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極東4th  作者: 霧島まるは


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二人のサディスティックな主

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「余計なことは言うな」


 真理のこの言葉こそ、余計だった。


 早紀が、魔族の縄張り争いや、戦いだの家柄だのに、余計な知識など持っているはずもないし、口を挟めるはずなどないのだから。


 こういう言葉を面と向かって言われると、自分はまったく真理に信用されていないのだと分かる。


 信用、などという関係が、今後構築できるとも思いづらい。


 その事実は、早紀を憂鬱にするのだ。


 空蝕が来る度に、こんな関係のまま戦いに出なければならないのだから。


 せめて鎧さんくらい、話の出来る相手ならなあ。


 早紀は、いっそ夢の中の男が恋しくなった。


 もし彼とならば、きっともっと軽く話をしながら、一緒にいられるんじゃないかと思ったからだ。


 しかし、彼と同じものになっていながら、会えるのは夢の中だけ。


 痛みから助けてもらった恩以来、早紀はすっかり彼の存在を頼りにしていた。


 結局、真理は苦しむ早紀を放っておいただけ。


 その差は、彼女の中では大きかったのだ。


 これから。


 真理と出撃する度に、この不信感は膨れあがっていくのだろうか。


 少なくとも、早紀は自分のステルスを切れない気がした。


 あの能力こそが、自分を守れるものなのだ。


 な、の、に。


 な、の、に、だ。


 黙り込んだ早紀に、彼はこんなことを言ったのだ。


「ステルスの、オンオフを自由に切り替えられるようにしておけ」


 時が、一瞬止まった。


 それは、また彼にオフを命じられるという意味で。


 ピシッと言う音を、早紀は聞いた。


 自分と真理の間の何かが、そんな音を立てたのだ。


 はいも、いいえも――答えられなかった。



 ※



「何だ?」


 夢の中。


 早紀が、じーっと鎧の男を見ていたので、怪訝な声を返されてしまった。


「ううん…鎧さんの方が、よっぽどいい男に見えてきた」


 はぁーっとため息をつきながら、彼女は本音を漏らす。


 毎晩、こうして会っているが、鎧の男は決して早紀を疎んじない。


「そりゃ、光栄だ」


 ニヤつく声も、慣れればなんてことない。


 氷柱みたいな真理の声に比べたら、いっそ温かく感じるほど。


「なんかもう…ずっと、こっちにいられればいいのに」


 起きて、真理に会うのが憂鬱だ。


 平日は学校へ行くために、必ず同じ車なのだから。


「………」


 早紀の言葉に、鎧は少し黙り込む。


 何のコメントもないことが意外で、彼を見やると。


「先代の、魔女の話をしてやろうか?」


 出てきた言葉は、少し噛みあわないもの。


 これまでの話の流れで、先代が出てくるのは奇妙だった。


 しかし、興味はある。


 こくこくと頷くと、鎧はその兜を反射させた。


「いい…女だったぜ。極上のたっぷりの魔力、極上の能力」


 ゆっくり、ゆっくりとした言葉。


 思い出している声だが──それは、何だか奇妙な思い出し方に感じた。


「先代の魔女は、オレと契約を失敗した…意味が分かるか?」


『いやよ! 死にたくないわ!』


 夢の中に反響する、絶叫。


 それに、早紀はびくっと身を固くしてしまった。


 すぐそこに、先代の魔女とやらが、いるように錯覚してしまったのだ。


「かくして魔女は、この世界に閉じ込められ…死ぬまでオレと暮らしましたとさ」


『出して! 私をここから出して!! 痛いっ! 痛いわ!!』


 苦痛による叫び。


 その苦痛は、早紀の知っているものだった。


 つい先日、同じような悲鳴をあげさせられたのだから。


「昔話は、こんなとこか…で、何の話をしていたっけな?」


 ニヤつく声で、早紀に向き直る鎧は──とても意地の悪そうな声を出したのだった。



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