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極東4th  作者: 霧島まるは
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遠い死神

「おはよう…大丈夫か?」


 自分が、のんきに夢路に入れた理由は――目覚めてから理解した。


 生きているのだ。


 いや。


「伊瀬さん…」


 助けられたのだ。


 この海の種族に。


「水は君を殺せない…そして、水は私たちにつながっている」


 死ななかった理由と、助けられた理由が、2つまとめて差し出される。


 早紀の中の海族の力が、溺死を許してくれなかったのだ、と。


 そっか。


 早紀は、深いため息をついた。


 また、ふてぶてしく生き延びてしまった、と。


 見知らぬ、青い空間。


 海の中の、そのまた大きな泡の中にいるような気がする。


 ここが、本当はどこなのかは彼女には分からない。


 別に、どこだってよかった。


 生き延びても、現実は何も解決していないのだ。


「ただ…何があったのかまでは、私には分からない」


 どんよりと沈んだ彼女に、伊瀬は理由を聞きたいように話を切り出した。


「もしや…私の頼んだことで、君に不利になるようなことが起きたのか?」


 彼の続ける言葉は、イエスでありノーであり。


 おそらく伊瀬が、一番心配しているであろう──要するに、早紀と伊瀬が密約を交わしていたことを、他の魔族に知られた、という最悪の事態はない。


 しかし、預かった写真が、早紀の惰性で生きる日々に、大きな傷を作ったのは間違いない事実だった。


 はぁ、と。


 もう一度、ため息をつく。


 自分を守る気力がないということは、どんなことも隠す必要がないということで。


 早紀は、「その事実」を海族に伝えることのリスクを、まったく考えなかった。


 本当にもう、どうでもよかったのだ。


「あの魔女…」


 だるい唇をそのままに。


「あの魔女…私の…母だそうです」


 あっさり、暴露してしまった。



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