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極東4th  作者: 霧島まるは
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美濃

 同じ学校…だったんだ。


 早紀は、半分唖然としながら、その事実を噛み砕いていた。


 イデルグの、息子のことである。


 昼休み。


 教室で、何もすることがない早紀の元に、訪問者がきたのだ。


 美濃だった。


 横に、何故かトゥーイがいる。


 その後方には、零子が控えていた。


 ある意味、学内で早紀を探すための、最高の人間たちを引き連れてきたわけだ。


「トゥーイ卿…これで貸しは無しです…助かりました」


「そうしてほしいものだな。僕はどっちが跡目を継ごうが、問題ないんだから」


 美濃の言葉に、彼よりも高い位置にいるトゥーイは、面白くなさげに肩をそびやかす。


 早紀は困惑しながら、二人の男を見比べる。


 この二人が一緒にいる理由が、分からなかったからだ。


 共通点があるとすれば、鎧を受け継ぐ血筋というくらいか。


 しかし、トゥーイはちらりと早紀を睨むように見ると、さっさと零子を引き連れて帰ってしまった。


「少し話がしたくてな…それくらいは許されるだろう?」


 彼は、空いている早紀の前の席に座り、半身を乗り出すように振り返る。


 身体が大きいせいで、座ってなお威圧感がある。


 昼休みに来たのは、考えた上か。


 放課後なら、早紀は真理に合わせて帰らなければならない。


 昼休みとは、半端な長さの、しかし逃げられない時間帯だ。


 そして、断りにくい話の仕方だ。


 甲斐のように、いきなり腕をひっつかんで結論を強要したりはしない。


 早紀が、目で軽くトゥーイの消えた方を見ると、美濃も同じように一度視線を動かした。


「ああ…トゥーイ卿は、俺の従兄弟だ。違う血筋の従兄弟はいいな…殺す優先順位が低いから頼みごとが出来る」


 さらりと、隠されてもいないだろう真実を述べながら──しかし、そら恐ろしい言葉も付随している。


「父はな…」


 現状に、早紀が追い付けないでいるのをよそに、美濃はさっさと話を始めて。


 この辺りの強引さは、父親や甲斐と変わらない。


「父はな…憑き魔女を作れなかったことを、一番後悔していた」


 そして──イデルグの話を、した。



 ※



 憑き魔女という言葉に、早紀が惹かれないはずがない。


 二回死ぬという、よく分からない確率の元に生み出される、鎧の化身のような生き物。


 それが、自分であり、零子でもある。


 イデルグは、父とその憑き魔女の子だ、という話までは聞いた。


 そんな男だからこそ、自分が鎧を受け継ぐ時に、憑き魔女を作りたかったのか。


「魔女というのは、不安定すぎて、思い通りに契約が運ばなかった…」


 美濃の目が、早紀を映す。


「トゥーイ卿が、憑き魔女を作ったのは、うちの父に影響を受けていたせいで、意図的なものだ…成功したのは幸運だったがな」


 早紀を見ながらも、零子の話題が出る。


 声には、微かながら羨望を感じた。


 はっと。


 早紀は、零子のことを認識した。


 同じ憑き魔女、という意識はちゃんとあったのだ。


「…零子さんも憑き魔女なら…彼女を口説けばいいんじゃないですか?」


 イデルグが、憑き魔女という肩書のみにこだわっているなら、早紀じゃなくてもいいはずだ。


「それが、トゥーイ卿の憑き魔女は…彼の実験材料でな」


 美濃は、やはりさらりと──奇妙な言葉を吐いた。


「うちの父親の能力が、たった一回のまぐれなのか、それとも憑き魔女特有の遺伝もあるのか…そのために、憑き魔女を自力で用意したわけだ」


 後継ぎにするかは、分からんがな。


 美濃は、あっさりと言葉を続けた。


 詳しく考えたくない。


 早紀は、耳を覆いたくなった。


 零子を思い出す。


 ハイクラスの魔女たちを見ながら、あの中の誰かがトゥーイの正妻になるのだと、悟った目と言葉をしていた。


 きっと自分の運命を、彼女は知っているのだ。


 何故そんなひどい運命と、折り合いをつけているのか。


 大体。


 実験というのならば、イデルグ家だってさして変わらない。


 相手が、零子か早紀かの違いだけだ。


 警戒のまなざしで、美濃を見る。


 しかし。


「お前も…トゥーイ卿には突っかかられただろう? 血筋から、遺伝能力から、丸裸にされないよう気をつけるんだな」


 話の流れは──実験材料という要点は、軽く流してしまったのだった。



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