どうやら俺はゲイに好かれていたらしい。
登校風景といったら皆はなにを思い浮かべるだろう。
1人で音楽でも聴きながら登校するヤツもいれば友達と喋りながら登校する人たちだっているだろう。
だが、俺こと三島一輝の登校は少し違う。
なぜなら、俺は
「来るなぁぁああああ!!」
逃げているからだ。
べつに万引きをしたわけでもうっかり犬の尻尾を踏んじまったわけでもない。
ただ、とある男子に追いかけられているのだ。
ソイツの名前は藤田雅樹、いわゆるゲイだ。
ヤツ曰く、小学生の頃に俺に惚れたらしく、それからほぼ毎日俺にアピールをしてくる。
他人の性癖にどうこう言うつもりはないが、俺にその手の性癖はないので困っている。
しかし、俺に向けての好意なので(性別はどうあれ)無下に出来るわけもなくアイツの行動を受け入れてしまっている。
だが、やはり俺は付き合うなら女の子がいい。
アイツには申し訳ないが、ここできっちり断らせてもらおう。
それでもダメなら肉体的言語で説得するしかない訳だが、致し方なかろう。
そして俺は立ち止まり、後ろを向いた瞬間
「愛してるぞ、一輝〜〜!!」
そんな声とともに化け物もとい雅樹が迫ってきた。
そう、アレは化け物と呼ぶに相応しい醜さだった。
髪は乱れ、口からは涎が飛び出しているのに目だけはしっかりと俺をロックオンしている。
そんな顔面を見たら思わず殴ってしまうのも無理はないだろう?
そして俺は、雅樹もとい化け物を殴「ぶへらっ!?」ろうとしたのだが、雅樹が転けてしまって殴れなかった。
「チッ!運のいいヤツめ」
そう毒づいてみたが、俺は、内心、雅樹を殴らずにすんだことにたいして安心していた。
だって、殴って気絶させちゃったら後の処理がメンドくさいからな。
さて、そんなことより雅樹を起こさなければな。
「ほら、雅樹、いつまで寝てんだ。さっさと起きろ。お前に大事な話があるんだから。」
そう言って俺は雅樹を起こしてやった。
「さて、雅樹、大事な話というのはな…俺たちの今後についてだ。」
「今後…だと。一輝、ついに、俺のことを受け入れてくれるのか⁉」
「いや、すまない。それは出来ない。」
「何故だ!?俺はこんなにお前を愛してるというのに!!俺に足りないところがあったなら直すからどうか、また、考えなおしてくれ!!」
「すまない、もう決めたことだから。お前と付き合うことは出来ない。けど、お前とは友達でいたいと思っている。酷いことを言っているのは分かっているが、お前とは仲良くしたいと思っている。ダメだろうか?」
「一輝・・・。いや、ダメじゃないさ。俺もお前とは友達でいたいからな。」
「雅樹、ありがとう。これからもよろしくな。」
「おう!こっちこそ!!」
結構かるい理由なのに話が重くなってしまったが、改めて友情を再確認した俺と雅樹は学校へ向かうのだった。