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極東4th  作者: 霧島まるは
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昼休みの終わり

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「怖いより…好きになれ」


 真理にそう言われた時、本当に驚いたのだ。


 あの彼が、早紀の気持ちを引きたがっていることに。


 しかし。


 その言葉に、喜ぶことなんか出来なかった。


 なぜ、このタイミングで彼がそんなことを言い出したのか、分かってしまったのである。


 イデルグの双子だ。


 彼らが、早紀を取り込みたがったから。


 それを防ぐために、あるいはそれに張り合ってか、早紀の心を自分にとどめようとしたのだろう。


 もし彼らが現れなければ、真理は今まで通り、彼女に上から言い放つだけの言葉を投げていたのだ。


 だが、これも結局、上から言い放っている。


「好きになれ」と。


 その方が、真理にとって都合がいい、という言葉が、姿を隠さないまま含まれているのだ。


 好き、という意味を──はきちがえている。


 彼が望むのは、一方的な好意。


 鎧という関係でつながっても、心は一方的にしかつながない気だ。


 真理がそうあればあるほど、早紀は自分が『独り』であることを思い知らされるというのに。


「私のこと…好きじゃないくせに」


 それが、悲しかった。


 真理が、自分のことなど好きじゃないのは、子供の頃から知っている。


 憑き魔女になっても、その感情が続行しているのくらい分かっている。


 イデルグに、自分の『物』を取られるのがいやなだけで、『早紀』を取られるのがいやなわけではないのだ。


 それなのに、一方的な好意を求められる。


 真理自身のために。


 そんな簡単に、心なんて差し出せるはずがなかった。


 包む気も、温める気も──愛する気もないくせに。


 真理は。


 早紀の一言に、動きを止めていた。


 目は、彼女を見ているが、いまの言葉を理解したのか、どう思ったのかは表には出ていない。


 その唇が。


 微かに、動く素振りを見せた時。


 昼休みの終わるベルが──鳴った。



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