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極東4th  作者: 霧島まるは
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わずかな歩み寄り

---

『あわわわわ…』


 早紀の、奇声が聞こえた。


 鎧の内部から反響するように、真理に伝わってくる。


 相変わらずの、緊張感の足りなさだ。


 しかし、それは彼女がステルスを解いたということで。


 用意した医者と、自分の判断で戻していいという二つの条件を、早紀が飲んだのだろう。


 うるさい。


 ステルスを解けとは言ったのは確かだが、やはりつながるとそう思わずには言われない。


 本人が、いろいろ混乱しているせいか、伝わってくる音もこんがらがっていたのだ。


 意味不明の、しかし現状に関する単語だけが、鎧の中を飛び交う。


 おっと。


 早紀がうるさいということは、敵さんには自分が見えているということだ。


 突然現れた真理に、一瞬驚いて止まっていた重症の天族が、はっきりと目的を持って剣を掲げて突進してきている。


 斜め下方では、別の火花が散り始めていた。


「なんだ…その力はっ!」


 動くのもやっとのはずの真理の敵は、しかし、剣と共に問いを発する。


 見えない彼の能力に、問わずにいられなかったのか。


 フッ。


 敵の質問に、答えるわけがない。


 敵に贈るものは、答えなどではなく、苦痛だと決まっているのだから。


 剣を受け流し、真理は左手の指で自分の刀の表面を、強くなぞった。


 鋭い指の動きに、多くの氷の棘が刀からへし折られ宙を舞う。


 真理は──冷気を呼んだ。


「貫け…」


 冷気に乗った氷の棘が。


 金の鎧に突き刺さってゆく。


「我が名はカシュメル…貴様は、先の大空蝕には参戦したのか?」


 宙で崩れ行く敵に、真理は名乗り、そして問いかけた。


 ああ。


 そして、気づいた。


 敵に問いかけなどしても無駄だ、と。


 さっき、自分がそう思ったではないか。


 敵に与えるものは──苦痛のみ。


 真理は。


 最後の一撃を、振り下ろした。



 ※



「能力を、解いているのか」


 1stの登場に、真理は微かな笑みを浮かべていた。


 兜のせいで、それは相手には伝わっていないだろうが。


「蝕の番が必要でしょうから」


 今日は、真理が一番速く到着したのだ。


 そして、ステルスを解かなければ、番が出来ないのは前回で学習していた。


 戦闘行動がなければ、早紀もおとなしい。


「そうか…下はもう終わるだろう。2対1だからな」


 1stと4thが、ここにいるのだから、彼のいう2とは、2ndと3rdのこととなる。


 1stが1体、真理が1体、そして二人が1体。


 敵の合計は、3ということか。


「敵は、おそらく一人代替わり待ちだろう…いつ参戦するかは知らんが、な」


 前回、敵の1stが不在だった。


 今回もとなると、蝕を巡る戦いとは別の理由で、死んだ可能性がある。


 逆に魔族は、去年のトゥーイ、今年の真理と一気に四席が埋まった。


 そして、天族は真理を攻略できていない。


 極東の蝕を、しばらくは天族が取れるとは思えなかった。


「しかし、ここまで順調に蝕が取れると…要求が増えてくるな」


 下方の火花を見ながら、1st──イデルグは、苦笑にも似た音を漏らした。


「これは…『青』ともやる羽目になりそうだ」


 面倒なんだがな、あいつらは。


『……っ!』


 イデルグの言葉に、真理はああと納得した。


 要求というのは、彼らの更に上からだろう。


 極東エリアの上に、亜細亜エリアがある。


 勿論その上も。


 海に面したエリアでは、「青」と蔑称される厄介な海族がいるのだ。


「………」


 真理は、ふと思考を止めた。


 何か、不自然な事象が起きた気がしたのである。


 ほんの少し前。


 彼が、海族について納得する直前。


『……っ!』←驚きにも似た、息を呑む一瞬のこの音は、何だったのか。


 真理ではない。


 ということは、早紀か?


 しかし。


 当の早紀は──既に、ステルスの殻の中に閉じこもっているようだった。



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