当主のつとめ
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そうか。
ようやく静かになった環境で授業を受けながら、真理はさっきまでの喧騒について考えていた。
そうか、子孫を残す相手を、探さなければならないか、と。
とにかく、鎧を受け継ぐことしか考えていなかったため、これからずっと長い未来のことまでは、意識が向いていなかったのだ。
真理の父親は、彼が小さい時に戦いで死んだ。
もしいま自分が死ねば、鎧は傍系の誰かが、養子に入るという形で受け継ぐことになるだろう。
そんなに簡単に死ぬ気はなかったが、子孫を残すのが義務であることも理解していた。
本来こういうことは、家柄を考えて、父なり母なりが手配するのだろうが、真理に親はいないし、血の近い叔父叔母も死んだ。
既に、真理は鎧を相続してしまい、一族の主となっているため、どんな内容であっても、親戚が彼に強く出ることはない。
となると。
気の利く親戚が、よい魔女を勧めに来るのを待つか、自分で探すかしかない、というワケだ。
それは──とても、面倒くさそうだった。
早紀のような魔女が特別珍しいだけで、普通の魔女と言えば、気が強くプライドが高い。
ハイクラスの魔女となれば、尚更だ。
美、企み、背徳、嘘。
どれも大好物だ。
そんな彼女らの志向のひとつが、強い魔族の子を産む、というもので。
階級が上の、ではないところが、恐ろしいところではあるが。
そう考えると、真理の希望もおのずと決まってくる。
力の強い魔女、だ。
結婚なのだから、愛だの恋だのふざけた言葉は必要がない。
お互い、それを合意していれば、いいだけのことだ。
優秀な魔女か。
だがそれは、探すハードルを上げることでもあった。
魔女が特別な階級について、力を振るう姿を公に見せることは余りない。
勝手気ままに生き、好きな時に自分のために魔力を使う。
だから、魔女の能力を知るのは、彼女自身と近しいものくらいなのだ。
学校では特に、女同士の駆け引きなどもあるようで、あからさまに見せ合う真似もしない。
結局──よい案など、何も浮かばなかった。