表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
極東4th  作者: 霧島まるは
52/162

壁に耳あり障子に零子

 ほけー。


 早紀は、授業中ずっと、力尽きてぼんやりしていた。


 校内での、ありえない来客とその内容で、すっかり疲れてしまったのだ。


 やっと授業が終わって、これで帰れると思っていたら。


 席の前に──零子が来ていた。


 新たな来訪者に、早紀は飛びのきそうになった。


 一体、何の用なのか。


 零子は、じっと目をこらして、彼女の存在を確認しているようだった。


「今日、あなたがとてもよく見える時間帯がありました。だから、確認しにきたのですが…あの時だけだったようです」


 零子の言葉に、ぎくりとした。


 同じようなことが、前にもあった気がするからだ。


 そう。


 街で。


 伊瀬といる時に。


「そ、それって…もしかして…応接室?」


 おそるおそる、聞いてみる。


 今日、伊瀬と会った場所だ。


 あの部屋は、完全にドアは閉ざされていた。


「ええ…私その時、外にいたんです」


 しかし、窓というものがあったのだ。


 応接室は── 一階なのだ。


 だ、大丈夫のはず。


 早紀は、記憶を探った。


 伊瀬はずっと窓に背を向けて、早紀の方を向いていたから、彼が何者かは見られてはいないはずだ。


「随分、親しそうでしたね」


 冷や汗をダラダラかいている早紀は、その言葉に更に追い詰められる。


 駆け寄って手を取ったところは、間違いなく見られたのだろう。


「あ、その、親戚…だから」


 だらだらだらだら。


「そうですか…」


 零子は、早紀のステルスにしか興味がないようで、そのまま背を向けて去っていこうとした。


 ほっとしかけた早紀だったが。


「『あななたちの眷属』…不思議な表現ですね」


 零子の捨てゼリフに、冷水をぶっかけられる思いを味わわされる。


 声ではない。


 きっと、目のいい彼女のことだ──早紀の唇を読んだに違いなかった。



 ※



 言ってない。


 早紀は、自分の口から海族なんて、一度も言ってない。


 だから、零子は奇妙な表現にひっかかっているだけで、何の確証もないのだ。


 何度も記憶をたどって、早紀はやっとその結論を導きだした。


 いくら零子だって、魔族の学校に敵が入り込んでるなんて、想像もできないだろう。


 そう、だから大丈夫。


「……」


 しかし。


 早紀は、別の意味でぎくりとさせられていた。


 真理が、彼女を見ていたからだ。


 そしてここは、帰宅中の車内だった。


 一人で百面相しているのを、見られたに違いない。


 無言なのが、余計に早紀の心に重圧を与える。


 そんな真理が――いまのカシュメル家の当主。


 早紀や、写真の魔女の、血筋の頂点に君臨しているわけだ。


 彼に聞けば、分かるだろうか。


 謎の魔女のことを。


 しかし、何故かと聞かれたら答えられない。


 写真の出どころも。


 真理に問うにしても、もっと外堀を埋めなければ。


 それより。


 まだ、修平の方が聞きやすそうだった。


 好きになれないタイプではあるが、真理ほど追い詰めてこないのではないかと思ったのだ。


「修平さん…」


 屋敷に帰り、当主が自室に入ったのを確認した後、早紀は廊下を歩いていた修平を呼び止めた。


「この人…カシュメルの血筋らしいんですが、ご存知ですか?」


 イキの良さそうな、魔女の写真を取り出す。


 どきどき。


 自分の、喉のあたりに心臓がある気がした。


「ん? あぁ…どこかで見たような」


 写真を覗き込みながら、修平は眉間に指を当てる。


「あぁ…あぁ?」


 納得したような声が、中途から不審な疑問に変わる。


 ギクリ。


 嫌な予感が、電流のように首筋を走った。


「…馬鹿にしてる…わけじゃないよね?」


 奇妙な言葉と、あからさまな怪訝が──早紀に向けられたのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ