前があったとしても、結果的には喧嘩をしたことになりますしね。それに、生徒会長さんは立場上、こういうのを見逃すわけにもいかないでしょう?だから、謝ったんですよ。処罰を受ける覚悟は出来てます。どんなものであれ、罰を受けましょう。」
「……。」
生徒会長が黙って考え混んでいる。
俺に対する罰を考えているのだろうか、すごく怖い。
「…よし。キミに罰を言い渡そう。キミへの罰は…私とパフェを食べに行くことだ。」
「…は?」
「あぁ、もちろんお代は私が持つから安心していい。」
「いえ、そういうことではなく。どうして俺への罰が生徒会長さんと一緒にパフェを食べることなんですか?」
「キミがさっき言ったじゃないか。私を助ける為とは言え、喧嘩したことは謝る。その上でどんな罰でも受けるとな。だから私は、キミへの罰を私とパフェを食べることにした。」
「はぁ…。」
いまいち納得できないが、やぶ蛇になっても困るので、俺は素直に従うことにした。
「さて、じゃあ行こうか。」
そう言って歩きだした生徒会長の後ろに俺はついていった。
俺たちが来たのは都内にあるファミレスだ。ここのパフェは美味しいと評判のお店だ。
たまに待ちになることもあるのだが、今日は待たずに座ることができた。
それぞれ注文した俺たち(俺はもちろんチョコパフェで、生徒会長はいちごパフェだ。)は、ドリンクバーで飲み物をとって来た。
「あの、生徒会長さんはここには良く来るんですか?」
きまずくなるのを避けたかった俺は、そう切りだすことにした。
「なぁキミ、その『生徒会長さん』というのは止めてくれないか?」
「あぁ、すみません。では、なんと呼びましょう?」
「そうだな…では、私も一輝君と呼ぶから神奈とでも呼んでくれ。ついでに、敬語も止めてくれると助かる。」
「分かった。じゃあ、神奈、改めてよろしく。」
「ああ、こちらこそよろしく、一輝君。それで、さっきの問いだが、答えはYESだ。私はこうみえて甘党なのでな。ここのパフェは美味しいからよく通っているんだ。ん?どうしたんだ?そんな驚いた顔をして。」
「あぁ、ごめん。聞いていた噂とは全然印象が違うからビックリしちゃって。」
「聞いてた噂と言うのはアレか?私が怖いという…」
「ああ。俺の友人は神奈のことをとても怖がっていたんだが…」
「あぁ、それは2年前に学校に不良の集団が来たとき、ソイツらを全員追い出したことが原因だろうな。」
「へぇ〜、そんなことがあったんだ。あれ?じゃあ、アイツはなんでそんなこと知ってんの?」
「その日はちょうど文化祭だったからな。来ていたんだろう。」
「なるほど。」
「それで…だな。一輝君も私のことを怖いと思うか?」
「いや、カッコいいと思うよ。あと、可愛い。」
「か、かわっ!?…そ、そうか。ありがとう////」
俺たちの話が一段落ついたところでちょうどパフェが運ばれてきた。
「さ、パフェが来たことだし、神奈、食べようか。」
「そ、そうだな…////」
最初は照れていた神奈だが、次第に笑顔をみせてくれるようになり、食べ終わる頃には照れの色がなくなっているように見えた。
そのあと、少し雑談をしてから割り勘(神奈は奢るといっていたが、俺のプライドが許さなかったので、せめて半分はと払った。)で代金を支払った俺たちは帰路についた。
俺の家と神奈の家の分かれ道(神奈の家は、俺の家から道を一本挟んだ向こう側の家の後ろにあるらしい。)で、神奈が突然
「なぁ、一輝君、携帯番号を交換しないか?」
と言って来たので、こころよく了承し、交換した後で俺たちは別れた。