つながり
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「……」
その感覚を、真理はどう表現すればよかったか。
授業が全て終了し、彼は帰ろうとしたのだ。
廊下に出て、三歩進んだところで、足を止めさせられた。
その、得体の知れない感覚に、だ。
痺れる針が、一瞬、肉に突き立ったような、痛み。
初めてのそれに、しかし、真理は迷わずにロークラスに足を向けていた。
そんな気がした、としか言いようがない。
そして――見たのだ。
トゥーイ家の当主が、早紀の腕を掴んでいるのを。
去年、鎧を纏う権利を得た男だ。
たった一年、先にそれを手に入れただけで、彼には大した戦果はない。
だが、トゥーイは3rdだった。
何故か。
それは、極東エリアの4つの椅子のうち、2つまでしか埋まっていなかったからだ。
先代のトゥーイ家当主と、真理の父親が早く命を落としたせいである。
前回の、大空蝕の時だと聞いていた。
そして。
魔族側は、その戦いで負けたのだ。
四人の内、二人を失って。
今年、ようやく真理が鎧を受け継ぎ、久しぶりに4つの席が埋まったことになるわけだ。
トゥーイは、同族ではあるが、3rdでもある。
真理が、最初に踏み越えるべき相手だった。
早紀にちょっかいをかけてきた、ということは、余程昨日出し抜かれたことが悔しかったのか。
早紀の持つ能力を、調べにきたのだろう。
いまだ、クラスメートにすら、額のしるしで騒がれていないだろう、あの女を捜し出せたことは、大したものだったが。
さて。
牽制しておくか。
真理は――割って入ることにしたのだった。