表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
極東4th  作者: 霧島まるは
87/162

ありえない出来事

---

「あぁ…」


 非常に不愉快な声を、美濃が吐いた。


 話の途中、いきなりの出来事だったため、早紀は身を硬くしたのだ。


 何か、自分に対してひどいことを言われそうな気がしたのである。


 しかし。


 美濃の視線が、目の前の早紀から教室の入り口に向けられた時、その理由がはっきりした。


 真理が──こっちを見ていたのだ。


 どこに目がついているのか。


 以前の、トゥーイ訪問の時も、同じようなことがあった。


 いつの間にか、彼がそれを見ているのだ。


 こ、これは。


 早紀は、うっすらと汗をかきながら、言い訳したい気分にかられる。


 確かに、彼女は美濃がいることを許容した。


 相手が下手に出ていたから、断りにくかったということもあるのだが。


 それでも、イデルグの息子と話をしていた事実は、真理には面白くないのだろう。


 彼が、戦いで順位を争う家系なのだから。


「大したつながりだな…よく気づくものだ」


 ふぅと、大きく息を吐いて、美濃は席を立ち上がる。


 真理の視線が、彼を追い出そうとしているのだ。


「もし、俺を頼ることがあれば、一年のハイクラスに来い…いつでも話を聞こう」


 最後に一言。


 早紀には、やわらかい言葉を残して、美濃は真理のいる出口の方へと向かった。


 え?


 自分が美濃に頼るケースは想像つかなかったが、もう一つ引っかかる言葉があったのだ。


 え? え?


 つい、その大きな背中を見送る。


 真理の近くに立つと、体格差がなおさら明らかだ。


 い…一年って。


 なのに、彼はああ見えて年下だったのである。


「話をしていただけですよ…勿論、彼女の同意の上でね」


 そして。


 美濃は、真理にも一言を残した。


 その内容は、真理の視線を彼女に向けさせるには、十分すぎるもので。


 まさに──余計なひと言だった。



 ※



 あの真理が。


 あの真理が──早紀と話でもするか、と言ったのだ。


 呆然としながら、彼女はさっき起きた出来事を、頭の中で反芻していた。


 しかも、今も真理は目の前にいるのだ。


 椅子に腰掛けて。


 だが、やっぱり真理だ。


 この状況を、ヨシとはしていない顔だった。


 おそらく、さっきの美濃のせいに違いない。


「あの…」


 こんな不自然な会話は、正しく成立するはずがないのだ。


 早紀は、そう悟った。


「あの…さっきのは、本当に別に大した話は…」


 とんでもない話は聞きはしたが、彼女はそれにとりあえずフタをかぶせる。


 いまはとにかく、真理を立ち上がらせ、この教室から出て行かせようと思ったのだ。


 目が。


 真理の目が、こちらをじっと見る。


 いつもと違うように感じるのは、目の高さの違いか。


 お互い、椅子に座っているせいで、いつもより近い高さに感じる。


 まるで。


 そう、まるで。


 真理が一段降りて、早紀の高さに近づいてくれたような。


 あ、ありえないから!


 早紀は、大慌てでいま考えた自分の思考を否定した。


 あの真理が、憑き魔女ごときと同じ高さに降りるはずがない。


 あの真理なのだ。


 あの──



「お前は…俺が嫌いか?」



 …。


 ……。


 ………。


 い、いま。


 いま、何か、すごいセリフを聞いた気がする。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ